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ハロウィンナイト外伝「ステンドグラス興亡史」


◆ステンドグラスとは?◆

ステンドグラス (stained glass) は、エ字形の断面を持つ鉛のリムを用いて着色ガラスの小片を結合し、絵や模様を表現したもの。ガラスに金属酸化物を混入することで着色している。キリスト教の教会や西洋館の窓の装飾に多く用いられる。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

「ステンドグラス破り」は「黒川伯爵のハロウィンナイト」における恒例行事。“黒川伯爵”は“星の君”に会いに行く際、必ずと言っていいほど彼女の城のステンドグラスを割って侵入する。

その様子はそれまでの舞踏会とは一線を画すアクションコメディ調となっており、甘い言葉で参加者を魅了していた吸血鬼が割れたガラスで怪我をしたり“星の君”に及び腰になったりするギャップの激しさもあってハッシュタグは称賛と笑いとツッコミの嵐と化す。

後半のアクションパートは“星の君”に会った後に“光の巫女”と対決する流れである為、ハロウィンナイトを途中参加した参加者は「もうステンドグラス割れた?」とステンドグラス破りでタイムテーブルを確認することが多い。

近年では舞踏会パートも終盤に差し掛かる23時頃から「そろそろステンドグラスだ」とソワソワし出す参加者が現れ、その期待と人気の高さが伺える。


◆歴代ステンドグラス一同◆

【2013年(初代)】

ステンドグラス一族最初の犠牲者。“黒川伯爵”に特に怪我をした様子はなく、そのまま(若干及び腰ながらも)ダンスの申し込みをしている。

星野香菜彦(この頃はまだ“星の君”と呼ばれていない)は棺桶に戻る前に壊したステンドグラスを片付けるよう伯爵にホウキを渡した。


【2014年(二代目)】

強化ガラス製。その頑丈さに“黒川伯爵”は多少手こずるもやっぱり破ってしまう。擬音も無く事後報告のみのいささか地味な印象だが、あの“黒川伯爵”に怪我をさせるという一族初の快挙を成し遂げた。

なお、手負いの伯爵は撃退された模様。知り合いならインターホンの存在を教えてやれと“光の巫女”に告げている。



【2015年(三代目)】

バレンタインデーに蘇った伯爵、なんと扉をノックする事を覚える。ついにステンドグラス一族に平和が戻った……

だがその平和も束の間、ハロウィンの日には例年通りぶち破られてしまうという非常に不憫な目に遭ってしまった。

だが、ステンドグラス破り時に派手にに負傷した伯爵は血を流して倒れ、死なれては外聞が悪いと“星の君”がAB型の血の提供を呼びかけた。カウンターという形ではあるが、かなり伯爵を追いこむ事に成功。

そして来年に向けてステンドグラスを障子紙にする案が出る。



【2016年(四代目)】

「ガッシャアアアアアアン!!!!!」の擬音が初単独登場。その散りざまが初めてイラストに描かれる。血塗れになってもステンドグラスを破ろうとする伯爵に備えて輸血パックが用意されていた。

四代目は豪華なステンドグラスだったが、「ステンドグラス破りは闇の眷属の本懐」と身も蓋も無い理由でブチ破られた挙句に次回に向けて張り替えるよう言われてしまう。

ステンドグラスを破壊した翌日は城に何者かから贈り物が届くらしい。一体何川伯爵なんだ…

当初は障子紙にする作戦だった



【2017年(五代目)】

破られる一方だったステンドグラスに頼もしい守護者が登場。

だが頼みの綱はその創造主と競い合うようにステンドグラスをぶち破る。ステンドグラス破りは心に中学二年生を住まわせる人々の琴線に触れるものがあるらしい。

今年も血塗れになった伯爵だが、介抱はされずにバケツを持って廊下に立たされた。

※「不可視の夕暮れ」は黒川巧氏の創作「ヴァグナリウム不可視の夕暮れ」の主人公。魔術紐を手繰って術を発動させる魔術師なので、ステンドグラス破り時に上空から紐を手繰りながら落下してきたのは理に適っている。


なお、伯爵は来年に向けてステンドグラスを用意するよう要求。全く反省の様子が見られない。

吸血鬼と魔術師の二人に破壊されたステンドグラスは後で当時者に片付けさせた。



【2018年(六代目)】

「ステンドグラスが僕を待っているのです」と参加者に告げて向かった“星の君”の城。もはや“星の君”でなくステンドグラス破りが目当てだと言われても否定できない。

ぶち破られた挙句に「いささか脆すぎた」とダメ出しまでされてしまう(伯爵自身も怪我をした様子が見られない)。だがそこにあったのは一枚の置手紙だった。


その母性溢れる書置きに動揺する伯爵とは対照的に参加者は大盛り上がり。待っていたのはステンドグラス「だけ」だった現実の中で伯爵はゴミの収集日と分別方法を確認しながら掃除を行い、冷蔵庫のゴディバを頂く。

掃除道具がほうきと塵取りしかない事に不満を抱き、来年に向けて「吸引力の変わらないただ一つの魔道具」をステンドグラスと共に新調するよう要求し去って行った。


帰って来た“星の君”は割れたステンドグラスがきっちり片付けられているのを確認。


何者かから送られてきたらしい。



【2019年(七代目)】

毎年割られ続けるステンドグラスに対し、ある者は養生テープや段ボールを、またある者はうちわやサイリウムを手に取りステンドグラスの行く末を見守る。

ついには「誰を応援しますか?」アンケートでステンドグラスがぶっちぎりの得票数を獲得。新たなる勢力「ステンドグラス勢」の台頭を感じさせる熱気と声援の中で“星の君”はアイコンをデコり伯爵に備える。

そんな中、“星の君”が有給休暇を取っているという情報を得ていた“黒川伯爵”はいつものようにステンドグラスを紳士的にぶち破って参上。

圧倒的支持率を集めようとも伯爵の前では儚く散る運命なのか……だが、伯爵と“星の君”との間に不穏な空気が漂う。「ステンドグラスを割っていいのは,割られる覚悟があるやつだけだ」――“星の君”の合図によりカメラが切り替わる。七代に渡るステンドグラス一族の復讐の幕が切って落とされた瞬間だった。

伯爵城前で待機していた“嵐の舞踏”に合図が送られ、割られる覚悟のできていなかった伯爵城のステンドグラスは“嵐の舞踏”とその愛馬・ジーラと共に華麗にブチ破られた。

※“嵐の舞踏”は「ヴァグナリウム不可視の夕暮れ」に登場するキャラクター。星野香菜彦氏お気に入り。

まさかの割り返し、そして創造主への下剋上。血塗れになった事以上に精神的ショックの大きそうな伯爵。毎年無残にぶち破られ続けていたステンドグラス一族の悲願はここに達成された。

ステンドグラスの割られた伯爵城には多数の客が詰めかけていたものの怪我人報告は無し。割れた破片を記念に持ち帰る者も多く見られ、後日職人からは美しいステンドグラスが届けられた。

逃げて!障子一族逃げてー!!

【2020年(八代目)】

ハロウィンナイト影の主役として今年も期待されていたステンドグラス。その「がんばれ」の内容は人により様々だが、華々しい活躍を期待されている事に間違いはない。

そしてついにその時がやってきた。

ハロウィンナイト前日に『窓を破って侵入など、狼男<リュカントローポス>のごとき蛮行』と語っていた伯爵。さて一体どのような「ノック」なのかと固唾を飲んで見守る観客達。

「礼儀正しくノック」で砕け散るステンドグラス。その豪快な割られっぷりに期待を裏切らない伯爵とステンドグラス双方を讃える声が寄せらる。だが、それは“星の君”による巧妙なトリックだった。

ゴゴゴゴゴ……

なんとステンドグラスは飴細工とすり替えられていた。せんべい派の伯爵には辛い甘い香りと一張羅のマントを台無しにするほどのベタつきで一挙に攻勢に出るステンドグラス(飴)。そしてついに伯爵に完全勝利したかに思えたステンドグラスだが……

運命と中二病魂からは逃れられなかった。人々は二度に渡るステンドグラス破壊を楽しみ、砕け散ったかけらを甲子園の砂の如く拾い集めて帰路に着いた。

請求書も伯爵を逃さない。

そして八代目ステンドグラスは「割れないようにがんばる」「派手にブチ割れる」「伯爵を流血させる」の全てのリクエストを叶える働きぶりにより“光の巫女”により『殿堂入り永代名誉ステンドグラス』とされた。

そして九代目となる新しいステンドグラスが後日“星の君”に献上された。

【2021年(九代目)】

「ステンドグラスをリアタイしたい」という意見も増え、すっかりハロウィンナイトの人気者になったステンドグラス。オペラグラスと共にホウキやちりとりを手に割れたガラスの破片の回収まで準備万端の中で迎えた23時
だったが、なんと修復中。伯爵も皆と一緒に「ステンドグラス待機」する事となった。

「修復した途端割られるのか」と観客達がステンドグラスと夜遅くまで働く職人への同情を禁じ得ない中でついにその時はやってきた。

修復されたばかりのステンドグラスが『優しくノック』される。今年も豪快な破壊音が響き渡り大いに盛り上がる。「もはやお祝いに割られる樽酒」「これをみなきゃハロウィンが終わらんよな」と、破壊行為にも関わらずどことなくおめでたい行事になってきたステンドグラス割りだった……が。

なんと、破壊したステンドグラスは「ヴァグナリウム不可視の夕暮れ」からのゲストキャラクター・“籠籠狐”が彩花幻術で作り出した幻だった!すると今年のステンドグラスは無事だったのかと思いきや

本物のステンドグラスは待ちくたびれた“嵐の舞踏”によって破壊されていた。割るべきステンドグラスを既に割られ狼狽する黒川伯爵、初めて黒川伯爵の手でステンドグラスが割られ無かった事に驚きつつも
「上の方ならまだ割れる」とオーバーキルを期待する観客達、伯爵はついにステンドグラス破壊を断念せざるをえなくなった……が。


「我が子」三人に“星の君”の館を引っかき回すよう指示した上に壁を破壊して退出。これには観客、“星の君”、“光の巫女”皆驚愕した。伯爵の腕力もさることながら、「請求額が過去最高になるのでは」とその被害総額を噂し合った。

そして十代目ステンドグラスが職人の手により“星の君”へと献上された。


【2022年(十代目)】

この年、黒川伯爵は光の巫女の旅に同道した為に伯爵城では闇の眷属達だけのハロウィンナイトとなった。伯爵は不在でも眷属達は互いに手を取って踊り、自慢の御馳走を並べ、楽しい時間を過ごしていた。そして、一方で……

伯爵も巫女も星の君も不在であるのに何故か心配されるステンドグラス。そしてついに、そんな闇の眷属達の期待に応えるかのようなアトラクションが爆誕した。

有志により持ち込まれたステンドグラスの数々。やっぱりハロウィンナイトはこれがないと!と大喜びした参加者達に盛大に割られまくった。

ひょっとして、闇の眷属達の方が伯爵以上にステンドグラスを割りたがっているのではないだろうか……