2006年末に待望の新サービス「ナビキャスト」（誘導型LPOサービス）が完成し、翌2007年に新卒１期生も無事に入社。ようやく、ショーケース・ティービーは会社らしくなってきた。

「とにかく、皆でナビキャストを売ろう！」

新入社員4名もテレアポや営業に当たり、社員一丸となって「ナビキャスト」の営業活動に励む日々。ところが、心意気も虚しく、「ナビキャスト」の売れ行きは決して好調とは言えなかった。せっかく新サービスを開発したにも関わらず、業績の低迷が続いた。

そんななか、ヒットの風は意外なところから舞い込んだ。

「カタカナで入力するところを平仮名で入力してくるお客様が多いんですよ。何か対策を打てないですかね？」

新入社員のK橋が「ナビキャスト」の営業訪問をしていたところ、営業先からこんな相談を持ちかけられたのだ。なんでも、ウェブ上でフォームに適切に入力してもらうことが課題となっているそうだ。

「ナビキャスト」の販売という当初の目的とは違ったものの、K橋はクライアントの要望に応えたい一心で対応した。

「入力ミスをしたら、吹き出しで“カタカナで入力してください”などと表示するのはどうか？」

「サイトを訪問したお客が離脱してしまう他の要因はなんだろう？」

度重なるディスカッションが新サービスへのヒントとなった。

入力フォームは、購入や申込みをする際の最後の“砦”と言える。その“砦”が少しでもスムーズになれば、購入や申込みの増加が期待でき、売上の向上に繋がるはずだ。

K橋は、森に知られないようコッソリと社内で新サービスの開発を進めた。というのも、現時点での主力商品である「ナビキャスト」が売れていない中、新しいものを作りたいとはとても言い出せなかったのだ。

ひとまず1週間ほどでモックアップを作り上げ、お客のところに持って行き、試しに導入してもらった。すると、目に見える効果が現れたのだ。

「イケるかもしれない」

そう思ったK橋は、森にモックアップを見せた。森は知らないうちに事が進んでいたことに驚きながらも、確信を抱いた。

「これはイケる」

もし事前に相談されていたら、「今はナビキャストを売るのが先だ」と森は開発をストップさせていたかもしれなかった。結果的にK橋の水面下での進め方は功を奏したのだ。

こうして、新サービス「フォームアシスト」が誕生。

2008年4月に提供を開始してから、大手の広告代理店から問い合わせが来るまでに長い時間はかからなかった。「フォームアシスト」はEFO（入力フォーム）の分野で大きな話題を呼び、ショーケース・ティービーは2009 年に念願の黒字化を達成した。

そして、勢いはこれに止まらなかった。

2010年2月、総務省や経済産業省の後援のもと開催された「ASP・SaaS・ICTアウトソーシングアワード2010」にて「フォームアシスト」がグランプリを受賞したのだ。

公的なお墨付きがもらえたこともあり、ショーケース・ティービーの知名度と信頼度は飛躍的に向上した。

さらに、時を同じくして、以前から出願していた「フォームアシスト」の特許取得のタイミングが重なった。

「移り変わりの激しいインターネット業界で特許を出したところで、どうせ真似されるし、あまり意味がない」

周囲からは特許に対して冷めた声も上がっていた。しかし、永田の考えは違った。実は、ショーケース・ティービーは以前に身に覚えのない特許問題で悩まされた経験があり、次こそは特許を活用する側に回りたいと、永田は先回りで出願を進めていたのだ。

お客からの何気ない一言で生まれた「フォームアシスト」は、あらゆる要因が重なったことで大ヒット商品となり、ショーケース・ティービーはEFO（入力フォーム最適化）の分野において、シェアNo.1を占めるまでになった。

その後の資金調達は順調に進み、いくつもの新サービスを開発しながら、7つもの特許を取得。

ショーケース・ティービーの止まらない成長の波に乗りながら、いよいよ森と永田のなかで、“上場”の二文字がはっきりと見え始めたのだった。

つづく。

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