見出し画像

作業は、会社? 自宅? カフェ?

ぼくはよく知らなかったのだけど、ノマドワークなるものがはやっているらしい。

なんでも、フリーランスの方の間ではやっているスタイルで、作業場所を固定化せず、居心地のよいと思えるカフェやコワーキングスペースを見つけては、そこでパソコンを広げてカシャカシャとやる。で、「もう2時間も経つのか。そろそろ気分転換したいな」と思ったら、チェックして颯爽店を飛び出し、別に目星を付けているお店へと足を運ぶ。何ともフットワークの軽い働き方だ。フリーランス全盛の今だからこそ定着したのだろう。「ノマド」(放牧)というネーミングセンスもなかなか。これが昭和だったらフーテンワークとでも呼ばれたかもしれない。

ぼくたちライターは、パソコンひとつあれば場所を問わずどこでも作業できる稼業。最近はスマホで原稿を書くツワモノもいるらしいから驚く。不器用なぼくにはとても真似できない荒技である。

ぼくは会社員勤めのライターだけど、別に出社せずとも仕事は可能だ。会社の規則でも、カフェだろうとファミレスだろうと納期までに記事を書けばどこでも作業してよいことになっている。経費で落とせるのはコーヒー一杯までと決まっているけど。

おそらくフリーライターにとってカフェスペースは人気の作業ポイントだろう。ドトールやベローチェ、ルノワールといった有名チェーンの喫茶店に入れば、パソコンとにらめっこしているライター風の人はひとりかふたりは必ず見かける。そこで長時間文字を打ち込んでいる姿を見ると、よほどその場所が集中できるのだろうと察しがつく。

ぼくも、たまにだけど喫茶店で仕事をすることはある。とくに取材のために遠出したときなどは、会社まで戻って作業するのはロスが大きいから、あらかじめコンセント付きのカフェをマークしておいて取材が終わればそこで仕事をするようにしている。

カフェも決して悪い場所とは思わない。やろうと思えば集中してできなくもない。けれど、自宅やオフィスと比べて、各段に作業がはかどる場所かといえば、そうでもない。やはり、作業慣れしているオフィスのほうが座りはよいと感じるのだ。

そもそも、カフェは作業するためにある場所じゃない。座高と机が合わないと感じるのはザラ、両脇の席との間が窮屈だと思うこともしばしば。椅子が固かったり、となりでワイワイ騒がれたりしても、もちろん文句を言うわけにはいかず飲み込むしかない。そこは「コーヒーを飲みに来るお客のためのスペース」なのだから、仕事をしようと思ったら周りの利用者に合わせるのがスジだ。どこが落ち着く場所かは人それぞれだけど、少なくともぼくにとっては、そこが仕事をするうえで最適の場所とは思えなかっただけだ。

そんなわけだから、私的な文章を書くときもほとんど自宅でやるようにしている。とはいえいつも自宅作業がはかどるかといえばそうでもないから、たまにパソコンを収納したポーチ片手にルノワールまでふらりと足を運ぶこともある。が、1時間そこそこで退却するのが関の山。正直言うと、店内に入ったときは「なんかフリーランスみたいでカッコいいな」と思っている自分がいる。でも店を出るときは「あ~やっぱり慣れないことするんじゃないな」と浅はかな自分に舌打ちする間抜けなオレ。ルノワールにパソコンはふさわしくない。そこで似合うのはドリップコーヒーと文庫本だけだ、少なくともぼくの場合は。

自分が落ち着くと思える場所で仕事をする。これが一番なのはいうまでもない。がしかし、ノマドスタイルで働く人たちをみると、「いいなあ、カッコいいなあ」と思うことは正直ある。なぜかって、ノマドだろうがフーテンだろうが、そういう生き方には一種のあこがれを抱くもんなんだ。年をとると余計にね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?