#技術書典 6の売り上げ報告(ほぼトントン)

昨日開催された「技術書典6」の振り返りです。

前回も振り返り記事を書き、その中で売り上げについて書いたところ、かなりの反響をいただきました。

・一日の売り上げは約46万円
・粗利だけで33万円

僕はこれにものすごく可能性を感じたのです。

いままで技術情報の発信というのは基本的に無報酬、お金とは違うところに意味を見出しつつ、稼ぎはそれ自体ではなく別のところで得るしかなかった

それが、今回の技術書典5では、技術情報発信(ここでは書籍)自体でそれなりの稼ぎがあったので、これはエポックメイキングだなと。

というわけで今回はどうだったのか。振り返っていきます。

製本は最高の出来

まず到着してすぐの楽しみが「開封の儀」。印刷を発注すると当日会場まで直接発送してくれるのですが、逆に言うと自分でも当日まで出来上がりの程がわからないのです。

まずは新刊の「Depth in Depth」。

表紙の質感がめちゃくちゃいい感じです。

次は「Metal入門」の新版。

箔押しロゴが最高です。表紙用紙も今回は紙自体が黒い(なので裏面まで黒い)その名も「漆黒」という特殊用紙を使っています。

3箱目は「実践ARKit」の新版。

飛行機の部分がシルバーのメタルインクなのですがあまりわからないですね。。それでもめちゃくちゃ大満足の出来です。

最後は今回2つ目の新刊「iOSエンジニアのためのmacOSアプリ開発入門」です。

技術書典では珍しい、おじさんが描かれた渋い表紙です。紙もスモーキーな濃いグレーのものを使用しています。

当日まで出来がわからないというのは楽しみでもありつつ、不安もあります。今回は初めて特殊印刷(→ほぼオフセット必須になる)を色々試したので、コストが上がる一方で結果がまったく未知数だったのでいつもよりさらに恐怖でした。が、蓋を開けてみると大満足の仕上がり。いつも日光企画さんにお願いしているのですが、期待を下回ったことがないです。

売り上げ

さて、制作者以外にはたぶんどうでもいい本の写真はこれぐらいにして、ここからは気になる売り上げの話です。前回の売り上げは冒頭に書いた通り。そして開催前日にこういう皮算用もやってみたのですが、

(※前日に書いた予想です)
・Metal入門 製本・電子セット: 2,000円 * 20 = 40,000
・実践ARKit 製本・電子セット: 2,000円 * 30 = 60,000
・macOS本: 1,000円 * 50 = 50,000
・Depth本:1,000円 * 50 = 50,000

これで合計20万円。今回は結構印刷にコストかけたので、これぐらいだと原価とトントン程度。

さて、結果はどうだったのでしょうか。

気になる売り上げは

・・・

230,000円

でした!

かなり予想と近いのではないでしょうか。

どれが何冊売れたかちゃんと数えてないのですが、書籍の平均売価が1500円なので、合計で約150冊売れたという結果になります。予想より既刊のARKit本が売れて、予想より新刊本(とくにmacOS本)が出なかった印象です。

そして原価をちゃんと計算してみると、

印刷代 191,350円
ダウンロードコード発行代 16,762円
・参加料 7,000円

合計 215,112円

つまり利益はほぼほぼトントンという結果でした。

あ、そういえば前回は当日のBOOTHの売り上げも加算してたのでした。それも見てみると・・・25,600円

というわけで粗利は約4万円というところです。

なぜ前回から下がったのか

前回の粗利33万円とはなんだったのでしょうか。そもそも予想記事の段階から下がることは予想してたのですが、今思えば改善点や対策できたことがたくさんあるなと。以下に思いつくことを書いていきます。

反省その1: 装丁から何の本かわからない

まず、冒頭に書いたように大満足(≒自己満足)の仕上がりだった各書籍の装丁ですが、それについてこんなツイートをしたことがあります。

「利益減らしてでも印刷にコストかけたりできるのも個人出版の醍醐味」ってとこはいいんです。製本の出来上がりには心底テンション上がったし、こういう楽しみはプライスレス。

問題はここ:

書店で見つけてもらう必要もないからタイトル小さくてもいいし、(中略)
自分が良ければ著者名省いてもいいしで、個人出版の自由を満喫している。

BOOTHではそうかもしれないけど、技術書典では見つけてもらう必要がある、ということに想像が及んでなかった。。

いや、初回参加から出している「Metal入門」とかは別にそれでよかったんです。技術書典でたまたま見かけた人がMetalの本を必要としている可能性は極小だし、Metalってほとんど日本語の情報源がないので"Metal 本"とかでググって見つけてもらえる

でも「macOSアプリ開発入門」の場合は違う。技術書典でたまたま本書を見かけた人がmacOSアプリ開発に興味がある可能性はそこそこある

また「Depth in Depth」は、"iOS デプス 本"とかでググって見つけてもらえることが期待できない(iOSのデプスだけを扱った本が出てるとは思わないから)。

というわけで、macOS本、Depth本については「タイトルがよく見える」「表紙で何の本かわかる」装丁にすべきだったと思います。

反省その2: 既刊本の販売戦略を考えてなさすぎた

「Metal入門」「実践ARKit」は増補改訂版かつこれまでと違う装丁だったのですが、前回製本版を買った、BOOTHで電子版を買ったという人で、「新しいのかっこいいっすね〜」と欲しそうな人が結構いたんですよね。

で、製本版+電子版とのセットでしか売ってないので、そういう人には見送っていただくしかなかった。

しかしソフトのアップグレード版のように、既に購入した人向けに格安(原価を割らない程度)の最新製本版価格を用意しておいてもよかったかもしれない。(※電子版購入者は最新版を無料でDLできる)

・印刷は小部数だととてもとても割高になる。
・既刊本は多くは売れないので小部数になる
→ 更新版をこまめに刷れない

というジレンマがあるのですが、この「アップグレード版」価格を設定することである程度の部数が出るようになれば、最新の製本版をこまめに出せるようになるなと。

反省その3: 被チェック数が少なすぎた

サークルの被チェック数、前日で50ちょっと、当日で80ぐらい。初参加時ですら100以上あったので、これはだいぶ少ない印象です。

 (一番左が今回の被チェック数)

「チェック」してくれた人がブースに来てくれるとも限らないのであまり気にしてなかったのですが、しかし今になって思うのは、この被チェック数の絶対数に意味はないにしろ、相対的な多寡は自分のサークルの露出の出来不出来を反映している、ということです。

これが少ないということは「サークル詳細」へ訪れてくれた人の数が少ないということだし、その詳細を読んで本を買いたいと思ってくれた人の数が少ないということ。

つまりここが相対的に(自サークルの過去や他サークルと比較して)少ない場合は何らかの危機感を感じるべきで、サークルカットやサークル詳細なりのコンテンツを見直すなり、宣伝活動をがんばるなりすべきだったなと。

前日にTwitterの名前を

に変えましたが、時すでに遅し。

他にも当日思ったこと

初回はSwinject本の多賀谷さんと、前回と今回はSwiftコンパイラシリーズの北さんと共同でブースを構えてきたのですが、ひとりで4種類も売り物があると、もうスペース全然足りないなと。長机の半分(=1サークル)のさらに半分のスペースにダンボール5箱置けない。。次回はもう独立するしかないでしょう。

(隣のブースがちょうど友人で、原稿を落として頒布物なしということで謝礼を払ってはみ出させてもらいました🙇🏻)

まとめ: 技術書典は最高

反省点ばかり多くネガティブな印象になってしまったかもしれませんが、正直なところを申しますと売り上げの上下自体はあまり問題ではないんです。そこを重視するなら本なんて書かずに仕事した方がいいわけですし(※多くのお仕事をお断りして本を作っています)。ただ「技術情報発信でも稼げる」という未来に向けて試行錯誤するのが楽しいので、こういう記事を書いています。

表紙の装丁や印刷方法をあれこれ考えて出来上がってきた紙の本は我が子のようにかわいいし、技術書典は何よりもブースに訪れてくれる方々とのコミュニケーションが最高です。

新刊を買いつつ「Metal本めっちゃ助かってます!」みたいなことを言ってもらえるんですよ。本が売れる嬉しさを1とすれば、実際に読んで勉強になった・実務で役立ったと言われるのはプラス9ぐらいの嬉しさ。そしてそれがネット越しのテキストではなくface to faceでの生の声という。そこでさらに別の本を買っていただけるというのは著者として信頼されているということで喜びもひとしおです。

技術書典、次回も新刊をひっさげて必ず申し込みたいと思います。

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