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日進月歩 ~Road to MBA~#87

2021/3/5:Digital Shift Summit(基調講演)
 現在通っている立教のビジネススクールの先生でもある田中道昭先生が登壇されるということで聴講させていただき、今後のデジタルシフトにおける世界がどうなっていくのかを学ばせていただいた。

■Keynote Session:絶対やりきる日本社会のデジタルシフト(はじめに)

登壇者:平井卓也氏(デジタル改革担当大臣)、田中道昭氏(立教大学ビジネススクール)
 
 このセッションをお聞かせいただき、日本も変わろうとしているのではないかと少し希望を持てる内容でありました。実際の行動や成果についてはこれからとなると思いますが、まずは「言葉にして発信する」といった前向きな動きをしていること、これまでの日本政府などとは違って、覚悟が少し見受けられたように私は感じている。

■Keynote Session:平井卓也氏(デジタル改革担当大臣)

 冒頭から、UI・UXの見直しなしにデジタルトランスフォーメーションはあり得ないという言葉から始まり、様々な国との連携の中で「人間が幸せになれるDX」を目指しているという会話があった。様々な大臣の会見を最近は仕事柄見ることも多いが、一風変わっているなと率直に感じた。

<目標➀:行政手続きがスマートフォンで60秒以内に手続き完了可能>
 このようにスマートフォンを利用してなどの目標を多く耳にするが、実際に達成するためにはUIやUXの見直しが必要であり、人々のマインドセットを変えて後には戻れない覚悟を持つ変革が必要となる。既存の今までの業務実績や積み重ねを考えてしまうと立ち止まったり、反対勢力などの障壁がある中でそればかり考えていると進まない。このような狭間の中でも「やりきる覚悟」が最も重要であり、これまでのやり方を当たり前のことだと思わない思考と柔軟性が必要となる。「退路を断つ」といった言葉が印象的であり、強い信念があるからこそ発せられる言葉でもあると感じている。

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<目標②:2022年までにデジタルマイナンバーへ移行させる>

 現在のワクチン接種もそうであるが、現状のマイナンバーを活用できるまでに至っていない。理由としては、管理しているDBが分散されており一元管理できていないため、活用することが難しい。また、日本はプライバシーの問題に大きな焦点をあててしまっているため、反して利便性や柔軟性が欠けてしまっているということだ。
 アメリカではGPSにて人々の行動も管理されていたり、台湾では実施しないことで罰金などの対象にもなっているなど徹底して対応している。そこまでの徹底を日本の国民性として求めるのは、文化での違和感や国民の合意協議が必要だと思うが、次の問いで私は気づかされることになった。

今まで身分証明書としてコピーしている免許証などはどこにあるのか?
何枚コピーして、どこに提出したのか?

 確かにこう聞かれると、逆にアナログにおける不安が起きてくる。オンライン上で行使できるようチップで対応し、役所にいかなくても処理できるよう基盤となるマイナンバーにすれば、履歴などを管理できることでこのような不安は解消される。デジタルにおけるメリットとデメリットをきちんと理解した上で、活用を一から見直すべきだと感じた。政府から「ベース・レジストリ」を構築していくことで、日本も変われるのだと思う。

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 さらにデジタル化を進めていく上で重要なキーワードとしてあがっていたのが、「スピード」「柔軟性」「データ活用」「Government as a Startup」というも内容であった。変革を進めていくためには、小さな成果を積み重ねが重要で、少しずつ人々のマインドを変革していくことで世界が前に動いていく。このように誰もが変革を進めたほうが良いと思っている中で、実現できないのも要因があり、障壁となってくるものがある。その敵は、我々自身の心の中にあることも知るべきだと認識した。

<障壁➀:挑戦する人々の心の中にある>
 今までの成功体験を認めてしまう、変革しなくてもどうにかなるだろうという気持ちが人間にはある。また、取組みが望んでいる以上の成果になるのかということを信じ抜けない不安というものが存在する。日本人は、特に新しい挑戦に向けて100%を求めてしまう傾向があり、挑戦への障壁となっているのも事実である。こういったものを払拭した「挑戦する環境」を与えることが出来れば、日本も変革に近づいていけるのだと思う。

<障壁②:格差を作ってしまうことが”悪”だと思ってしまっている>
 現在、契約社員として国の機関で働いているが、評価の仕組みや給与体系、仕事のやり方を見ていると、この言葉がまさしくだと思うことが多くある。日本には、何かを切ってまで推進しつづけるメンタルと動力が無い。また、皆平等であり会社によっては能力、働き方、働く量で評価に差が起きないことが往々に存在する(平等という言葉の捉え方の相違)。

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 デジタル化が進んでいくことで、逆張りで「アナログの価値」が高まっていくことも想定される。冒頭に話があった、人間が幸せに感じる部分もそこに付随するものであり、裏側をどれだけデジタルを駆使して利便性を高められるか。また、「匿名経済」から「顕名経済」へと変化していく中で、ロングテールの製品やサービスを展開していくためには、これまでの顧客における情報が必要となる。このような循環をしていくためにも、早急にデジタル空間における信用(Trust)を高めていく必要がある。そのためのシステム構築も今までのウォーターフォール型ではなく、アジャイル型にシフトし、スピードを求めたやり方をする必要がある。現在のワクチン接種のDB構築で、政府も試行錯誤しながら構築を進めている。これからのデジタルは「グリーン×デジタル」であり、デジタルを活用するためには電力が必要で、いかに環境に優しく生み出していくかが重要である。さらには構築が容易となる「Japanクラウド構築」に向けて、システムを再構築するのではなく、パーツを組合わせて価値を出すことを目指している。

◉匿名経済:市場が拡張するとともに、消費者の匿名化が進んだ。お金さえ払えば、どんな人でも顧客になれるので、ある意味でどんな人でも区別されることなく買える自由な市場とセットされている。
◉顕名経済:市場からみて購入した人が誰かが分かる状態。顧客の見える化が起こり、消費者とインタラクションをしながら共に創るパートナーとしての位置づけになってきている。


■Keynote Session:田中道昭氏(立教大学ビジネススクール)

 平井大臣の講話に対し、「スマートフォンで繋がる重要さ」と「行政サービスから取組みをする重要さ」についてご説明いただき、それを実現できれば自ずと民営でも実施せざるおえない状況を作りだすことができる。オンライン教育も私学では導入が進んでいるが、義務教育では進んでいないのが現状であるため、行政が率先して動くことにとても意義があると冒頭にお話いただいた。
 その中で、日本政府や企業がデジタル化に向けて遅れていることも事実であるとご指摘いただき、以前にも日進月歩~Road to MBA~#80で取り上げた「デジタル見本市 CES2021」のボッシュ社の事例と、ワクチン接種のイスラエルの事例から様々な要因について、お話をいただいた。

<CES2021事例:ボッシュ社(カーボンニュートラル)>

 ボッシュ社は、2020年末までに全拠点をカーボンニュートラルにすると宣言し、その約束を守りました。世界的に事業展開する企業として初めてこれを成し遂げ、これから日本は取り組もうとしているときに全拠点を実施するところまで先に進んでいる。このスピード感が日本文化にはなく、世界企業に後れを取ってしまう要因でもあると感じている。
 この成功を導くために、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギー比率の向上、グリーン電力調達の拡大、そしてCO2の排出を防ぐことができない分に対してカーボンオフセットを実現するという4つの戦略を実施して対応しました。日本では考えられないスピードを持って成し遂げてしまったこともそうであるが、「グリーン×デジタル」をいち早く認知し、柔軟かつ迅速に動いた結果として取り上げられている。

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<ワクチン接種の事例:イスラエル>
 イスラエル国家から国費招聘リーダーシッププログラムに団長としても参加された経験があることから、親しみが深いイスラエルの事例をご説明いただいた。中でも2021年1月29日のFNNプライムオンラインで衝撃のニュースが走った内容を取り上げ、「テクノロジー大国」と呼ばれるようになった由来における要因について講話いただいた。

【記事】
 ”ワクチン接種率 最高はイスラエルの30% フランスは1.8%にとどまる”

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 この背景として、要因としてあがったのが「文化」であった。いち早くデジタルを活用し、ワクチン接種に向けた取組みをしたイスラエルにはどういった文化があったのか。そこには、①まずはやってみよう(失敗を評価する国)、②ユダヤ人の「人生観・危機感・使命感」があるのではないかということ文化が根付いていた。破壊的なイノベーションを起こすためには失敗もあるため、その失敗をどう評価していくかという文化そのものが重要となる。スタートアップでも、失敗している人は多く存在しており、シリコンバレーなどでは2~3回失敗した人が資金調達しやすいなど、失敗は前向きな成長ととらえる世界が存在している。
 日本の「完璧主義」といった文化とは大きくかけ離れており、日本人にとっても「人生観・危機感・使命感」が問われている時代となっているのだ。その中で、デジタル化を推進していく上で最も必要だと感じていることは、「プライバシーの対して懸念が無いこと」であり、その前提をしっかりと理解することができれば、日本人も利便性を追求する思考へのシフトが容易となり、デジタル化への舵が取れることになる。


<事例から考える日本政府および日本企業の変革>
 このような事例から分かることは、日本政府や日本企業もスタートアップ企業やこういった先進的なデジタル化をしている企業の事例を基に、変革に向けたマインドを取り入れていくことが急務だと考えている。完璧主義ではなく、まずはやってみよう(Let's do it)という思考が必要なのではないか。その背景として、日本は中途半端に裕福であり今のままでも苦労がない、また、先ほどからの完璧主義である文化が障壁となっていることは明白である。この要因を打開するためには、先ほどから話をしているように「プライバシーが絶対に守られている安心感」を植え付けることで、三位一体のバランス(利便性、プライバシー、セキュリティ)を醸成できる。

 さらにキーワードとしてあがっていたのが、「エコシステム」「スマートシティ」「顧客中心主義」「グリーン×デジタル」といった内容で、時代の流れに逆らわず、小さな成功を積み重ねて大きな成功に導いていくことで大きな成功が生まれ、GAFAのようなデジタル化を日本政府・企業も考えることが出来るようになる。10年後に向けた危機感を感じる、これが重要である。

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※東洋経済「日本がデジタル化で遅れる決定的な構造要因」より抜粋

平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】
春日井JFC/FC.FERVOR/中京大中京高校/駒澤大学/横河武蔵野FC(JFL)/エリースFC東京(関東)/ラスタサッカーファミリー(埼玉)
※U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合(通算115試合1得点)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%B2%A9%E5%AE%97
【ビジネス】
株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】
中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科

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