外資系コンサルの知的生産術 対話篇 その2

顧客は誰か?

P:「新しさ」と「深さ」を最初に考えるに当たって、最も重要な着眼点って何だと思う?

J:知的成果を受け取る相手、ですかね?

P:そうその通り。当たり前の話なんだけど、「新しい」とか「深い」とか、ということを判断するためには、当然のことながら「誰にとって」を決めることが必要になる。つまり、知的生産物を購入してくれる顧客ターゲットを決定するということだ。

J:確かに。

P:でも実際には、この点をあいまいなままにしながら、なんとなく知的生産のプロセスに突入していってしまう人が多い。そうすると何が起きると思う?

J:作業の方針が立てにくくなる?

P:うん、まずはそうだね。どこまでやれば相手が満足してくれるのかの水準設定が出来なくなるわけで、作業の方針は確かに立てにくくなる、というよりそもそも立てられないよね。そうすると何が問題になる?

J:けっこう辛い作業になるんじゃないか、と。

P:おお、いい勘しているね。そう、作業方針が立てられないと結局はブルドーザー的に「あれもこれも調べて」ということにならざるを得ない。どこで勝負するか、という戦略が明確化されていないわけだから、軍事的な言い方をすれば戦線に分散的に戦力を投入せざるを得なくなるんだ。後でリソースの点についてはあらためて触れるけれども、これがとても効率の悪い戦い方だ、ということはわかるよね。

J:はい。イメージするだけで嫌になります。

P:他に、知的成果を受け取るターゲットを不明確にしたまま作業に突入してしまうと発生する問題って、思い当たるかい?

J:アウトプットの良し悪しを判断できなくなりますよね。

P:うん、その通り。どちらかというと作業量がふくらむよりもこちらの方が大きな問題だよね。知的成果を受け取る顧客を明確化できないと、出てきた知的成果物が先方のニーズを満たすものかどうか判断できなくなってしまうんだ。プレゼントを贈るときに、相手のニーズやウォンツを理解していないと的外れなものを選んでしまうのと同じことだよね。

J:ああ、それはわかりやすい例えですね。

P:だから、知的生産のプロセスに入るに当たっては、生み出そうとしている知的成果物を「誰に」届けようと思っているのかを明確にイメージした上で、その人が「何に」付加価値を感じてくれるかを考える、ということがとても大事なんだよ。

まとめ

あなたが知的生産を行おうとしている時、知的成果の受け手は誰なのか?その人はどのような問題を抱えているのか?その人にとって、あなたが生み出そうとしている知的生産物は、これまでのものと何が違うのか?といった「問い」に対しての仮の答えを用意して臨むことが必要です。
戦略論の基本にある通り、ターゲットは広がれば広がるほど訴求力は切れ味を失うことになります。知的生産を行う際には、この知的生産の成果を受け取る顧客は誰なのか?ということを出来る限り具体的に思い浮かべ、出来れば実際に紙に落としてみるくらいまで明確にすることが必要です。

 

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