外資系コンサルの知的生産術 その3

まずは求められるクオリティと使える時間を押さえる

P:ターゲットとなる知的成果の受け手が明確化されたとして、次になにをやるか?

J:受け手が明確化されたのであれば、次に気になるのは、その人が何を知りたがっているか?という点ですかね。

P:うん、その通り。先ほど、僕らがやっているのは知的生産という生産活動にほかならない、という話をしたけど、その文脈で言えば知的成果に求められる品質ターゲットを設定する、ということだね。これはメーカーが製品を開発するときに品質目標を設定するのと同じことだ。

J:品質ターゲットが決まることで、初めて情報収集や分析といった作業の工程も決まる、ということですね。

P:その通り。知的生産を行うに当たって、顧客ターゲットを設定した後で、まずはっきりさせなければならないのは、求められる知的生産のクオリティだ。たとえば、市場規模の将来予測を出したいという場合、粗々でもいいので大きな方向感がわかればいいという場合と、投資の意思決定に使える様な精度の高いものが必要だという場合では、まったくアプローチは変わってくる。また、ある企業のビジネスプロセスをベンチマークするという際に、プロセスの大まかな流れがわかればいいという場合と、各プロセスの行程と人員数まで知りたいという場合とでは、やはり同様にアプローチはまったく変わってくる。

J:よくわかります。

P:ということで、知的成果物の品質ターゲットが決まらないと、作業工程、コンサルティングファームではワークプランと言うけれども、を設計することが出来ない。でも実は、ワークプランを設計するに当たっては、実は他にも必要な要素があるんだけど、何だと思う?

J:うーん、なんだろう?

P:メーカーのことを考えてご覧よ。品質ターゲットが決まったとして、それですぐに製品の製造にかかれるわけではないよね?

J:ああそうか、コストと時間ですね。

P:ご名答。品質ターゲットが決まったとして、次にはっきりさせなければならないのが「使える時間」だ。アウトプットを、正確に、いつまでに出さなければならないのかについて確認する。この場合、もっとも避けなければならないのが、いわゆる「なる早で」という指示だ。なぜダメなのかわかるかい?

J:ワークプランが作れないから?

P:その通り。ワークプランは期日が設定されて初めて設計することが出来る。「なる早で」なんていう指示を出されても工程の組み立ては出来ないよね。うちにはそんなヒドい指示を出すマネージャーは居ないと信じているけど、君がもしそんなことを上司から言われたら「なる早って、具体的にいつのことですか?」と確認しないとダメだよ。君もその上司も結局は不幸なことになる。

J:気をつけます。 

まとめ

知的生産の成否は、時間・お金・人員・クオリティという四つの変数を高次元にバランスさせる方程式の解を出せるかどうかにかかっています。もちろん、求められるクオリティとかけられるお金、使えるリソースがはっきりすれば残りの変数である「時間」については必然的に解が得られるわけですが、では、そのようにして算出された「必要な時間」をそのまま発注者に通達すると、だいたいの場合「ええ!?そんなにかかるの?」と言われることになります。だったら最初からいつまでに欲しいか明確にしてくれよ、とこちらとしては思うわけですが、この段階で期日を明確化されると、結局工程計算の方程式を再度解くという二度手間が発生します。ということで、まずは何よりも「使える時間」「使えるお金」「使える人員」という制約条件を明確化することが必要です。

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