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寫眞機戯帖06/Chinese MEIKE

かつて撮影機材の重さはものの数に入ってはいなかった。重いとか軽いとか考えたこともなかった。

マンハッタン

ちょうど見返していた昔のアルバムの中に街中でボクがカメラを構えている写真があった。袈裟懸けにしたカメラバッグに一眼のEOS20DとLレンズ3本を無造作に突っ込んで闊歩している。そのうちの1本は70-200の白レンズだ。2006年の写真だから17年前ということになる。

四肢の筋力は年々衰え,モノには重量があると感じ始めたが,それでもブラックラピッドにフルサイズ一眼を吊るして歩くのはボクの旅のスタイルだった。

ライン川(2015)/ザルツブルク(2018)/ロンドン(2019)

それもいよいよ返上というときが来た。還暦を過ぎてから5DにLレンズを装着すると足元がふらつくようになった。潮時である。今回,久々の旅に際して機材はこれまでサブ機として使っていたFUJIFILMのミラーレスに絞ることにした。そもそもX-S10を選んで購入したのはひとえにその軽さゆえである。

さて問題は広角側である。FIJIFILMのXマウントはAPS-Cなので焦点距離は1.5倍となる。所有するレンズでいちばん広い純正の16mm F/2.8でも換算24mm。如何せんこれでは足りない。贅沢なようだがフルサイズに17-40mmを標準に使っていた身としては広角側の最大が換算24mmは辛い。

純正のXF8-16mmは261,360円である上に換算12mmの魚眼はボクには必要ない。Zeiss Touitの12mm/F2.8は120,780円,中古でも61,800円はこの春から無職となった人間が購入していいシロモノではない。ショップのサイトを探すうちにMeike MK12 F2.8というレンズが目に入った。中古美品で14,800円…これだ!!安価の理由は二つある。ひとつはMF(マニュアルフォーカス)であること,これは広角ならボクにはたいした問題ではない。もう一つはいわゆる中華製(正確には香港のメーカー)であることだ。だがマウスを持つ指が迷わず動いた。

そうなると止まらない。旅に必要な予備の互換バッテリーから充電器に至るまで堰を切ったようにMade in Chinaを発注した。

MEIKEは律儀で真面目なシグマのレンズのように少し固目の動きでカチリとX-S10に収まった。

X-S10+Meike MK12 F/2.8開放 1/1000 ISO160

外に出て開放で試し撮り。

ピンを合わせたところ。

ネット上の評判では「開放では眠たいが一段か二段絞ればとても良い。」などと盛んに書かれているが開放で眠たいのは腕の問題ではないだろうか。

X-E2+Meike 12MK F/2.8 1/80 ISO1600

X-E2に装着して室内で撮影。

ピンは自慢のリス毛水彩筆

「コスパ最高」とこれまたネット上に喧しいがコストは度外視してパフォーマンス自体十分に高いと思われる。Touit12mmが果たしてこれだけの解像をするだろうか(もちろんそれは無職金欠のボクには確かめようがないところだが)。

絞り値はExif情報に記録されず,焦点距離も正確な値ではない。そもそも電子接点を持たないのだからレンズ側の情報が伝わるはずがない。シャッター速度やISO感度はカメラ側のデータだから記録される。ボクは使ったことがないがオールドレンズを使う場合もたぶん同じではないだろうか。

そうこうするうちに純正の1/5にも満たない価格の互換バッテリーの充電が終わりピタリと本体に収まった。一度入れると外れにくくなる日本のサードパーティ製は処分することにした。USBの充電器は純正バッテリーも標準の時間で充電した。互換バッテリーの持ちはどうか分からないが今のところバッテリー,充電器ともに不満のない性能である。

made in Germany も made in Japanも精密機器の性能面で made in Chinaに凌駕されるときが案外近いかもしれない。 

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