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逆噴射小説大賞2019応募作+αマガジン

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「第二回逆噴射小説大賞」応募作並びに没ネタをおさめたマガジンです。
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逆噴射小説大賞2019が終わり、そして僕は燃えている

逆噴射小説大賞2019の結果がついに発表された。 僕は選外。そこは予想通りだったので、特にショックなどはない(本当)。 実際に選ばれた作品を見てみて、まず最初に感じたのは「これは意外だ」という感覚だ。下馬評では「これでしょう!」と高く評価されていた作品が含まれていなかったり、まったく話題にのぼっていなかった作品が選ばれていたり。驚きがあり、「おぉ!?」となった。 そして選評コメント。とても刺激的だった。選評理由に関して「あぁなるほど」という納得感が得られただけではなく、

逆噴射小説大賞2019投稿作品セルフライナーノーツ!

第二回逆噴射小説大賞。僕はすでに定められし5発の弾丸を撃ち尽くし、あとは天命を待つのみです(大袈裟)。 しかしです。何ごとも振り返りは大事。ということで自作を振り返りつつ、今回、どういう気持ちでこの祭りに臨んだのかなども書いていってみようかなと思います。 1. 慟哭の巨人ゼガン第一弾。 近未来を舞台にした人型決戦兵器ものです。 初日の0時ぴったりに投稿。正直に言うと、これを初弾にするかはけっこう悩みました。と言うのも、これは絶対に逆噴射小説大賞向きではない、800字で魅

根源のヴィリャヴァーン

 わたしたちは誰もがヴィリャヴァーンの輝きから生じ、その根源の炎を胸に抱きながらこのエ・ルランの地へと落ちてきた。  だから、誰もが落ちてきた苦しみに囚われ続け、輝ける炎を胸に抱いていることすらも忘れて、その生命を終えていくのは悲しいことである。 「なればこそ。人の身のままヴィリャヴァーンに到ろうなどと望むことは、人としての分際を超えた行いでありましょう」 「それは許されざる行い。エ・ルランの地に災いと争乱とを招き入れることになりましょう」  壮麗なる列柱が輝く中、少

第二回逆噴射小説大賞、チームしゅげんじゃ全選手入場!!

これは何?第二回逆噴射小説大賞開始から12日目。いよいよ折り返し地点に入りました。そして応募上限5枠のうち、僕自身は現時点で既に4枠を消化済み。 そこで。自作4作品+αの簡単な紹介記事を書いてみることにしました。これはあくまでも紹介記事であり、ライナーノート的なものは後日あらためて書く予定です。(なおバキ全選手入場コピペっぽいのはタイトルのみ!) では、始めます。 1. 慟哭の巨人ゼガン第一弾。この物語は絶望から始まり、希望へと向かって疾走する! 人類に未曽有の危機が迫

東京城、血煙り。

 五月雨、燻る霞色。  バタバタと編笠を打つ雨の音。  かさり。葉の上には雨蛙。  ナキリは微動だにせず潜んでいた。  藪の中、ただ独り。  その見つめる先。光州街道。西の備えである光府城から〈身魂府〉の政庁たる東京城へと到る道。  ケロリ。雨蛙が鳴き、そして跳ねた。跳ねて消えた雨霞の向こう。がちゃがちゃり。音を立てて進んで来たのは緋色鮮やかなる四つ足の駕籠。自律駆動のその駕籠には諸邦を監査する〈身魂府〉の巡見使が乗っている。その駕籠の傍ら、付き従うのは黒緑の戦外套を

世界を揺るがす天才CEO 亜嵐慶

 その時、男は得意の絶頂だった。  話題のベンチャー、ビッグトーク社。その新製品発表会。詰めかけたプレスが注目する中、巨大プロジェクターを前にして堂々とプレゼンを続ける男。  ビッグトーク社の若き創業者、亜嵐慶(あらん・けい)。 「まさにセキュリティ乱世の時代! 大手が開発した決済システムが、最近やられたばかりだ!」  亜嵐は両手を広げて大仰に続けた。 「皆さんも覚えてますよね。『二段階認証』。今では当たり前になったその仕組みすら、事故ったシステムは備えていなかった

ノア・サーティーン

「行ってしまうのか……ノア」 「はい……お爺様」  雨はやむことなく降り続けている。しとしとと、いつまでも。ノアと呼ばれた少女は丘の上から見下ろしていた。変わり果てた国の姿を。一面の泥の海を。  その傍らで山羊のチッポラがメェと鳴いた。ノアは微笑み、その頬にそっと触れる。 「大丈夫。わたし、絶対戻ってくるよ」  そのおさげ髪が風に煽られ、ばたばたと揺れている。健気で気丈。その様を見てメトセラ翁は苦しげに呻いていた。 「あぁ、神よ……なぜ……なぜ孫に……なぜノアにこん

東洋決死圏

 戦場を一陣の風が駆け抜けていく。  その風の名は沙也可(さやか)。  雑賀の沙也可。   (認めさせる。俺は速くて強い。里の誰よりも)  元服前。少年の面影を残す顔立ち。足軽鎧に身を包み、その手には奇妙な長筒。その長筒には刻まれていた──雷のごとき呪印、そして三本足の鴉。  その加速する視界は捉えていた。紀伊の山裾に蠢く軍勢、そして〈桐紋〉の旗印を! 「ははっ」  沙也可は笑った。あれこそは憎き羽柴の旗印。目指すべき敵! その前衛、足軽たちが禍々しき弓に矢をつがえて

黄金の華

 ふたつのダイスが転がっていく。盤の上、からんからと乾いた音を響かせて。  大太刀を携えた者。全身に呪紋を刻んだ者。六十口径ハンドガンを弄んでいる者。機械の体に油注す者。場末の酒場。異様な風体のならず者たち。  彼らの見つめる先。赤みがかった髪の男、そして黒髪の男。盤を挟んで対峙する二人の男。空気は淀んでいた。今にも炸裂しそうな危うさを孕みながら。ならず者たちのくすんだ眼差しが、どろりと二人の間、ダイス転がる盤上へと注がれている。 「出目は……」  火、そして龍!

慟哭の巨人ゼガン

「すまない……みんなっ……みんな……すまないっ……」  アルガの瞳から涙が溢れ、光となって散っていった。胸をえぐるような悲しみ。もう二度とは会えない人々──その人々の体が淡い光に包まれていく。その誰もが温かく微笑み、優しくアルガのことを見つめていた。 「頑張れよ、アルガ」 「いよいよじゃ。わしらも一緒に戦えるんじゃ!」 「ファイトだぜ、アルガにいちゃん!」  少女は祈るようにささやいた。 「さようなら……大好きなアルガ」 「ナナ……僕は……僕は……っ!」  人々の体

ニルラポランと君は笑った

 ポラペニアンとマニャマニャの二人がテレタンのオアシスに辿り着いたのは、蛙の太陽が真上に、そして亀の太陽が西から昇り始めた頃だった。 「うわぁ」  ポラペニアンの丸い顔がぱぁっと輝く。それはまるで、かのゾラの花が咲いたかのようだ。市場の賑わい。異形の人々。奇怪な大道芸。ポラペニアンのふっくらとしたほっぺがぷくりと膨らみ、その小さな体がバザールの中を跳ねるようにして歩いていく。そのふわふわの衣服が綿毛のようにぽよぽよと、楽しげに弾んでいる。  その後ろをマニャマニャはしず