マガジンのカバー画像

タピ子 Queen of the Sweets

13
スイーツ妖精たちが闘う覇道のストーリー!!
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

目次:タピ子 Queen of the Sweets

第一話01 第二話 「バイラル・ライバル」01 02 03 04 05 第三話 「バトル・オブ・ジユー・ガ・オーカ」01 02 03 04 05 06 第四話 「フォー・サイデッド・ストラグル」 以降も鋭意更新予定!

「バトル・オブ・ジユー・ガ・オーカ #06」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】 「おい……」  タピ子は地面に横たわるパン斗に声をかけた。 「死にたくなければ……跳べ!」  その直後であった! 「がははっ! てめぇら全員、消毒だぁ!」  雄叫びとともに火炎が辺りを包み込んだ! 「うぉぉおっ!?」ホユンは高速回転し、炎からその身を守る。「ふっはは! 誰かは知らんけど舐めんなよっ」冷気を噴き上げ炎をかき消すかき子!  さらに! 上空から襲いくる影あり! 「たたっ斬る!」刃光を煌めかせ、宙に躍り出たのは野武士風のスイーツ妖精

「バトル・オブ・ジユー・ガ・オーカ #05」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】 🍩🍩🍩  人間界──。  テレビに映る賑やかなバラエティ番組。 「きゃ~かわいい~」 「不気味ぃ~」 「不気味かわいぃ~」  それが突如切り替わり、緊張した面持ちの女性アナウンサーが映し出された。 「番組の途中ですが、ここでニュースをお伝えします。汎世界人民議会は先ほど、超党派による『国際的な協力の下に規制甘味に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための甘味及び甘味を伴う料理等の規制に関する法律』、通称『甘味規制法』を圧倒的多数により可決しま

「バトル・オブ・ジユー・ガ・オーカ #04」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】 【前回までのあらすじ】  可愛らしいスイーツ妖精たちが暮らす世界、スイーティア。そこはかつて、甘くてふわふわで楽しい、平和で幸せな世界だった。しかしその幸せな世界はスイーツ大帝ショコラダ・マイの突然の崩御によって終わりを告げた。ショコラダ・マイ亡き後、スイーティアの覇権を巡り有力なスイーツ妖精たちが凄惨な抗争を繰り広げ始めたのだ。そしてスイーティアは血で血を洗う弱肉強食の世界へと変貌を遂げていった。  人間たちの世界がもたらす流行力(ブームちから)。それ

「バトル・オブ・ジユー・ガ・オーカ #03」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】  ジユー・ガ・オーカの一角が燃え上がり、阿鼻叫喚の呻きが木霊している。その炎に照らし出されるように浮かび上がる幾人ものシルエット──それは恐るべきスイーツ妖精たち。生八つ橋のやつ音。そして彼女が率いる和スイーツ十傑である! 「やつ音様ぁ~! ここいらの消毒はすべて完了しましたぁ~」  目を輝かせ、甘ったるい声でやつ音に駆け寄る赤髪の少女。激辛せんべいのゲキ巴(ともえ)。 「ぷぷ。ゲキ巴ちゃんさぁ、さっきまで『汚物は消毒だぁ!』って叫んでたじゃん。やつ

「バトル・オブ・ジユー・ガ・オーカ #02」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】 「あっれ。確かになーんか変っすねぇ……」  手で庇(ひさし)をつくり、きょろきょろと辺りを見渡すホットクのホユン。  ここはジユー・ガ・オーカの大通り。巡礼のスイーツ妖精が行き交い、出店や売り子も賑やかに、甘い香りが漂い続ける楽しげでふわふわとした大通り──であるはずなのだが……。  タピ子とホユン、二人が歩む今の大通りにはそのような楽しげな様子は欠片もない。数メートル先が見えないほどの深くて濃い霧。スイーツ妖精たちの気配もなく、ただひたすら不気味な

「バトル・オブ・ジユー・ガ・オーカ #01」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】  薄暗い部屋。煤けた壁。埃の積もった床と調度。仄かな光が明滅し、流れ続けるザァという砂嵐のような音。じゃらじゃらと擦れる鎖の音。そして、少女の呻き声── 「んんー、んー、んんー!」  部屋の中央。暗がりの中には少女が一人。猿轡をされ、椅子に縛りつけられ、声にもならぬ声をあげ、そして、もがき続けている。 「んんん……!」  その少女は何かを訴えるかのように激しく身をよじる。その全身には幾重にも鎖が巻きつけられ、露出した二の腕には赤く痛々しい内出血の跡

「バイラル・ライバル #05」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】  それはまるで火炎の旋風だった。一回転、二回転、三回転! 熱風渦巻く回転蹴りがタピ子を襲い続けていた! 「こいつ……!」  一歩、二歩、三歩──タピ子は半身にかわしながら後退をし続ける。「ははっ!」吠えるように笑うホユン。その蹴りは回転するごとに速度を増していき、その熱量も加速度的に増していく!  辺りにたちこめる甘く香ばしいホットクの匂い。凄まじい大技だ。しかも(スキがない!)タピ子は驚嘆していた。ここまでの大技を放ち続けながら、その視線、その体軸

「バイラル・ライバル #04」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】  タピ子は歩む。スイーティアの大地を踏みしめ、一歩、そしてまた一歩。タピ子は見据える。真っ直ぐに前を。地平の彼方へと続く長い長い街道のその先を。  街道の遥か向こう、そこに彼の地はある。スイーツ妖精たちの聖地──ジユー・ガ・オーカ。  歩みの中、タピ子は一人の少女を思い浮かべていた。 (ショコラダ・マイ……)  可憐にして高貴なる少女。偉大なるスイーツ大帝。彼女の統治のもと、かつてのスイーティアは幸せであった。 (ショコラダ・マイ。あんたはなぜ……)

「バイラル・ライバル #03」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】  あばら屋の入り口に静かに立つ。タピ子はそこから長年暮らした我が家を──誰もいない我が家の中を、ただ独り黙って眺めていた。そのあばら屋は切り立った崖の麓にある。だからそこは日中でも薄暗い。入り口から僅かに入り込む日の光はちょうどタピ子が遮る形となり、質素な調度の上に、人の形をした影を落としている。 「ふふっ」タピ子は静かに笑った。特に思い入れなどないはずだった。しかし、離れるとなると少し寂しい。 「よし、行くか……」  タピ子は風来坊然とした粗末なボ

「バイラル・ライバル #02」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】  連なる奇岩の峰々。水墨画めいて幽玄なる風景。ぽつんと、その片隅に一軒のあばら屋があった。それは吹けば飛ぶような粗末なものだ。しかしその中の調度は丁寧に整えられ、清潔である。その様子からはそこに住む住人の几帳面な性格を見てとることができる。  そのあばら屋の中、旅支度を整える少女が一人。タピ子。タピ子は旅支度の手を止めると、ふと、己の手のひらを見つめた。そしてその手を握りしめ、開き、また握りしめる。「……」タピ子は無言のまま握りしめた己の拳を見つめた。そ

「バイラル・ライバル #01」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】  たうたうと漂う朝もや。その中に奇岩の峰々がうっすらと浮かんでいる。まるで水墨画のような景色の中、静かに、ゆっくりと朝焼けの朱が差していく。それはまるで、染み入るかのように。  タピ子はカルスト奇岩の上で独りたたずみ、その光景を眺めていた。タピ子は思い浮かべていた。前日の死闘。かき子がその末期に叫んだ言葉を。 『ふっふっ……調子に乗っていられるのも今のうちだ……お前の首を狙い、スイーティア全土から強豪たちが集ってくる……お前の命運が尽きるのも……ぐっ、

タピ子 Queen of the Sweets

「グワッグワッ」  静寂の中、鳴り響くのは川鵜の鳴き声のみ。  幽玄な水墨画めいた光景。  まるで中国・桂林地方を思わせるその風景。ここはスイーティアと呼ばれる世界、その片隅にある辺境地帯であった。  スイーティア──。  それは可愛らしいスイーツ妖精たちが暮らす不思議な世界。スイーツを愛する人間たちの想いが生み出した彼方の世界。平和で、甘く、ふわっふわでとろっとろな、明るく楽しい世界  ……のはずであった。 「死ねやぁ! タピ子ぉ!」  叫びが静寂を切り裂