タピ子

「バトル・オブ・ジユー・ガ・オーカ #04」 タピ子 Queen of the Sweets

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【前回までのあらすじ】
 可愛らしいスイーツ妖精たちが暮らす世界、スイーティア。そこはかつて、甘くてふわふわで楽しい、平和で幸せな世界だった。しかしその幸せな世界はスイーツ大帝ショコラダ・マイの突然の崩御によって終わりを告げた。ショコラダ・マイ亡き後、スイーティアの覇権を巡り有力なスイーツ妖精たちが凄惨な抗争を繰り広げ始めたのだ。そしてスイーティアは血で血を洗う弱肉強食の世界へと変貌を遂げていった。

 人間たちの世界がもたらす流行力(ブームちから)。それがスイーツ妖精たちの力の源だ。強大なる流行力を持つ主人公タピオカのタピ子は、ショコラダ・マイの遺志に従って一路、聖地ジユー・ガ・オーカを目指す。そしてそれに呼応するかのように、強力な力を持った数々のスイーツ妖精たちもまたジユー・ガ・オーカへと集結していく。しかし彼らを待ち受けていたのは、何者かの手によって恐るべき魔窟へと変わり果てたジユー・ガ・オーカの姿であった!

 その魔窟の中を一人(?)、目的の地を目指すタピ子。しかし目的の地を目前にして、タピ子の前に二人の強大なスイーツ妖精が立ちふさがった。パンケーキのパン斗、そしてかき氷のかき子

 果たして、タピ子はこのピンチを乗り越えることができるのだろうか……?

「……君が。タピオカのタピ子だね」

 そう問いかけたのは見目麗しい細身の少年だった。「俺はパン斗。パンケーキのパン斗だ」甘いバターの香りが辺りに漂う。覚悟を秘めたその表情。そして真摯な眼差しはタピ子を鋭く捉えていた。タピ子は身構えた。(こいつは……強い!)

「タピオカのタピ子。君に問おう……スイーティア全土に流れている噂。あれは真実なのか」パン斗は問いかけながらも、じりじりと間合いをつめていく。「なんのことだ」タピ子はふっと鼻で笑った。

「私を惑わせるつもりか? しかしどのような策を弄そうとも、私に隙など生じはしない」その切り返しにもパン斗は動じることがなかった。パン斗は続けた。「問おう。先帝を……ショコラダ・マイを殺したのは君か?」「なんだと……?」

「皆が噂している……君がショコラダ・マイを殺したのだと。そしてジユー・ガ・オーカに秘匿された王権の証たる錫杖を盗み出そうとしているのだと。そしてあまつさえ、スイーツ大帝をも僭称しようとしているのだと! 今、このジユー・ガ・オーカにあまたのスイーツ妖精が集まりつつある……君の野望を阻止するためにね。そして俺も……」パン斗は間合いを詰めながら、少しずつ腰を落とす構えをみせつつあった。

「噂が真実なら、君をこの場で滅ぼさなければならない」

 タピ子は再び笑みを浮かべた。

「なるほど。実にくだらない噂だ。おおかた、私の流行力に恐れをなした三下が流した噂……といったところだろう。だがひとつだけ、その噂には真実が含まれている」パン斗の眉がぴくりと動く。タピ子は拳を前に掲げ、力強く握りしめた。そして高らかに咆哮するように宣言した!

私は錫杖を手にする! そして必ずやスイーツ大帝になってみせる!

「そうか……」パン斗は一瞬うつむき、そして再び力強い眼差しでタピ子を見た。「残念だ。噂は真実を含んでいたということだね。やはり俺は、君を倒さなければならないようだ」

 だが、その直後!

タピ子ぉぉぉおお!!!!

 叫びと共に突如、二人の頭上に巨大な何かが躍り出た。「お前は……かき氷のかき子!」「そうとも! 溢れ出す流行力が! 再び私に生を与えたのさ……新たな力とともになぁ!!」かき子は左の手から冷気を巻き散らしながら、燃え上る右の拳を振り上げた。

(おっとそうはさせないよ😏)

「ぬぅっ!?」どこからともなく髪の毛ほどの針が飛来し、かき子の左まぶたを貫く! さらに! 「どおぉおりゃああ!」熱風をまとった蹴りが、かき子の燃える右拳を弾き飛ばす! 「なにぃっ!」かき子は地面を滑るように後退しながら着地!

「……ホユンか」タピ子と背中合わせになったのはホットクのホユンであった! 「置いてくなんて酷いじゃないっすか、姐さん。ちゃんと言いましたよね……」ホユンは左の掌に右の拳をバチンと打ち合わせた! 「姐さんを狙う連中は、あたしが全員倒すって!」

「ふっ」タピ子は静かに微笑んだ。「いいだろう。そいつはお前に任せる」「おっしゃあ!」タピ子は再びパン斗を見た。「邪魔が入ったが……続きを始めようか」二人の視線が交錯し、恐るべき流行力が空中で衝突した!

 こぉぉおおぉぉお

 その激しい流行力の衝突の最中、パン斗は静かに息を吐いていく。「……!? これは」タピ子は辺りを見渡した。どこからともなく、声のような何かが聞こえてくる。「君にも聞こえるだろう……」パン斗は覚悟を秘めた力強い眼差しでタピ子を見た。「これは人間界に暮らす人々の声……パンケーキを愛してやまない人間たちの心の叫び!」そのパン斗の雄叫びに呼応するように、タピ子にもそれははっきりと聞こえた。歌うような人々の祈りの声が!

 パンケーキ食べたい🎵
 パンケーキ食べたい🎵
 パンケーキ食べたい🎵

「なんだと!?」それはまるでタピ子の心の中に沁みいるように響いてきた。「わかるか……俺は決して一人なんかじゃない。俺は多くの人間たちの想いを……そして故郷にいる仲間たちの愛を! すべてをパンケーキのように重ね合わせて、そして闘う!」

 すさまじい流行力の高まり。パン斗の体に力が漲っていく。パン斗は拳を力強く握りしめ、腰を深く深く落としていく。そして両の拳を地面につけると、刹那、裂帛の雄叫びをあげた!

「どすこい!!」


 タピ子に、巨大な力が激突した。

【05に続く】

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