◇ 劇場予告 ◇

紺碧の空。流れる雲。丘の上、弦楽器をつまびく中性的な吟遊詩人。その赤く美しい髪がたなびき、歌声は朗々と風に乗る。

あぁ。その酒場には集っている。一騎当千の強者たちが。彼らは恐れという言葉を知らない。狂ったAI、知性マグロ、大怪獣、深海に潜む名状しがたきもの──たとえ相手が何者であろうと、その蛮勇に変わりはない。あぁ。しかし彼らにも訪れようとしている──終わりの時が。迫り来る敵、それは破滅。パルプに終焉をもたらす者。

── PULP SLINGERS ──

「なんだって？　依頼者は──『 Note』！？」
「そうみたいだよ、R・V」

黒ずくめの男、R・V。そして茶をすすりながら静かに応える執事風の優男。それはいつも通りの日常、いつも通りの依頼……のはずだった。

R・Vに迫り来る謎の武装集団！

「なんと！？」爆発する高速道、崩壊する立体交差！　爆発の中、飛び出す車！　車体の緑が鮮やかに煌めき、高速ドリフトを決めた！　運転席から身を乗り出し女が叫ぶ。「何をぼさっとしてるんだい、さっさと乗りな、R・V！」

戦いはかつてない規模へと発展していく！

「なんだってんだ、こいつらは！」空を駆り、敵を斬るR・Vの人型機動兵器『イクサ・プロウラ』！　襲い来る敵の機甲兵団！　「はっはー、ここは俺に任せておけ！」鋼鉄の単眼巨人が吠える！　繰り出される大質量ノーザンライトボム！　「マスター、落下軌道、速度ともに完璧です」応答する少女めいたアンドロイド！

「ルリャーッ！！！」轟く神秘的な叫び。ランスが敵を貫いていく。躍り出たのは海月のドレスをまとった戦乙女、白く輝く機体であった！　「私を忘れてもらっては困るわ！」「かたじけない！」

そして訪れる別れ──。

「いいから行くんじゃ、R・V！」
「しかし！」
「お前さんには……まだまだやるべきことがあるはずじゃ。そうじゃろ？」

黒いコートをたなびかせ、襲い来る敵にただ独り立ちはだかる老人。その両手には強大な力を秘めた二振りの斧！　「行け！　行くんじゃ、R・V！」

今、『Note』に最大の危機が迫る！

イクサ・プロウラの行く手を阻む古代ローマ剣闘士風機動兵器！　「なぜだっ！　なぜなんだ！」「ふっはっ。俺は一度、お前と本気で……戦ってみたかったのさぁ！」「ばかやろぉ！！」交錯する剣と刀！

モニターの向こう。揺れるエメラルドグリーンの髪。固唾を飲んで見守るパルプスリンガーたち。少女が優しく微笑む。「私は構いません。それしか手段が残されていないのですから。だから……だからせめて皆さんの手で……お願いします」

灰がかった髪の青年が叫ぶ。「こんなの……こんなことって。僕は……くそっ！」その叫びとともに超大型戦車から放たれる超弩級の砲撃！　白衣の男もまた静かに言った。「私も……続きます」マイクロ太陽が城塞型巨大兵器から放出される！　直撃するふたつの猛爆。超巨大創作売買施設『Note』が──閃光に包まれた！

（大音量BGM）

激しい戦いの中、傷つき、ついに倒れようとするR・V。

「くそっ……ここまでか……ここまでなのか！」だがその時！　爆音が轟く──それは男が大地を強く踏み込んだ音。同時に突き出される腕。男が持つ拳銃が赤熱し、轟音とともに銃弾が放たれる！　「あんたは……！」男の背中が語る。「R・V……貴方は……ここで倒れる、そんなタマではないはずだ」その眼前、一撃のもとに壊滅する敵の機甲兵団！

そして目覚める新たなる力！

「これは……！」驚くR・V。「ふふ。こんなこともあろうかと。準備しておいたんですよ」執事風の男が優しく応える。二人の見上げる先、そこにはイクサ・プロウラの新たなる武装が！

（大音量SEとともに）

「今すぐ見たくてたまらない！」
── ネオサイタマタイムズ
「この夏、真に見るべきマストの映画」
── コラムニスト・逆噴射為五郎

映像化不可能といわれたあの作品が遂に映画化！
あなたは今、伝説の目撃者となる！

劇場版『パルプスリンガーズ』
R・Vと虚無の兵団

平成三十二年夏、全国ロードショー！

（暗転）

酒と火薬の匂いが立ち込めるバーのテーブル。ころころと転がるダイス。その出目は１。こげ茶色の髪を短く刈り込んだ男が顔をしかめた。

「この出目は……最悪だな！」

【予告終わり】

これは何？

遊行剣禅さんによる連載パルプ小説「パルプスリンガーズ」の妄想二次創作です。

「パルプスリンガーズって何？」と思った人は、ジョン久作さんによる詳しい紹介記事があるので、是非、それを読んでみましょう！

なお今回の登場人物は下記の「二次創作OK」な人たちの中から、すでに本編で活躍済みの人たちをチョイスしてみました。（1名、未登場な人も勝手に書いたけど！）

最後に

パルプスリンガーズは今年の夏コミでも物理販売されるとのことです！

興味のある方は、是非！

【おしまい】