テァン、無双を舞う
「生命の本質は振動だ。わかるな」
「はい、先生」
テァンは静かな息を吐き、自らの内奥へと心を移した。
ドク、ドク、ドク…
心臓の鼓動。体の脈動。己を構成する微細な分子の律動。風が吹きわたり、テァンの髪を揺らす。感じる。駆ける動物達。鳥のさえずり。命のやり取り。生命の鼓動。大地。すべてが振動している…。
テァンは目を見開く。
目の前には斧を振りかざした男。テァンは流れる動きで男に触れる。
「振雷掌」
「!?」
刹那、男が爆散! 花びらめいた肉片が飛び、骨がくるりと宙に舞った。血に染まった顔でテァンは微笑む。これこそが生命の振動、その理。
「先生、俺にもできました」
「見事」
前方からは轟く地鳴りと共に万の軍勢が迫る。はためく幾千もの軍旗! 土煙が天に達し、空を黒く染めている!!
悪鬼羅刹の王ゼガンは満面の笑みで応えた。
「次の授業だ。お前の同胞を、人間どもの軍勢を根絶やせ!」
「はい、先生!」
弾ける笑顔と共にテァンは跳んだ。
【次回「テァン、舞う」に続く】
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