2022-10-08「夜に薫り立つ、ニヒル 新東宝の天知茂」上映後トークショー 雑レポ

場所:新文芸坐(池袋)
時間:21:30頃~22:20頃
登壇者:春日太一さん、上坂すみれさん

※メモとってないので記憶に基づいたレポです。発言部分もニュアンスでの記述となります。

●本イベントについて

このトークショーは、池袋の名画座「新文芸坐」での特集上映「夜に薫り立つ、ニヒル 新東宝の天知茂」の初日イベントとして、「勝利者の復讐」「大虐殺」の上映後に行われた。

<新文芸坐>公式サイト

<特集告知ツイート>

上坂さんは常日頃から「天知茂ファン」を公言しており、その愛が伝わるべきところに伝わったか、以前には『上坂すみれの新東宝シアター ―天知茂、痺れるほどキザで、ニヒルで―』なる特別番組も「日本映画専門チャンネル」で放送されている。

また、上坂さんと春日太一さんとはこれまでにも雑誌での対談やトークショーでの共演があり、上坂さんファンの同志には期待度の高い組み合わせと言えるだろう。
筆者も日本映画については不勉強ながら、お二人の熱量高いトークを期待しつつ、劇場へ向かった。

●ゲスト登壇

上記2作品の上映後しばらくして、劇場スタッフさんの案内から春日さん、上坂さんが登壇。

<当日の上坂さん>

ステージ下手側に春日さん、上手側に上坂さんという配置について春日さんは「こちら(下手側)のお客様、僕側になっちゃってすみません・・・」と上坂さんファンへの気遣いを見せ、笑いを誘う。一方上坂さんは会場を見渡し、ほぼほぼ満席の様子に「大盛況!」と喜びの笑顔を見せた。

●天知茂グッズ

一見「派手な和柄」のパーカーを身にまとった春日さんは、「輩(やから)感が出ているかもしれないけど、普段こういう格好をしているわけでは・・・」と弁解しつつ、これを劇場物販で販売中の「天知茂グッズ」であると説明。
上坂さんはその見た目の印象からか、「このあとマルハンに寄って帰るのかな?「シンフォギア」(※パチンコの機種)とか打って・・・」と、会場の新文芸坐がパチンコ店「マルハン」の上階であることをネタにした発言で会場を和ませた。

<春日さんが着ていた「新東宝 地獄のパーカー」>

<春日さんが着ていた「怒号する巨弾 ROAR OF THE BULLETS Tシャツ」>
トークショー中は「恐怖のカービン銃」Tシャツとされていたが、「怒号する巨弾」が正しいと思われる。(※筆者調べ)

また、上坂さんからはこれら新東宝の最近のグッズ展開に関して「早くコラボカフェとかやってほしい」「富士急(ハイランド)とコラボしないかな」などと今後の展開に期待する発言も飛び出した。

●上映作品について

本日上映の2作品「勝利者の復讐」「大虐殺」は春日さん、上坂さんが1本ずつ挙げたそれぞれの推薦作品だったのだが、ここで春日さんからその選定の経緯が語られた。
推薦作品の候補としてひとり3本ずつタイトルを挙げたところ、なんとうち2本が重複したという。
そこであえてその2本ではなく、重複しなかった1本ずつを上映作品としたそうだ。
上坂さんからは「未ソフト化作品」として「勝利者の復讐」が、春日さんからは「上坂さん未視聴」だった「大虐殺」が選定された。
(※なお上坂さんは「大虐殺」をトークショー前日に初めてDVDで視聴したとのこと)

●天知茂は「ギャップ萌え」?

続いて上映作品のトークになると、まずは「大虐殺」について上坂さんは「冒頭15分くらい(関東大震災のシーン)は恐ろしいですが・・・」としながらも脚本・演出に対する多数の「ツッコミどころ」を列挙。春日さんも「(新東宝の天知茂が出ている作品は)いい具合に抜けている」と評し、客席から共感の笑いが起こっていた。

しかしこういった「ラフさ」も上坂さんにとっては新東宝映画の魅力と感じられるようで、「ラフな脚本を(天知茂が)真剣に演じていると思うと胸キュン」と言い、ときめきの表情を見せた。
さらに天知茂について、役どころ(本作ではテロを行おうとする社会主義者の青年)とは裏腹に「本人の人柄の良さがどこかにじみ出ている」との持論を展開。春日さんからも「悪役でも良い者の役でも、どこか(役として)ツメが甘い部分がある」「怖い顔だけどかわいらしさがある」といった発言があり、両者とも「役と本人のギャップ」を天知茂の大きな魅力のひとつとして捉えているであろうことをうかがわせた。

また「勝利者の復讐」についてのトークでも、天知茂の一人二役(双子の役)というところから「ミュージックビデオのよう」「(双子のシーンは)BLかな?」と両者独特の視点で作品を語りつつ、「(作中の)犯罪の手口がアバウト」といった手厳しい指摘は相変わらずの調子だった。

●上坂すみれと天知茂

ひととおり作品について触れたところで、上坂さんが「新東宝映画」「天知茂」にハマったきっかけについてのお話となった。
上坂さんが学生の頃、三省堂書店で「MC☆あくしず」(※雑誌)を購入→神保町シアターで様々な特集上映を鑑賞するという、本人曰く「ぼっちルーティン」をこなしていたところ、天知茂の特集に出会い、上映作品のひとつ「憲兵と幽霊」からどハマりしたという。

そこから「座頭市物語」「黄線地帯(イエローライン)」「スター毒殺事件」といった他の天知茂出演作にも話が及び、ふたたび天知茂の魅力にフォーカスしたトークが展開された。
上坂さんからは「自分の行動(悪事)に悩んでいる所作がグッとくる」「憂いや迷いのあるキャラクターがぴったり」といったお話や、春日さんからは「座頭市物語」での天知茂を「ヒロイン感がある」と評するお話もあり、総じてシンプルな悪役・敵役に留まらない、天知茂という俳優の奥行きをアピールしていた。

さらにトークは盛り上がり、上坂さんの「もし(「男はつらいよ」シリーズの)寅さんを天知茂が演じたら・・・」という発言をきっかけに、二人は「天知茂版・男はつらいよ」の世界を妄想することに。
「柴又より歌舞伎町の路地裏やネオンが似合う」(春日さん)
「カッコつけたポーズでバナナの叩き売りをしている、そのバナナの中には銃弾が・・・」(上坂さん)
「沼田曜一(※「勝利者の復讐」「大虐殺」にも出演している俳優)に追われて全国を逃げ回っている」(春日さん)
といったアクセル全開の内容に、客席からはたびたび笑いが巻き起こっていた。

●「癒やし」としての天知茂

「怪談 本所七不思議」など翌日以降の上映ラインナップのお話から、トークは思いがけず「天知茂の効用」とでも言えるような内容へとシフトしていった。
春日さんから「自分がうまくいっていない時、うまくいっているキャラクターを見ると苦しい時がある」というお話があると、上坂さんも「『トップガン』の冒頭だけで腹たってきます」と同意。対照的に天知茂は「どんな映画でもうまくいっていない」(春日さん)として、そこに安心感やありがたみがあるとのこと。
お二人にとって、天知茂は単に魅力的な俳優というだけでなく、人生の逆境に寄り添ってくれる存在なのかもしれない・・・と思える時間だった。

●エンディング ~社会主義者は何を飲むのか?~

トークショー終了の時間が近づくと、春日さんからは「俺よりひどいやつがいる」と思いながら映画を見て心を癒やして欲しい、と改めて「天知茂」の見どころが語られ、上坂さんからは「大虐殺」でのワンシーンを踏まえたお話として「天知さんと同じタイミングヤケ酒を・・・」という謎の楽しみ方がオススメされた。
なお、あの時代の社会主義者は何を飲むのか?という上坂さんの疑問から、春日さんが客席に「社会主義者の人・・・?」とまさかのアンケートを実施しそうになるという一幕もあり、客席からは笑いと拍手が送られていた。(結論としては「焼酎あたりではないか」というところに落ち着いた)

改めて最後の挨拶となり、上坂さんからは本イベントが盛況を見せたことについて「活き活きしちゃいました!」と満足げな笑顔がこぼれた。
そんな上坂さんに春日さんから、TVシリーズ「無宿侍」のDVDが発売されるという最新情報が告げられた。「ここでも不幸な天知茂が見られます」との一言に上坂さんも「いい話を聞きました!」と目を輝かせた。
その様子からは、上坂さんにとってもまだまだ未知の「天知茂」の世界が広がっているのだなと感じられた。そしてまた上坂さんの口から、その新たな魅力が語られることもあるのだろう・・・今日のような活き活きとした笑顔で。
筆者がそんな期待に思い巡らす中、トークショーは和やかに幕を閉じた。

劇場を出て改めて周辺を見ると、そこは歌舞伎町ほどではないが、風俗店や居酒屋が集まるやや猥雑な雰囲気のあるエリアだった。22時を過ぎた池袋の路地裏にひしめく店々の看板やネオンの光の中に「バナナの叩き売りをする天知茂」の幻を見つつ、筆者は帰路についた。

令和も4年となる現在、新東宝の作品が各所で上映され、盛り上がりを見せている。まだ鑑賞したことがないという方は、まずは「天知茂」の出演作品から、その魅力に触れてみてはいかがだろうか。
<了>

<入場特典の天知茂ブロマイド>

上坂さんももらったとか。

<筆者と「憲兵」天知茂パネル>

許してつかあさい

●ダイジェスト動画

※2022-11-11追記
youtubeの新東宝【公式】チャンネルにて本イベントのダイジェスト動画が公開されました。



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