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シン・眠れる森の美女

おはようございます。


最後に記事を書いたのはいつかな?と言うレベルでご無沙汰してしまいました。

「週に一回くらい備忘録みたいな感じで……」なんて始めた頃は思っていましたが、やはり続かず。夏休みの絵日記の宿題すらまともにできなかった僕にはやはり厳しい目標でした。


飽きるのが早いエピソードに年賀状の話があります。

小学校低学年くらいの頃でしたかね。
クラスメイトに宛てて手書き(手描き)の年賀状を作るときは、僕は好きだったポケモンの絵を描いて、それに年始の挨拶を添えるというスタイルでした。

たまたま最初の方に書いたお友達には「ホウオウ」「リザードン」といった謂わゆる花形のカッコいいポケモンをがんばって描くのですが、飽き性の僕は後半になってくると面倒くさくなってきて、最後の方のお友達には「コイル」「ビリリダマ」(暇な人はそれぞれのポケモンを検索してみてください)といった3分で描けちゃうようなマイナーポケモンを送りつけていました。子どもというのは時に残酷ですね。





本筋を話すより先に脱線するという新しいタイプの脱線を披露しましたが、今回の記事の本題はもちろん、

新制作「眠れる森の美女」

のお話です。

「オーロラ姫を死に追いやったのは王子だった!」など、シナリオ等作品解説のお話は各種メディアやご覧になった方のレビューで幾度となく取り上げられているので、その辺は割愛させていただきますね。



クリエーションが始まったのは何と4月。「白鳥の湖」が終わってすぐのことでした。

そこから「蝶々夫人」のリハーサルと並行して振付が進み、およそ5ヶ月をかけて概形が完成しました。8月半ばのことです。


そして1ヶ月半をかけて練度を高め、ディテールを詰め、時には作り直しも辞さないディレクターのこだわりに、みんな必死で食らいついていきました。





そうして迎えた運命の10/8(日)。

珍しくあまり緊張はしなかったのですが、会場の雰囲気は異様でした。
始まる前から沸るような熱気と興奮、上演中の客席からの圧もそれはそれは凄まじく、地鳴りのような歓声、拍手。後にも先にもあんな公演はなかったんじゃないかという、本当に特別な日でした。



その日から1ヶ月に渡る公演期間。

間に公演の無い期間ももちろんあるのですが、そこで集中力を維持すること、舞台勘を失わないこと、小慣れないこと……。このあたりに常に心を砕きました。

コンスタントに公演すること自体はルーマニア時代によくやっていましたが、同じ演目だけをある程度長期間続けるのは初めてで、また違った難しさがありましたね。


渋谷で初演2公演。
1週間空けて再び渋谷で2公演。
10日ほど空けて上野で8公演。
4日ほど空けて大阪で2公演。
3日ほど空けて福岡で大千穐楽。



こうして書き出してみると、なかなかの強行軍。ハードだった、というより本当に難しかったですね。

こういう時に「常に調子が一定である」ことの最大の強みが出ますし、それが何より難しいなぁと改めて思いました。






僕は今回はブルーバード、カバリエの2役を踊りました。


ブルーバードは、このバージョンではただのディベルティスマンではなく、きちんと役割があります。

オーロラ姫のお友達で、小さな頃から一緒に遊んできた森でのパートナーのような存在。
世界観はさながらディズニー映画のようで、そういう微笑ましさや温かさが出るように心がけて踊りました。


もちろん見せ場のグランパドドゥも健在で、お相手フロリナ姫は岩井ちゃんでした。

オーロラ姫とリラの精というメインロールを踊りながら8回もこの役をこなした彼女には心からの拍手を送りたいです。

見目麗しく背も高い岩井ちゃん。普段だったらまず組まないお相手なので、とても貴重な時間だったなぁと。組むときもぜーんぶ自分でやってくれちゃうので、僕はあんまり必要なかったくらいです。笑


キツくて余裕がないときでも、しっかり視線を合わせて笑顔を見せてくれて、そういうコネクションにすごく助けられました。

岩井ちゃん、ありがとうございました。


自分の踊りに関してはひたすらに体力勝負でした。
緊張しなかったのは「心配事よりも、めちゃくちゃ辛いと分かっている場所に飛び込む恐怖が勝っていたから」なのです。


そういう中で自分のこだわり、そしてディレクターのこだわりを体現できるかというのがチャレンジポイントでしたね。

ディレクターが常々おっしゃっていたのは、「常に鳥であれ」ということ。

ただ立っているときでも歩いているときでも、疲労困憊時であっても、人間であってはいけないのです。本番直前までそれは厳しく指導していただきました。

足が楽な姿勢に甘んじたり、腕を普通に下ろしておくことで休憩したいところを、そうはしない。地味ですが本当に大変でした。

ただそれはものすごく大切なことで、上手い下手とか以前に、舞台上で役柄を生きるダンサーにとっては最低限かつ必要不可欠な舞台マナーだなと思いました。


なのでカーテンコールでもそこは徹底いたしました。終演アナウンスがあるまでは、そこは夢の世界ですから。

ルーマニアでもアメリカでも踊ってきたブルーバードでしたが、また新たな学びがありました。厳しく言っていただいたディレクターには、本当に感謝です。



自分のこだわりは至ってシンプルで、

脚がギリギリまで閉じてNIKE型を描くファイイ
羽ばたくアントルラッセ
上半身を大きく使うブリゼボレー
ブレないリフトとサポート
毎回同クオリティ

の5点は譲らないぞという気持ちでやりました。


特に上野の4日連続ブルーバードのときは5の項あたりが本当に難しかったのですが、それでも毎日自分に出せるベストを持っていき、あまり守りには入らなかったので悔いはありません。





カバリエは1幕冒頭(通常ならプロローグ)に出てくる護衛騎士。
オーロラ姫誕生パーティーの来賓を護衛し、守護妖精たちと踊る男性でここは既存のバージョンと役割は大きく変わりません。

しかしながら同場面にはカラボスという最重要人物が登場するため、クリエーションでも最も長い時間をかけて作った役の1つでもあります。


今回のキャスティングでは、カバリエは若い世代が中心で僕が最年長。
女性と組むシーンが多いため、クリエーションやリハーサルの段階でも経験のまだ少ない若手の手助けをすることが多かったように思います。

僕はパドドゥに関しては平凡ですが、それでもやっぱり歩んできたキャリアの分知っていることはあるので、それを伝えていくことも、今後の自分の役割の1つかなぁと。

謂わゆる中堅の年齢で、若手とベテランの狭間にいる僕の立場というものをいろいろと考えさせられる期間でした。






今回の「眠り」は、僕にとって初めての、Kバレエのゼロから作った全幕ものでした。

振付期間の長さもさることながら、僕たちのあまり関与しない構想段階から合わせればかなりの長期間を費やしているクリエーション。


この規模でこのクオリティで。
舞台美術、セット、照明、衣装、音楽。


ゲネプロ開始前にディレクターがダンサーを客席に集めて、序曲から開幕までを前から見る機会をくださいましたが、あのステージを見た瞬間の高揚感は今でも忘れられません。


そんなプロダクションに関われたこと。ファーストキャストの1人として舞台で踊れたこと。特別な作品の誕生の瞬間に立ち会えたこと。

とても嬉しく、ありがたく、誇りに思います。


ディレクターをはじめ、K-BALLET TOKYOのスタッフのみなさん。

THE STUFFさんはじめ裏方のみなさん。

シアターオーケストラトウキョウのみなさん。

15公演観に来てくださったお客様。


そして一緒に駆け抜けたダンサーのみんな。



本当にありがとうございました。




見逃した方はシネマ上映の続報をお待ちくださいませ。笑



書き漏らしたことがまだまだある気がするんですが、既に原稿用紙8枚くらい書いちゃってるのでとりあえず止めにします。




ではでは。

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