僕の好きな漫画7「AKIRA」


ご無沙汰となりましたシリーズエッセイ第7回目です。

今回ご紹介したいのは大友克洋さんの「AKIRA」です。

いわずと知れた日本SF漫画の金字塔。一時代を築き、数多くのクリエイターに影響を与えた漫画史に残る傑作です。

Wikiによると「超能力による戦闘や超能力のもたらす恐怖、近未来の巨大都市の荒廃した有様やその崩壊を描いたSFコミックであり、緻密でリアルな描写や演出などが話題となり、漫画・映画共に大ヒットした。タイトルの「AKIRA」は大友自身がファンであり影響を受けた映画監督黒澤明に由来する。『週刊ヤングマガジン』にて、1982年12月20日号から1990年6月25日号にかけて連載[1]。途中、アニメ制作による中断あり。全120話。1984年(昭和59年)度、第8回講談社漫画賞一般部門受賞。2002年、アイズナー賞最優秀国際アーカイブプロジェクト部門および最優秀国際作品部門を受賞。また、それ以前の1992年にオールカラー国際版AKIRAが最優秀彩色部門を受賞している。現在、実写映画化が進行中。」とのこと。

うむ、漫画好きならもはや説明は不要ですよね!

…と言いたい所ですが、80年代の作品なので、最近の若い人たちに話しても意外と知らなかったりします。時代は変わるのだなぁ…と、少々寂しかったり。先日、作画スタッフのKくんが、大友作品を読んだことがないという同じくスタッフのNくんに「童夢」を無理やり貸し付けていましたが、Nくんとしてはどうしても読む気がしないのだそうで。確かに今あの絵柄を見ても、当時の感動は体験できないだろうし、古臭く見えるのもなんとなくうなづけてしまうのですが、それはそれ。

僕は中学生の頃に作品に出会い、それまでの漫画の概念を覆すような圧倒的な描写力とスケールに魅了されました。模写しようにも模写のできないハイクオリティな画面でした。それまで(今でも?)漫画というのは、個人か、それに近い少人数で制作されるもので、商業世界の海に個人芸術がプカプカと浮かぶように成立しているものでした。

技術的にも制作費的にも個人で描ける範囲には限界があり、それが漫画の良さでもあり悪さでもあった訳ですが、そんな常識を吹っ飛ばす画面作りには本当に驚き、影響されました。「これどうやって描いたんだ!?」「なんでこんな絵が描けるんだ!?」「何人で描いているんだ!?」の連続です。絵を描かない人が見ても画面のコストが非常に高いことは伝わるのではないでしょうか。
僕が語る必要もないくらいに語り尽くされたスゴイ作品ですので、もしもまだ読んでいない方がいらっしゃいましたら、ぜひ手に取ってみてください。
今時は図書館にも常備されていますので。
現在、スタンダードとなっている漫画表現のいくつかは、大友さんが開発したものであることが理解できますよ。


で、スゴイ作品であることは誰もが認める所ですが、作者の大友克洋さんは「AKIRA」以降、長編漫画を描いていないので、その辺りが漫画業界の人間としては残念です。近年は映画監督として活動されていますが、正直、映画は微妙です(というかクソです)。
芸能人や著名人の中には偉くなると兎角映画を撮りたがる方が多いようで、そういう方を見かけると「その道のプロじゃないんだからやめとけよ〜」といつも思います。大友さんについても、「漫画しか才能ないのに、何で漫画を描かないんだよ」というのが僕の感想。これまでもアフタヌーンに連載の予告が掲載されたり、少年サンデーで連載するなどの噂がありましたが、そろそろ「やるやる詐欺」になりかけていると言うか、大友さん自身「AKIRA」の亡霊に取り憑かれて、そこから抜け出せずにいるように見えます。

もちろん、ご本人は次の展開は見せているつもりでしょうし、「読者がAKIRAから脱却してくれないのだ」と思っている節も見えます。いつだったかインタビューで大友さんが「観客はまたAKIRA的な物を期待してるんだろうけど、そういうのはやらないよ」という趣旨の発言をされているのを見かけたことがあって、「あ、いや、もう誰も期待してないし、一般人はAKIRAを知らない人も増えてきています。持ち上げてるのは僕も含め、一部の業界関係者や原画展に足を運ぶようなアート系オシャレ野郎かマニア層なんですってば。一般層にはアピールできてないの。新作描いてくださいよ」と思ったことがあります。実際30年近くも前の作品ですしね。

先日、近所の食堂に行ったら、大友さんの特集本が置かれていて、「大友克洋再起動」と大きく書かれていたのですが、発行年を見ると2012年なんですよ。「今は何年だよ?」という話です。

批判めいたことを書いてしまって申し訳ございません。でも、作家は「今」が勝負です。鮮度が命です。賞味期限は短くて、僕なんてすっかりピークを過ぎた作家です。僕よりも若い作家さんが活躍する姿を目にする度に地団駄踏んで悔しがっています。描かない人にも発言権はありますが、発言力はありません。現時点で面白い作品を描いている人が偉いんです。過去の栄光なんてクソ喰らえです。

…ということで、大友さんの新作に期待しています。

多分、無理だろうけど。

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