正規ストアで堂々と海賊版データが販売され、作家がそれに気がついても解決できない不条理。

最近、作家に無断で作品を配信している電子書籍ストアを発見しました。

なぜ気がついたかと言うと、その作家さんから「作品を電子書籍配信したいので各ストアに取り次いで欲しい」とご依頼をいただいたのがきっかけです。
どのストアに取次可能か調べていたところ、配信されているはずのないストアで作品が販売されているのを発見してしまいました。

こう言ってしまうと何ですが、電子書籍業界では「非常によくある出来事」です。

作家さんにお伝えしたところ、「そのストアには配信を許諾していない。配信を停止させてデータを回収したいから担当者を紹介して欲しい」とのご依頼を受けました。
で、ストアに連絡したところ、担当者から「作家が言っているなら配信は停止するけどデータは渡せない」と連絡が来ました。
何と著作権侵害という不法行為を行なっているストアが、著作権者による作品データ回収の要求を拒んだのです。

なぜそのような事態が起こるのか解説します。

まず、「なぜ作家に無断で作品を配信する状態になったのか?」と想像すると、多分、間に取次が何社か入っていて、その上流の誰かが作家に許諾を取っていない違法な作品データを下流に流した可能性が考えられます。
ストアは受け取ったデータが違法性のあるものだとは知らずに販売したのかもしれません。
取次との契約書には「甲(取次)は納品したコンテンツがいかなる第三者の権利を侵害しないことを保証する」とでも書かれているのでしょう。

つまり、ストアは被害者感覚なのです。
取次に悪い奴が混ざっていて騙されてしまったと。
「許諾が取れていると聞かされていたから配信したのに、それが事実じゃなかったからと言って、ウチを責められても困る」という態度です。
「じゃあ、その悪い取次ってどこ?」と聞いても無駄です。
直接契約のある取次の上流がどうなっているかストアも知らないか、知っていても契約上の守秘義務があるため作家には明かせない仕組みです。

「許諾が取れていると聞かされていたから配信した」のが本当であれば(嘘かもしれない)、まあ、分からなくもありませんが、内部の事情は作家には関係がありません。
作家からすれば、中間業社がどこかなど知らないし、紙の出版のように取次の存在は必須ではありません。
作家とストアが直接契約して作品が配信されているケースも多々あります。
「ある日、ストアを見たら、自分の作品が無許諾で売られていた」というだけです。
そこにある客観的事実は「ストアが無断で作品を販売している」ということだけなのです。
ストアが取次に責任を転嫁したところで、それは事実かどうかは作家には分かり得ないことです。

データを渡せないのは、「取次から受け取った預かり物のデータで自社の所有物じゃないから」だそうです。
仮にそれが事実だとしても(事実じゃないかもしれない)、内部の事情は作家には関係がありません。
て言うか、著作権者より、違法な(可能性のある)取次を優先するの?
そこにある客観的事実は「ストアが無断でデータを販売している」ということだけです。
取次に責任を転嫁したところで、それは事実かどうかは(以下略)

斯くして、「違法データを販売しているストアがありました。作家はそれに気がついたけどデータを回収できませんでした。データは今も悪意を持った誰かの手元にあり、今後も利用され続ける可能性があります」という結論になるわけです。

そもそも僕がストア担当者に連絡したのは、「作家は作品の配信を許諾していない。データを回収して配信を停止させたいから担当者を紹介して欲しいとの要望を作家から受けた。作家をご紹介したい」と伝えるためでした。
僕は弁護士ではありません。
代理人役を買って出て、データや債権回収の交渉などを行ってしまうと弁護士法に違反します。
それを理解できずに、「配信は停止するけどデータは渡せない」と一方的に僕に伝えて終わりにしようとするストアも問題ではあるのですが。(売り上げなど機密情報も伝えてくるので、「御社のコンプライアンスはどうなっているのですか?」とハラハラしました)
結局、今も作家さんをストア担当者に紹介できずにいます。
それをここに書くお前も問題だろうって?
では、誰がどこに告発すれば、この問題が解決するのでしょうか?
僕は今、同じような案件を何件も抱えています。
それこそ弁護士に依頼するのが筋ですが、全員がそれをできるわけではありません。

繰り返しとなりますが、これは電子書籍業界では「非常によくある出来事」です。

海賊版サイト云々も大事ですが、正規版を装い正規ストアで堂々と海賊版データが販売されています。
それに作家自身が気がついても、データの回収が難しい状態です。

作家の皆さん、あなたの作品は大丈夫ですか?

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佐藤秀峰

コメント4件

被害に遭われたこのケースだと、やはり印税はあなたには入らないんですよね?どこに印税が行ってしまうのですか?違法にデータが流されたものだと知らずに売っていたネット媒体ですか?それとも確信犯的なデータながした闇の業者(あるいはハッカーみたいな個人)に入ってしまうのですか?
ご依頼(報酬を得ていると仮定して)のうち「データや債権回収の交渉など」の部分(代理人役部分)については、報酬を得ず、無償でおこなえば、弁護士法72条に反しません。 ご参考まで。
弁護士法72条には「報酬」「法律事務」と記載されていますが、それぞれの用語の定義までは明記されておりません。 各々の解釈でよいと思います。 仮に、弁護士法72条に抵触したとしても、弁護士法72条は、憲法と独占禁止法に反する不当な法律だとして、反論する余地はあると思っておりますhttps://note.mu/yuuukiii/n/n60fbfac96486
すみません、上記URLを間違えてコピペしてしまいました。失礼致しました、正しくはhttps://note.mu/makekatu/n/n5fc2587ebcb6
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