釣りをしていて考えたこと 20

相変わらず釣りを続けています。


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さて、クロアナゴ をたくさん釣ってきました。

下北沢に飲食店をオープンさせる友人Uさんのお誘い。
マレーシア発祥「ドライ・チリ・パンミー」と呼ばれる汁無しまぜ麺のお店。
その名も「圧延ジャパン・ミー」。
3/10オープンですって。


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で、江戸前のアナゴ煮詰めを使用した自家製ダレを試作中とのことでクロアナゴ釣り。
ボートで東京湾沖へ。

クロアナゴは、お鮨で使われるマアナゴとは別の種類。
細かく分類するとダイナンアナゴとクロアナゴの2種類がいるそうですが、あまり見分けがつきません。
同じアナゴ科の魚ではあるのですがとにかく巨大です。
「アナコンダ」などと呼ばれているほど。
体調1mがアベレージ。
太さは男性の腕くらい。
皮側に太めの骨がびっしりと入っていて、すべて抜き取るのは困難、そのまま食べるのはなかなかやっかい。
好んで釣る人は少なく、市場流通量も少ない。
一般人には処理が難しいけど、味は素晴らしいので、出汁を取るには最適。
特に煮詰め=ツメは最高。
ツメとは魚介や椎茸・昆布などを煮た煮汁を煮詰め、そこに醤油、砂糖、みりん、酒などを加えた、とろみのあるタレのこと。
そんな事前情報です。

クロアナゴは、イカの切り身などをエサにシンプルな仕掛けで釣ります。
割と簡単に釣れて引きが強いので「とにかく大物を釣ってみたい!」という人には面白いのではないかと。
個人的にはとても面白かったです。

4匹釣って、Uさんから「もう1匹持っていけよ」と5匹持ち帰りました。
総重量11kg。
ちょっと持ち帰りすぎました。
初めてのチャレンジでテンションが上がりすぎましたね…。

面白い。
また釣りたい。
また釣るためには「また食べたい」と思えるように美味しく食べなくては。

ということで、クロアナゴ料理にいろいろとチャレンジしてみました。


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写真はすでに切り身になった状態。

まずは下処理。
デカくて太くて超ヌルヌルの魚です。
下処理の難易度は最上級との噂。

ゴミ袋に米ぬかを入れて魚と一緒に揉んで滑りを落とします。
続いて70~80度のお湯を回しかけて金ダワシでゴシゴシ。
触ってキュッキュするくらいまで滑りを取ったら、今度は血抜き。

釣ってすぐにエラを切って放血させましたが、もうひと押し。
シンクに水を貯め、尻尾を切り落としたクロアナゴをその中に入れたら、エラの部分を掴んで1~2分ジャブジャブと揺さぶります。
さらにエラにホースを当てて動脈に水を流し込みます。
すると残っていた血が尻尾の断面からチョロチョロと流れ出てきます。
やりすぎると身が水っぽくなるのでちょっとだけ。

それからまな板へ。
ていうか、いつも使っているまな板には乗りません。
ベニヤ板にアナゴを乗せて目打ち→背開き。
そのまま背びれの下から背骨に刃先が当たるように包丁を入れ、斜め上に引きながら背骨を切り取ります。

ネットの情報では内臓に臭みがあるとのことでしたが、まったくありません。
血抜きと冷やして持ち帰ることを徹底すれば、臭いは少ない魚な気がします。
頭と内臓を取ってから、3~4等分に切り分けます。
そして、身に5mm間隔くらい(のつもり)で包丁を入れました。
鱧などでよくやる「骨切り」というヤツです。

で、最初の写真の状態に。

うーむ、デカイだけで意外と簡単。
下処理にたったの5時間しかかかりませんでした。


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お刺身と蒲焼き丼。

お刺身は下処理した際に余った端っこ肉を味見程度に。
水分が多くて歯ざわりはイマイチ。
身肉自体は甘みがあり美味しい白身でした。
1~2日脱水したらもっと美味しくなるのではないでしょうか。

蒲焼き丼は、身をピチットシートで3時間脱水し、180度のオーブンで30分焼いてから、圧力鍋で15分蒸しました。
その間にタレを作ります。
みりんとお酒を沸騰させ、クロアナゴの中骨を放り込んでアクを取り、砂糖を投入、最後に醤油を入れて再沸騰。
半分は漬けダレに、半分は煮詰めてとろみを出します。
蒸しあがったクロアナゴに串を打ち、タレに何度か漬けながらグリルで焼き上げました。
焼きあがったら、最後にとろみのあるほうのタレを塗ります。

なかなかの手間でした。

が、骨が若干気になります。
前評判通り、背中側、お腹側とも身にY字型の骨がびっしりと入っています。
骨ごと食べられなくもないけど気になります。

身はマアナゴのようなふっくらした食感ではなく、「ホクホク」くらいの感じ。
皮目は鶏肉のような弾力も感じられます。
やや大味。
焼いた際に脂が落ちてしまったのか、ジューシーさが足りません。

ヤバイ…、これはなかなか調理が難しそうな魚です。

臭みはまったくないんですけどね。


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ひとまず一夜干しにしてグリルで白焼きにしてみました。

パリパリに焼いたのが良かったのか、これは骨が気になりません。
ただ、焼くとやはり脂がない印象です。
可もなく不可もない美味しさ。


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混ぜ鮨と湯引き梅肉乗せ、コンフィ。

混ぜ鮨は酢締め(15分酢締め→酢で湿らせたペーパーにくるんで1日)にした身をフライパンで両面を焼き、刻んで目立つ骨を抜きました。
鶏肉系のぎゅっとした食感、食味。
脂弱め、骨はほぼ問題ないけど完全に問題なしとまでは言えず。
たまーに骨が当たります。

梅肉乗せは酢締めにしたアナゴを1分ほどボイル、梅にみりんなどを混ぜて包丁でたたいたものを乗せました。
これは骨が難あり。
塩と酢の成分で、脱水&骨を柔らかく出来ると思ったんだけどなぁ。
もしかしたら漬け込む時間が短かったのかもしれません。
骨切りを2mm間隔にしてみると良い気もしました。

コンフィはピチットシート3時間脱水のものを小さく切って90度くらいのオリーブオイルで1時間煮たもの。
骨、油分とも問題なし。
ただ、1時間煮たので水分が飛びすぎてしまったかな?

どれもまずまず美味しいけど、飛び抜けて美味しいとまではいかず。


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クロアナゴをヨーグルト塩麹に3日間漬け込んでみました。
今度はヨーグルトで骨を柔らかくし、塩麹で身を引き締めて旨味を凝縮させる作戦。
それを白焼きと煮アナゴに。

白焼きは味の違いを確認したかったので、一夜干しとヨーグルト塩麹の2種。
ヨーグルト塩麹のほうが旨味があるというか、焼いて脂が落ちてもあまり気になりません。
骨はどちらも気にならず。

煮アナゴは、まず骨で出汁を作ります。
そこに身を投入し、醤油、酒、みりん、砂糖を加え、落とし蓋をして中弱火で25分。
落とし蓋を外して煮汁を回しかけながら10分。
アナゴを取り出してツメを作りました。
煮汁が若干濁ってしまうのが残念ですが、身の柔らかさと皮のプルプルがしっかり感じられて美味しかったです。
骨も問題なし。
ヨーグルト塩麹効果+このくらい煮れば大丈夫っぽいですね。
大分、美味しく調理できるようになってきました。

けど、マアナゴで作ったほうが美味しい気がします。


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クロアナゴ とほうれん草のクリームパスタ。

ヨーグルト塩麹に漬け込んだ身を白焼きにして刻んだものを使いました。
すると…。
何と骨が気になるじゃありませんか。
白焼きにしただけものでは気にならなかったのに、それを軽く煮込むと骨が感じられた訳です。
おそらく、白焼きの時も骨はやや硬さがあったのでしょうね。
皮や身の表面のパリパリの食感が骨の食感を消してくれていたのだと思います。

うーむ…、悔しい…。

干して焼くと骨は気にならないけど脂が落ちる。
煮れば脂は煮汁に残るけど、軽く煮た程度では骨の食感が目立つ。
35分以上煮れば骨は気にならないっぽい。
ヨーグルト塩麹に漬ければ旨味が増す。
けど、やや大味。
どうすれば完全に美味しいクロアナゴ料理を作ることができるのでしょうか?

そもそもそこまで頑張ってクロアナゴを食べる必要があるのでしょうか?

命を大切に使い切る。
これは大事な気がするんだよな…。


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ということで、クロアナゴサンド。

ヨーグルト塩麹クロアナゴをお酒で湿らせたキッチンペーパーで包み、圧力鍋で1時間蒸してみました。
鍋から漏れる蒸気がふんわりとホットケーキのような香りです。
魚なのに不思議なヤツですね、彼らは。

蒸しあがったクロアナゴにあらかじめ作っておいたツメを塗り、薄焼き卵を乗せます。
パクチーを乗っけてレモンを絞りフォカッチャに挟みます。

何と…!

マジ美味です!

万が一、骨が気になる場合に備えて、フォカッチャをグリルでザクザクに焼いておきました。
パリパリ食感で骨の食感を消す作戦。
が、不要。
完全に骨は気になりません。

ツメは間違いなく美味しいので、塗りたくって旨味をプラス。
蒸したことで身の旨味に凝縮感が出て、甘いツメにレモンの酸味もよく合います。

脂と旨味がありつつ骨がまったく気にならないクロアナゴが完成。
ちなみにパンも大好きです。
都内有名店はもちろん、旅行に行くとその地方のパン屋さんを巡ります。
「フォカッチャならココ!」というパン屋さんに焼きたてを買いに行きました。


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「ヨーグルト塩麹お酒圧力鍋蒸しクロアナゴ」のインボルティーニ。

クロアナゴ のほぐし身にセミドライトマト、オリーブ、ケーパー、クルミなどと混ぜ合わせ、一夜干しの皮で包んで白ワインで蒸し焼きにしてみました。
骨が上手く処理できていることは確認済み。
ほぐしてしまうと逆に食感がホロホロ過ぎ。
アクセントが欲しくなったのでクルミ。

一夜干しの皮で包んだのは失敗でした。
加熱すると縮んで丸まってしまうので、見た目が汚いです。
豚肉やベーコンをスライスしたもののほうが良かったかも。
味は良い感じ。

美味しいけど暫定1位はクロアナゴサンド。


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定番の燻製。
これはヨーグルト塩麹漬けを水洗いしてから1.5日干して燻製にしました。
鶏肉系のプリプリ食感。
となると、やはり骨が心配。
試食してみると気になったので、小さめに切って丁寧に骨を抜きました。
とても美味しいです。
暫定2位。


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クロアナゴ飯。

まずは煮アナゴを作り、ほぐして小骨を抜きます。
骨で取った出汁でお米を炊いて、ほぐし身を混ぜ合わせました。
煮アナゴの腹側の骨がない部分を残しておき、ご飯に乗せてツメを回しかけました。

出来立ては美味しかったのですが、冷めると若干骨が気になりました。
骨切りした身を一夜干しにしたので骨が細かく分断され、細部の骨が取りきれていなかったのだと思います。
煮アナゴをほぐし身にするなら骨切りはしないほうがよさそう。
何でもかんでも「骨切りしとけばいい」ということでもないようです。

翌日、職場の電子レンジで温め直して食べたら骨は存在感を失っていました。
電子レンジは自宅にはなく、普段は必要性を感じない派です。
それも使いどころなのかな、と。

大分、取り扱いに慣れてきたと思っていたのに難しいですね。


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最後は香味蒸し、熱々ごま油がけ。

「ヨーグルト塩麹お酒圧力鍋蒸しクロアナゴ」に、醤油やお酢で作ったソースと刻んだネギ、生姜をどっさりかけて、熱々に熱したごま油をじゅわっとな。
あー、美味い。
美味いなぁ。

ごま油をかけるので油分は十分。
クロアナゴサンドも美味しかったのですが、こちらは全体的に柔らかい食感でより味に意識を集中できます。
ネギと生姜はシャキシャキ感も残っていて、アクセントにはちょうど良いです。
ソースにツメを使ったら旨味が増すかもしれません。

これが優勝です。

「ヨーグルト塩麹お酒圧力鍋蒸しクロアナゴ」をベースにいろいろ作るのはアリな気がします。
これを蒲焼きにしたら美味しそうです。

圧力鍋で蒸さない場合は、骨をどう処理するかがカギ。
いろいろ調べたら、皮目に切り込みを入れて1本ずつ骨を抜く方法もあるようなので、それもやってみたいですね。
このあたりは次回の課題。

しかし、「記事の中で『骨』という字を何回書いたんだ?」ってくらい「骨、骨」言ってますね。
下処理した切り身を職場のスタッフに配りましたが、骨は気にならなかったそうなので、感じ方に個人差があるのかもしれません。
確かに「食べられない」とか、口の中に刺さるほどの硬さはありません。
「あるな」というくらいなので、家庭で食べる分には問題ないのかもなぁ。

クロアナゴを美味しく食べるにはどうしたらいいんだろう?

寝ても覚めてもクロアナゴな数週間でした。

Uさん、また誘ってください!

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