「ブラックジャックによろしく」二次利用フリー化1年後報告 後編

「ブラックジャックによろしく」二次利用結果報告(2012.9/15〜2013.9/14)


1.二次利用件数

合計712件


2012年9月15日から2013年9月14日までの1年間の二次利用件数は712件。

一日平均約2件、月平均利用件数にすると約60件が利用されました。
2013年9月14日以降もこの数字が大きく変動することはなく、現在まで安定して利用されています。

今回の調査では月別の二次利用件数と媒体別利用件数をまとめました。
媒体別利用件数では、媒体をWeb媒体、紙媒体、映像媒体、その他の4つに別けました。
利用者は個人、一般企業を始め、出版社、電子書籍事業者など漫画と近い距離にある企業、医療業界、行政、政治家など、多肢に渡りました。
また、Web、映像、活字メディアにおける本件に関する報道件数や、個人、企業のブログやSNS上での言及の件数については、二次利用件数に含めていません。



2.月別二次利用件数

フリー化初月2012年9月は利用件数96件と多かったです。

これはフリー化が報道記事となって拡散され、話題に飛びついた個人の利用が多かったためであると考えています。
翌2012年10月〜2013年4月までは23件〜46件の幅で推移し、月平均利用件数34件。
2013年5月は205件と利用件数が大きく伸びていますが、これは電子出版大手取り次ぎが介入し、様々な電子書籍配信サイトに一気に利用が拡散したためです。
それを機にそれ以後、毎月平均利用件数は58.7件と底上げされ、さらに作品が拡散、定着した感があります。

しかしながら、Web上で「ブラックジャックによろしく」を利用することが新鮮だった時期は既に過ぎており、今後も利用数を維持して定番化することが目標と考えています。



3.媒体別利用件数

媒体別利用件数の内訳はWeb媒体が553件、紙媒体が132件、映像媒体6件、その他20件となります。
割合で示すと、Web媒体が77%、紙媒体が19%、映像媒体1%、その他3%。


(1)Web媒体での利用(553件)

Web媒体での利用は553件と最も多かったです。

Web媒体の利用が突出して多いのは、作品データをWeb上(漫画 on Web)で配布していたことによる親和性と、制作、流通コストの低さ、電子書籍配信サイトなどに利用しやすかったことが理由として挙げられます。
個人の利用者については、データをダウンロードしてそのままWebで利用できるということで、作業的にも心理的にもハードルも低かったと思われます。
企業の利用についても、紙媒体、映像媒体に比べると利用件数が多かったです。
作品をそのまま配信、販売する「電子書籍配信サイト」での利用が最も多く、次いで、企業HPでの宣伝目的、広告目的の利用が多くありました。

電子書籍配信サイトについて、ここでは「携帯、スマホ電子書籍配信サイト」と「PC電子書籍サイト」の2つに分類しています。
Webブラウザ閲覧用に作られた電子書籍サイトを「PC電子書籍サイト」と呼び、携帯、スマートフォンでの閲覧に特化した作り方しているサイト、または携帯、スマートフォンのみで閲覧できる電子書籍サイトは、「携帯、スマホ電子書籍配信サイト」と呼ぶこととします。
1つの運営者がPCサイトと携帯、スマホサイトを運営していた場合、それぞれ利用数はPCサイト1、携帯、スマホサイト1とし、合計2件の利用とカウントしました。

アプリによる作品利用は、「ブラックジャックによろしく」をメインコンテンツに据えたアプリは「ブックアプリ」に分類。
ビューアアプリなどで、電子書籍コンテンツの1つとして加えられている物については、「携帯、スマホ電子書籍配信サイト」に分類しました。


以下、個別に見ていきます。


■携帯、スマホ電子書籍配信サイト 223件


(例Lineマンガ、 bookLive、まんが王国、雑誌オンライン、Acti book、GooglePlay、コミックシーモア、Kinoppyなど)

日本の主要な携帯、スマホ電子書籍サイトのほぼすべてで配信が行なわれました。
取り次ぎ参入後はさらに多くのサイトで配信が開始されています。
今や「ブラックジャックによろしく」が配信されていない携帯、スマホ電子書籍サイトを見つけることは困難です。

■企業HP、SNS、バナー 164件

(例 BookLiveパロディ漫画、SoftBankモバイル「ホワイトジャックによろしく」、ダービーウィーク2013、ワークスタイル革新はシスコによろしく、MEGARYU 「メガトンジャックをよろしく」、キヤノン純正インクをよろしく、Adobe Creative Cloud総合サイト、秋田県自殺予防普及啓発サイト)、など)


「◯◯によろしく」「××をよろしく」といったタイトルで多種多様な大中小企業のHP、Web広告などに商用利用されました。
Adobe、SoftBank、キヤノン、シスコなど大手有名企業のWebサイトで利用された他、東京シティ競馬、名古屋けいば、ホッカイドウ競馬などが主催するダービーウィークのメインビジュアルに利用され、Webサイトを始め、ポスター、有名声優を起用してのTVCM展開までがされています。
中小企業の利用も多く、「既存コンテンツの利用はコストがかさむが、気軽にHPや広告に利用できて使いやすい」との声が聞かれました。

ニコニコ静画(ドワンゴ)にて「ブラよろ MADアワード」という一般ユーザーからパロディ漫画を募集するイベントが開催され、著者 佐藤秀峰が審査員として迎えられました。(180通程の応募があったが、1件としてカウント)
その他に、電子書籍サイトでプロの漫画家がパロディ漫画を創作し合本を作るなどの特集を組むなど、いくつかのイベントが行われています。(こちらもしりあがり寿氏、西原理恵子氏、カラスヤサトシ氏を始めプロの漫画家により15本程度の作品が出来上がっていますが、1件としてカウント)

音楽の分野ではプロミュージシャンの配信用アルバムジャケットに使用されています。
行政の自殺予防普及啓発サイトに利用。
参議院選挙時、政党のPRページや立候補者のHPなどでも利用されました。

TwitterやFacebookなどのSNSは、投稿が気軽なこともあり、しばしば作品が製品の宣伝に利用されました。
作品を配信している電子書籍サイトの宣伝バナーを除いて、企業バナー広告に利用された例も少数ながらありました。

金融庁に悪徳業者指定されている業者のサイトでイメージキャラクターとして使用された例と、HPにイラストを掲載し、「佐藤秀峰公認」を謳い営業活動を行なった団体が1件あったことは残念な出来事でした。
そのことから利用規約を本年9月15日に改訂し、違法サイトでの利用を禁止としました。

Adobe!

Soft Bankでも!

「ホワイトジャック」か…。

Canonも「よろしく」してます。

「よろしく」シリーズ多し。

ダービーでも。

アワードまで。

審査員を依頼され、築地でお寿司をごちそうになりました。

パロディ漫画祭りも!

MEGARYUのiTunesジャケットに。

行政の自殺防止キャンペーンにも使われました。

参議院選挙候補者のHPにも登場。


■Web電子書籍配信サイト 56件


(例 Kindle、iBooks、パブー、PIXV、ebook japan、Yahoo!ブックス、GARAPAGOS STORE、ニコニコ静画など)


個人が運営する電子書籍サイトから大手企業電子書籍サイトまで多くのサイトで作品が無料で配信されました。
主要なストアではほとんどの場所で配信されている印象です。
携帯、スマホサイトを含め、日本の電子書籍サイトで「ブラックジャックによろしく」は定番のコンテンツとなったと言えるでしょう。
海外(韓国、台湾)サイトでも配信がスタートしています。

ビューアのサンプルとして作品を利用する例も多く、「ビューアの性能を確かめたければ”ブラよろ”で確かめればよい」との意見までありました。
すべてのサイトでの閲覧数の合計はデータがありませんが、閲覧数を確認できる物だけを合計してもユニークユーザー数は100万人を超えている物と想像されます。

AmazonのKindleでは10名程の個人がそれぞれ「ブラックジャックによろしく」を独自に編集し有料販売したため、顧客に混乱が起こりました。
そのため運営者のAmazonより連絡が入り、混乱を避けるため個人のコンテンツをすべて削除し、Amazonが一括して無料で配信したいとの希望が出されました。
通常、Kindleではキャンペーンなどを除き継続的な無料販売は不可能ですが、このような経緯があり「ブラックジャックによろしく」は無期限で無料配信されることとなり、そのため常に無料ランキングの上位を独占しています。


Kindleでランキングを独占。


iBook Storeでも当然、配布。

日本発、電子書籍販売サイトの老舗「ebook japan」。


■個人HP、SNS 49件

(例 ブラックジャックによろしく版「コラーゲン食って肌がぷりぷりになるわけねぇーだろ」、いけたま!創刊号、ブラックジャックによろしくファンページ、シリコンバレーによろしく、など)

個人の利用はブログやSNSを中心に49件が行なわれています。
一部に作品を利用したブログ記事を電子書籍化し、Kindleで有料販売している例がありますが、基本的には非商用利用が多かったです。
企業のHP利用数164件と比較して少ないのは、気軽に利用できるとは言いながらも、やはり個人で画像を加工できる技術を持っているユーザーは限られていることや、個人レベルではネタ以外の作品の使い道が思いつかない、などが考えられます。

また、作品が一般読者向けで、いわゆる萌え作品やキャラ物に分類される作品ではないため、二次創作イラストを制作したり、コスプレや同人利用する意欲につながりにくく、非商用では使いにくいことも考えられると思っています。

しかしながら、Web上、SNS内を検索すると、「ブラックジャックによろしく」に関する言及は無数に存在します。
その多くは「フリーだったから読んだ」「電子書籍初体験!」「授業中に読んで泣いた」「電車で隣の席のサラリーマンがスマホでブラよろ読んでる」など、二次利用フリー化や作品の内容についての感想が多く、印象的には7~8割はフリー化で初めて作品に触れる読者でした。
フリー化から数ヶ月はそれらのコメント数をカウントしていましたが、5千を超えてさらに増える傾向にあったため、追跡は困難と考え中止しました。
これは二次利用フリー化以前にはなかった反響です。

二次利用に至る読者は少ないものの、相当数の新規読者を獲得できたようです。

本編より面白いと噂です。


■ブックアプリ 29件

(例 無料で全巻!ブラックジャックによろしく、マンガ全巻無料!ブラックジャックによろしく、フルカラー!ブラックジャックによろしく、ブラックジャックによろしく 全巻無料読み放題!、ブラックジャックによろしく全巻一気読み、など)

こちらは作品自体をメインコンテンツとして電子書籍化し、iOSやandroidなどスマホアプリとして単体で販売しているアプリ、あるいはオリジナルを下敷きとした二次創作作品をアプリ化した例を言います。
つまり「ブラックジャックによろしく」電子書籍アプリが販売者の違いによって29種類も販売されているということになります。

日本語版はもちろん、英語版やカラーのもの、全巻を4冊に分けたもの、13冊に分けたもの、続編を二次創作小説としてまとめたもの、特殊なビューアーで閲覧するものなど、様々なアプリが販売者ごとに出ました。

中でも、個人でアプリをリリースしている星川進氏が開発したiOSアプリ「「無料で全巻!ブラックジャックによろしく」は150
万ダウンロードを超え、Applle Store総合第1位を記録する大ヒットとなりました。
後に星川氏と連携し、アプリ内で続編の「新ブラックジャックによろしく」を販売した所、爆発的な売り上げを記録しました。
こちらは現在も月間数万ダウンロードを維持するロングセラー商品となっています。

App Storeを検索すると「ブラックジャックによろしく」がズラリ。
無料の中でもダウンロード数に差が出ることは興味深い結果でした。

App Store全ジャンルのアプリで総合1位を記録した「無料で全巻!ブラックジャックによろしく」。


■その他アプリ 21件

(例 「ブラックジャックによろしく」にヨロシク!、ブラックジャックによろしくカメラ、ブラックジャックによろしく名言camera、「ブラックジャックによろしく」投稿アプリ、など)

こちらでは電子書籍以外のアプリをまとめました。
ゲーム、カレンダー、カメラ、コメント投稿アプリなど、ジャンルは多肢に渡ります。
ブックアプリと比較すると開発コストがかかること、採算が取ることがそれなりに難しいことなどがあるのか、利用例は若干少なめです。

カメラアプリに…。

ゲームアプリ。

トレースアプリ…?

スタンプアプリも。

■ネット放送、動画投稿サイト 8件

(例 .アニコミ ブラックジャックによろしく スペシャル特番、ブラックジャックによろしく 第1巻 動画で読める!、BGM,SE付き ブラックジャックによろしく、漫画「ブラックジャックによろしく」ボイスコミック、NOTTV エンダン、など)

ネット番組、動画などでの利用は8件と少な目でした。
動画作成の手間がかかることと、作品がマンガであることから動画との親和性が低かったためと思われます。
その中では、ニコニコ生放送で行なわれた「アニコミ ブラックジャックによろしく 特別特番」は豪華声優陣が作品にアテレコをしていくという内容で、規模も大きく興味深かったです。
ネット放送「NOTTV エンダン」においても、二次利用フリー化を大きく取り上げ、実際に大喜利的なコーナーを行なうなどされました。

声優陣によるアテレコが行なわれました。

■その他 3件(Kindle本表紙など)



(2)紙媒体利用例(132件)

紙媒体での利用は、132件とWeb媒体での利用に次いで第2位でした。

そもそも「ブラックジャックによろしく」の初出が雑誌(週刊モーニング・講談社)であったため、紙媒体と相性が良いのでしょう。
しかしながら、紙媒体は商品の制作や流通にコストがかかるため、個人がローコストで気軽に発信できるWeb媒体と比較すると商品化のハードルが高いと思われます。
そのような事情を踏まえて、毎月平均10件以上となる合計132件の利用があったことは評価が出来る数字だと考えています。


■チラシ 58件

(例、パチンコ コンコルド相模大野店、医師国家試験予備校、ばんえい競馬、全国賃貸住宅新聞、電子書籍専用端末 BookLive!Reader Lideo、名古屋市自殺防止イベントなど)

チラシは紙媒体の中でも最もローコストで商品化でき、また作品内のセリフを入れ替え、レイアウトするだけで広告になりうるため、気軽に利用しやすく利用件数も多かったです。
パチンコ店、塾、予備校の広告利用が多かったです。
その他に競馬、車検、不動産、電子書籍端末の広告など、多様な業種で利用されました。
行政イベント(名古屋市自殺防止イベント)の広告利用も1件ありました。
中には作品の二次利用を気に入り、10回以上もシリーズでチラシ広告を制作している企業もあります。


パチンコ屋さんのチラシ。

新聞配達員募集!

保険は大事だよ!

塾のチラシ利用も多かったです。



■雑誌 24件

(例、EX大衆、週刊ダイヤモンド12月22日号、テレビブロス 1月19日号、獄同塾友会、DTP&印刷スーパーしくみ事典、中林製本所 、キクタン「医学部受験」、ファッションホテル「YOUグループ」、株式会社 マジカル 離煙パイプ広告など)

雑誌での利用は、主に雑誌記事内での利用と雑誌広告に別けられます。
その2つを比較すると、広告利用が多かったです。
先に述べたように広告は手軽で利用しやすいためと考えられます。

また、製本サンプルとしての利用や書籍の帯などへのイラスト利用など分類が難しい物も「雑誌」のカテゴリに入れました。
2013年の印刷DTP業界の展示会ではサンプルとして作品が利用される例が多く、「どのブースも”ブラよろ”だらけだった」との感想も聞かれました。
雑誌記事では漫画のフキダシ内のセリフを入れ替えてパロディ化した利用や大喜利的な利用が多く、広告はパチンコ店や禁煙パイプ、ホテルなどがありました。

ラブホテルでも大活躍!


■ポスター 22件

(例、パチンコ子どもの車内事故防止キャンペーン 、たいちじゅく、大分健生病院初期研修医募集、椿本チェイン「第2回つばき技能オリンピック」、参議院議員選挙特別号、自宅前タバコポイ捨て禁止ポスター)

商品広告や企業求人、イベント告知、選挙、啓発キャンペーンなどの利用がありました。
参議院選挙の投票啓発ポスターに利用されたことはインパクトが大きかったです。

パチンコ業界の車内事故防止啓発キャンペーンポスター。

参議院選挙の投票啓発ポスターに利用。

■パンフレット 21件

(例、大塚製薬 研修サポートツール、田辺三菱製薬グループ、BookLive!利用ガイド、宮城県柴田農林高等学校など)

製薬会社など医療系企業のパンフレットや、その他の一般企業の社内研修用パンフレット、商品の説明、学校案内などに使われました。

労働組合のパンフレット。


■書籍 3件

書籍化は3点。
ここでいう書籍とは作品自体をメインとした出版物を指し、作品の内容に改変を加えずそのまま出版した物、またはオリジナルを下敷きとした二次創作作品を出版した例を言います。
Web媒体と比較して商品の制作、流通にコストがかかることは紙媒体の特徴となりますが、その中でも書籍は郡を抜いてコストがかかります。
その書籍が海外を含め3点出版されたことは大きな成果でした。


廉価版「ブラックジャックによろしく」(全4巻)

双葉社から発売、初版15万部。


小説 「ブラックジャックによろしく DYSTPIA 3.11」

春日康徳 著 出版社 ティー・オーエンタテインメント
漫画作品の続編を完全二次創作で小説化した利用例。
カバーイラスト制作のご依頼をいただき、二次創作小説のカバーイラストを本物が描くという不思議な状況が生まれました。


3.原動力文化出版社(台湾)中国語版「ブラックジャックによろしく」
作品を中国語に翻訳し出版


■新聞 3件
(例、北海道新聞「一筆軽笑」新潟日報 紙面広告など)

新聞は二次利用に関する報道記事は除くと3件と少なかったです。
1コマ漫画や紙面広告での利用など。



(3)映像媒体での作品利用 6件

テレビなど映像メディアでの利用は6件と少なかったです。


■テレビ 4件

(例 パネルクイズ アタック25、行列のできる法律相談所、 パチンコ子どもの車内事故防止キャンペーンCM、

番組内の利用は、クイズ番組での利用が1件と情報バラエティ番組での利用が1件。
報道番組で作品の二次利用に関して取り上げたものは含めていません。
Webの反響と比較すると、テレビでは少々寂しい反応でした。
海外映像制作会社から映画化、ドラマ化の企画についての打診が複数あり、今後に期待しています。

■DVD 2件

(例 ブラックジャックによろしく-THE AV-、日本イーライリリー社内向けDVD)

AV化は本当に予想外の出来事でした。
しかし、「このような利用までもが自由である」という認識を広めたことは意義があったと思っています。

AV版「ブラックジャックによろしく」

って、マジかよ…。

この主人公が…。

マジかよ…。

この人が…。

こりゃ、なんでもアリだぜ…。



(4)その他 20件 

(例 MaaYu 漫画アニメからリアルマスク、ブラックジャックによろしく 純米酒 & 歓効酒、舞台「ブラックジャックによろしく」に、よろしく、幸野ソロ 第6ソロ 舞台「ブラックジャックによろしく」-ベビーER編-、高槻市議会議員北岡たかひろ、東京ゲームショウ配布クリアファイル、「いいね!投票いこう。」参議院議員選挙エコ箸、など)

演劇やのぼり、グッズなどどのカテゴリにも分類しにくいものをまとめました。
演劇は劇中の合間に行なわれるCM的な小演劇を含めて3件も行なわれました。
Tシャツやリアルマスク、日本酒などのグッズ、選挙活動や車検ののぼりが作られた。


お酒!

美味しかったです。

リアルマスク…。

怖い…。

国道沿いにはためくノボリ。

「いいね!投票いこう。」のキャッチフレーズと共に全国のコンビニで配布された割り箸は、参議院議員選挙投票啓発キャンペーンのグッズ。

どうも参議院選挙と相性がいいらしいです。

やたら利用されました。

東京ゲームショウで配られたクリアファイル。

舞台化もされました。

こちらも舞台。

以上が二次利用フリー化から1年間の利用状況となります。

フリー化によって何か楽しいことが起こるのではないかという期待はありましたが、想像以上の数、利用方法を目の当たりにして非常に驚きました。
出版の世界では死にコンテンツとして扱われ、フリー化を発表した時点では「そんなの成功する訳がない」と笑われた「ブラックジャックによろしく」という作品は、まだこれ程の可能性を持っていることが分かったのです。
当時、鼻で笑っていた人々は今は何と言っているでしょう?

「無名の作品ならこの成功はなかった。出版社のおかげで売れたのに、利益を作家が独り占めしている」




二次利用フリー化による経済効果

利用規約では「作品の利用に関して、商用・非商用の区別なく、事前の承諾を得ることなく無償で複製し公衆送信し、また、どのような翻案や二次利用(外国語版、パロディ、アニメ化、音声化、小説化、映画化、商品化など)を行うことも可能です」とありますので、フリー化による僕の直接の利益はありません。
もちろん新規読者の獲得できたことは大きな利益ですし、新規の仕事の依頼が大幅に増えましたので、そちらもフリー化の影響と言えるかも知れません。

また、漫画 on Webで無料ダウンロードできるWeb閲覧用の作品データとは別に、同サイトでより精緻なマスター製版データを¥15,750円で販売しており、こちらは1年間で68点購入があり、売り上げは¥1,071,000円となりました。
マスター製版データは、製版所に依頼して生原稿をデータ化したもので、実際に単行本を作る時に使うデータと同じ物になります。
こちらは双葉社より発売された廉価版「ブラックジャックによろしく」や各種大型ポスターの制作などに使われました。

経済的な効果としては、著作電子書籍の売り上げ増大が最も大きなものとして挙げられます。

これまでに述べたように「ブラックジャックによろしく」がフリー化されたことにより、あらゆる電子書籍配信サイト、ストアで作品が無料配布されました。
それらは軒並み各ストアのランキングトップを独占し、大きな閲覧数を稼ぎました。

(漫画 on Webより)


Kindle、iBook storeなど大型電子書籍ストアでもトップを独占し、ごく一部、閲覧数が分かっている物を合計しただけでも500万PV(1巻1PVでカウント)を超えています。
その結果、続編「新ブラックジャックによろしく」を始め、「海猿」など他の佐藤秀峰作品の販売を希望する連絡が各電子書籍事業者から殺到しました。
フリー化以後、弊社運営の電子書籍運サイト「漫画 on Web」での佐藤秀峰著作の売り上げが飛躍的に伸びており、すでに取引のあった他サイトでも同様の傾向が見られました。
そのため、それぞれのサイトは競合するものではなく、現時点では各サイトにそれぞれのユーザーが付いているものと考えました。
販売サイトを限定するのではなく、1サイトを1書店と考え販売を拡大する方針とし、各サイトとの新規取引を進めました。


契約にあたっては、出版社などは挟まず各事業者と直接契約としました。
出版社経由で契約を行なった場合、著者は一般的に販売価格の一律15%の金額を印税として受け取ることになりますが、直接契約すれば印税率は20%~100%に上昇することも分かりました。
平均印税率は45%でした。
また、印税率一律30%(独占配信の場合70%)を謳っている事業者であっても、交渉の結果、非独占で50数%で契約できた例もあり、業界の建前と実情を知ることが出来ました。

こうして各電子書籍ストアで販売を開始した結果、佐藤秀峰作品の売り上げは飛躍的に伸びました。
現在、「ブラックジャックによろしく」意外の佐藤秀峰作品が販売されている電子書籍ストアは下記の通りです。



佐藤秀峰電子書籍販売配信ストア一覧(38書店)

漫画onweb         ebookjapan       雑誌オンライン 
DLマーケット      booklice         SONYリーダーストア
KDDIブックパス    Amazon Kindle     iBook Store 
漫画全巻ドットコム   Yahoo!ブックストア    ガラパゴスシャープストア
Renta!         めちゃコミ        めちゃコミforスマートフォン
めちゃコミimode      めちゃコミEZweb     Tapnowブックストア
LINEマンガ        ケータイまんが王国     menueコミック
スマcomi!        Bookdays        サクサクマンガ☆びゅ〜も
Handyコミック      コミックビーチimode   iコミックランドEZweb 
漫画人imode       コミック☆まんが学園   HAPPY!コミック
まんが堂         androbook       ギャルコミ 
コミコミコミック     コミックマニア      レオパレスfor Booky
コンテン堂        Comic Room



各電子書籍書店での1年間の販売総額は¥153,980,718円でした。

2013年1月に売り上げが大きく伸びておりますが、これは150万ダウンロード越えを達成したiOSアプリ「無料で全巻!ブラックジャックによろしく」の制作者・星川進氏と契約し、同アプリ内で「新ブラックジャックによろしく」の販売を開始したためです。

販売の開始はアプリをダウンロードした150万人に通知され、非常に良い効果をもたらしました。
グラフでは今年9月までの結果をまとめていますが、その後も安定して1000万円ラインを保っています。


各電子書籍書店での販売総額は¥153,980,718円の内、弊社(佐藤漫画制作所)がロイヤリティとして受け取った金額は¥70,284,324円。

毎月平均585万7027円のロイヤリティを受け取ったこととなります。

前年までは月平均が100万円を超えることがなく、その一線を超えることが目標であったことを考えると売り上げは約6倍に伸びたことになります。


以上が二次利用フリー化による経済効果のご報告となります。

業界を挙げての自炊代行業者いじめに始まり、出版社による著作隣接権の主張、出版権拡張議論まで、これまで出版、漫画業界は自炊代行問題を海賊版問題にすり替え、それを建前に電子書籍の利権争いを続けてきました。
そこには読者の利便性を考えた議論はなく、そのことに反発を感じながら「ブラックジャックによろしく」の二次利用フリー化を進めてきました。
一度、コンテンツとして力を失っていた「ブラックジャックによろしく」は、フリー化によって再び力を取り戻し、多くの楽しい利用例を生み出しました。
その経済効果は商業レベルで見ればまだまだオマケ程度のものかもしれませんが、僕の個人的な作家レベルで考えれば、経営に追われることなく作品制作に没頭できるようになりました。

1年間を振り返って、「ブラックジャックによろしく」二次利用フリー化という実験は、一定の成果が出せたと思っています。
今後は別の作者、別の作品でも成功例を出していきたいです。

蓄積したノウハウを利用し、すでに次の段階へ向けて動き出しています。

(2013年の記事の再録です)

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