カクイシさんに反論をいただきました

昨日、公開した記事に対し、記事中で文章を取り上げたカクイシシュンスケさんから反論をいただきました。当該記事は下記。

「三田紀房先生に残業代を請求したことについて」というブログを読んで感じたこと


カクイシさんの反論。

「印税が欲しいのであれば、役員となって経営に参加するしかないでしょう」??マンガ家がアシスタントに印税を支払う義務がないなんてことは百も承知で書いてんですよ!印税まで取れるなんて思ってませんよ!でも納得はできないから書いたんですよ!

印税ほしいなら交渉するしかないって、そんな交渉しっかりできるアシスタントがどこにいますか!?マンガ家とアシスタントの間には大きな立場の差があることくらいわかってるでしょう!マンガ家として独立してこそって価値観でアシスタントから自信奪っておいて、交渉すればいいって??

できることからやるしかないから法律に則って残業代請求したんでしょうが!「どうしたらいいんでしょうね?」??お願いしますよ、先輩…。マンガ家も今後はアシスタントに対して労働基準法に則って働いてもらわなければいけない、くらいのこと力強く言えませんかね…。

「こんな業界一回滅べばいいんだろうな、と思います。」には同意ですよ。まだやれるだけのことはやりますけどね。

そろいもそろってマンガ家ども…。

なんなわけ、このマンガ家側の冷静に俯瞰してみました感は…。感情あるのかよ。

カクイシさんと対立するつもりはありませんでしたが、僕の言葉足らずでした。
カクイシさんは三田さんのインタビューに事実と異なる部分があるとして怒っていらっしゃった訳ですから、僕が「雇う側の気持ちも雇われる側の気持ちもわかる」と言ったところで、お気持ちを逆撫でするだけでした。深くお詫び申し上げます。

印税云々のくだりは、「いくら不満があってもそれは言わない方が良いのでは?」と思いました。カクイシさんが強く主張するばするほど、自分の首を絞めることにならないでしょうか?カクイシさんはこれから漫画家として生活していく人です。今後、カクイシさんが単行本を出版した際には自発的にスタッフに印税を分配しなければ道理が通らなくなります。分配しないと「あの人、自分がアシスタントの時はインセンティブよこせって言ってたクセに、自分が作家になったらアシスタントに1円もよこさないんだぜ」って言われてしまいますもんね。それを心配しました。すでに説明したように、僕は印税はスタッフに分配する必要はないと考える立場です。儲かるときばかりでもありませんから資金をプールすることも重要です。

「お願いしますよ、先輩…。マンガ家も今後はアシスタントに対して労働基準法に則って働いてもらわなければいけない、くらいのこと力強く言えませんかね…。」という部分について、仮にカクイシさんに対して、僕がご要望通り「今後はあなたも労働基準法に則ってスタッフを雇用しましょうね」と言ったとします。どうなるでしょうか?カクイシさんも漫画家です。また逆撫でしてしまうかもしれませんが書いてみます。

カクイシさんの現在の雇用条件は、ご本人のコメントによると下記の内容だそうです。

「私は現在、普段は他の職場で働いてるベテランのアシスタントの人に(その職場が休みの日に)来てもらっていて、条件は日給2万円(源泉差し引くと19558円)、交通費別途支給、10時~18時まで(休憩1時間)、残業一切なしというものです。」

家賃を抑えめにして4万5千円の2Kの物件を、アシスタントが多く住む地域の沿線で借りました。通いやすいよう駅から徒歩10分以内で。机を二つ置くと狭いのでアシスタントの人が来る日だけ折りたたみテーブルを出して私は描きます。アシスタントの人に机で描いてもらいます。

カクイシさん、まず法に従って雇用するというのであれば、雇用契約書は締結していますか?作業場所を指定して現場で業務を指揮監督するということは、雇用に他なりません。あなたの職場にいる人は労働者です。委託や請負ではありません。労働基準法が適用されます。他に本業がある人に1日単位で仕事を依頼していると言っても、エクスキューズになりません。
もしも、カクイシさんが個人事業主の場合、従業員を雇用するのであれば「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に届け出なければなりません。届出は提出しましたか?雇用するのであればスタッフの健康保険、厚生年金、雇用保険は支払っていますか?労働者は個人や会社の都合で正当な理由なく一方的に解雇することができません。「打ち切りなったから解散するわ」は正当な理由になりませんよ。突然の打ち切りでスタッフを路頭に迷わせることがあってはいけません。少なくとも打ち切りを回避するための努力をした形跡がなければいけません。法に則った安定した雇用を実現するためには、十分な資金と仕事の確保とが必要です。出版社との間に「契約期間 =連載期間」を定めた連載執筆契約は結びましたか?原稿料や印税などの交渉を具体的に行いましたか?出版契約は結びましたか?著作物二次使用管理委託契約は結びましたか?電子出版権は?まさか口約束で済ませていませんよね?新人漫画家が出版社と交渉できるわけがないじゃないか?それで労働者を守れなければ、あなたは他の漫画家と何が違うんですか?

「マンガ家も今後はアシスタントに対して労働基準法に則って働いてもらわなければいけない、くらいのこと力強く言えませんかね…。」を力強くいうと、上記のようなことを言わなければいけません。僕自身はすべて実行しています。が、新人漫画家にそこまで厳密に求めるのは酷だと思っています。(本当はやらなければいけないんだけど)だから普段は言いません。
自分が雇われている側だったときに感じていた疑問や不満を解消すべく、自分が雇う側になった時に理想を実践することはとても大事です。だけど、高すぎる理想は後々に自分を苦しめることにもなります。「じゃあ、お前はどうなんだよ?」ということを常に問われることになるからです。漫画村の件で騒いでいる漫画家もこの件ではみんなだんまりです。みんな後ろ暗いところがあるからでしょう。残念ながらその程度なんだと思います。漫画家は。

漫画業界は改革しなければいけない部分を多く持っています。
が、正論を言ったところで、即時改革が実行されることはありません。できるところから少しずつ手をつけていくことしかできないのではないでしょうか?僕は自分にできることは実行するけど、それが正論であっても他者にまでは強制しないという立場です。悔しいですが。

カクイシさんは今後、引くに引けなくなって自分を苦しめてしまわないでしょうか?
そんなことを心配しています。


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佐藤秀峰

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コメント2件

本気で与党になるつもりのない野党の正義
これからは、漫画家も経営者としての知識が必要なんですね。憧れや夢を追って入ってくる10代、20代の漫画家の予備軍に、現役の世代が経営者としての知識をバトンタッチできるような業界になるといいのですが。佐藤さんのような方が、どんどん出てきて、少しずつでも業界が変わることを願っています。佐藤さん、がんばってください。
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