電子書籍はなぜ儲からないのか?

佐藤漫画製作所では電子書籍のストア販売をお取次する「電書バト」というサービスを展開しております。「電書バト」では、プロアマ問わず、簡単なクオリティチェックを通過すれば、どなたでもご自分の作品を国内主要電子書籍ストア約50カ所で販売することができます。

実は先日、「電書バト」の2月期の売り上げランキングを発表させていただきました。そちらが大きな話題となり、現在、「電書バト」へのお問い合わせが殺到しております。

電書バトNEWS


僕は佐藤漫画製作所の代表を務めておりまして、当然のことですが、このサービスを大きくしていきたいという考えがあります。ですので、これから僕が書くことはそれを差し引いた上でお読みください。

2010年、iPadが発売され電子書籍元年という言葉が使われ始めました。それから6年、電子書籍は在庫リスクがなく、流通の経費もかからないため、作家に多くのロイヤリティが配分されると言われてきました。少なくとも紙書籍よりは高い配分率であると思われてきましたが、フタを開けてみると作家からは「電子書籍は紙よりも儲からない」という声ばかり聞こえてきます。市場がまだ小さいということはあるものの、理由はそれだけではないような気がします。

「電書バト」へお問い合わせをいただく中で、「サービスを利用したいけど、出版社経由じゃない所で電子書籍化しても大丈夫でしょうか?」というご質問をよくいただきます。その場合、出版社との契約状況を確認させていただき、電子書籍化に問題がなければ手続きを進めるということをしますが、出版社が権利を押さえているケースもよくあります。

それ自体は作家と出版社が合意の上で行なっていることであれば何の問題もありません。ただ、「出版社経由じゃない所で電子書籍化しても大丈夫でしょうか?」と作家ご本人からご質問をいただくくらいですので、作家が契約内容をよく分かっていないケースが非常に多く見られます。作品の単行本化の際に、編集者から「これ出版契約書だから次に会うときまでハンコ押しといてね」と言われれば、「ハンコを押さなきゃ単行本が出ないんだな」と押してしまう作家がいかに多いことか…。そして、その契約書の中には大抵、電子書籍に関する取り決めが含まれています。または、別途「著作物利用許諾契約」という契約を結び、電子書籍化や映像化、商品化などの利用案件ごとに条件を取り決めている場合もあるようです。

実はここに作家が儲からない仕掛けが隠されています。下記は某大手出版社のスタンダードな「電子書籍」著作権使用料の計算式です。

著作権使用料={販売総額-(キャリア及び業務委託手数料)}×25%

解説しますと、「電子書籍の販売総額からキャリア(ストア)と出版社の手数料を差し引き、残ったお金の25%が作家に配分される」ということになります。なんだか分かったような分からないような…?「で、結局作家はいくらもらえるんだよ?」と言いますと、仮に電子書籍Aというタイトルを1冊500円でストア販売した場合、1冊売れると販売総額は500円です。ストアの手数料はその規模や売り上げによって大きく違いますが、Appleであれば30%がAppleの手数料として天引きされます。Kindleなら65%(※KDP 35%ロイヤリティオプションを使った場合)が天引きされます。75%のストアもあれば、交渉次第では50%にしてくれるストアもあります。出版社が「ストアへデータ納品を代行してくれる『電子書籍取次』」を使っている場合もあるので、その場合は取次への手数料もかかります。これらを総合した上で僕の実感を言うと、平均65%がストア (+取次)に天引きされます。なのでここではストアの手数料は65%としましょう。

500円からストアの手数料65%=325円を差し引くと残りは175円。そこからさらに出版社の業務委託手数料を差し引きます。出版社の業務委託手数料は契約書に明記されることはほとんどなく、実はブラックボックス(!)になっています。仮に50円だとすると、175円から50円を差し引いて、残り125円。その25%が作家の取り分ということになりますので、31円が作家の口座に振り込まれます。

グラフにするとこちら。

実質的な作家のロイヤリティは販売額の6%になります。

紙書籍の場合、これまで印税率は「本体価格×発行部数×10%」が一般的(最近は10%以下というケースもよく耳にしますが)とされてきましたので、それよりも低い数字です。何とも夢のない話ですが、悲しむべき事実はそれだけではありません。

キャリア(ストア)の手数料はAppleであれば30%、Kindleであれば65%と(高いけれども)固定されており明確ですが、出版社の手数料は内訳が作家に知らされていない場合が多く、先ほども書いた通りブラックボックスです。悪い受け止め方をしてしまうと、手数料を高めに設定してしまえば、作家の受け取るロイヤリティは5%よりさらに低くなる可能性もあります。
先ほどは出版社の業務委託手数料を50円として計算しましたが、それを倍の100円にしてみましょう。

作家のロイヤリティは販売金額の4%になってしまいました。

さらに表の中に「出版社ロイヤリティ(?)」と書かれた項目がありますが、(?)と書いている通り、この項目に該当するお金が何なのかハッキリしません。出版社は業務委託手数料という名目ですでに「経費+利益を乗せたお金」を受け取っていますので、実売総額からストアと自分たちの取り分を差し引いた後に、残ったお金をさらに作家と分配していることになります。

出版社は著作権者ではなく、著作権者から著作権の管理を委託されている立場ですので、発生した著作権収入から業務委託手数料を差し引く所までは理解ができます。しかし、さらに残りを分配するとなると、その根拠に乏しいというか、手数料の2重取りになってしまうのではないかという気がしますね。さらにもう1つ言うと、実売ベースで計算しますので、セールなどで定価の半額で販売された場合などには、作家は値下げ分を補填されません。さらに…。

作家は出版社から「ロイヤリティ25%」と説明され、「紙は10%だから25%は結構良いな」と思ってしまいがちですが、実は損をしているというお話でした。

ちなみに「電書バト」の作家ロイヤリティは下記の通り。

販売総額からキャリアの手数料を差し引き、残ったお金の内15%を佐藤漫画製作所が手数料としていただき、85%を作家にお渡ししております。これまでの実績で言うと、販売総額の約30% を作家にお渡しできています。

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佐藤秀峰

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コメント4件

漫画界 電子書籍の父 佐藤秀峰 (母は赤松健)
KDPは多くの人が70%のロイヤリティオプションを選ぶと思っていた(日本語で書かれた書籍やマンガの場合)のですが、35%の方をメインとしているのは何故でしょうか? 70%の方にはなにか落とし穴があるのですか?
70だと確かkindleのみの独占配信になるのではなかったでしょうか?
そうですね。70%だとKindleでの独占配信でなければなりません。これを解除するにも90日のブランクが必要です。
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