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ワールドカップを追いかけて(2日目)

九州の夏は終わらない。
蒸し暑く、太陽がギラついたかと思えば時折台風由来のスコールが降る。

この気候に合わせたかのように(冬でも同じか笑)、半袖短パンのちょっと腹の出たツーリストが別府の街に溢れていた。

いろいろな色のユニフォーム同士が揃って足湯に浸り、砂風呂に埋まって海を眺め、血の池地獄の硫黄の煙にまかれながらも、懸命にシャッターを切るその姿は、ここは日本なのか天国なのか地獄なのか、まったくわからない。
紛れもなくこれがワールドカップ。日本の冠たる大温泉リゾート別府なのだ。
オールブラックスが別府でキャンプをしたためか、異様にツーリストが溢れ、街中が黒い服で覆われた。そんな黒いっぱいギュウギュウのJR九州の2両編成で大分へ。そこからシャトルバスで昭和電工ドームに向かった。

ニュージーランドvsカナダ

https://instagram.com/p/B3IYgr6BEWH/
↑背後から見るハカもとても凛として勇ましかった。

人で膨れ上がったドームは、戦前の予想通りの圧倒的な内容に判官贔屓気質な客席はカナダを応援し始めた。コールアンドレスポンスしか欲しくない酔っ払った当事国以外の人間たちもデカい声を上げる。

後半ラスト10分、スタジアムの帰りのバス事情を考慮してか日本人のファミリーたちが席を立ち始めた。
そんな中、さっきまで熱心にカナダを応援していた前方のカップルも席を立った。
もしかしたら、同じくバス事情もしくは早く帰る事情があったのかもしれない。

横のブラックスのユニフォームを着ていた丸い陽気なお爺さんは、敵味方関係なく絡んでいたが、その時、階段で横を通り過ぎる彼らには声をかけなかった。

わかるんだろうな。彼らの悔しさが。
自分の国が負ける悔しさが。
オールブラックスだっていつも勝つわけじゃない、苦杯を舐めた経験もある。

ただ盛り上がりたいというワールドカップの楽しみ方もあるだろう。しかし、選手は生まれた国、暮らした国、祖先の国、色々な形で国を背負っている。
そして、その代表を応援する国民も同じように誇りを背負って飛行機に乗るのだ。

2006年サッカーワールドカップをドイツに観戦に行った時、グループリーグ敗退が決まり、文字通り肩を落としてスタジアムから去るチームを何チームか見た。肩を抱かれ泣きながらスタジアムを去る彼らを見て正直敗者の気持ちというのは少しは理解していると思っていた。しかし、最終戦の相手はブラジル。完膚なきまで叩きのめされ、ボクもその瞬間を経験した。カナダと同じように敗戦が予想されていたが、想像以上に自分の国が負ける悔しさは、耐えきれないほど辛かった。
今日はその瞬間をはっきりと思い出した。

昨日ワールドカップは友好のお祭りだと言った。その祭の根底にあるのは、国と国との威信をかけた真剣勝負があるからだ。

それを忘れてはいけないと思う。


つたない文章を最後まで読んでいただきありがとうございました。 もっと上手に書けるよう精進します。