見出し画像

幼児番組


 学生時代、名古屋製作の幼児番組に出演していました。出演といいましても、ぬいぐるみに入る仕事でしたので、私の顔が映ることはありませんでした。
 その映像会社は幼児番組を作るは初めてで、いろいろ手探りで作っていました。その手探りに撮影の初日から参加できたのは貴重な体験でした。
 ある日、家でくつろいでいるとき、何気なくつけたテレビの、幼児番組にくぎ付けになりました。東京制作の長寿番組です。
あまりのレベルの高さに驚いたのです。洗練されたセンスと経験のあるスタッフと魅力ある出演者。息がぴったり合っていて、私の参加している作品とは格が違います。私たちだってがんばっています。しかし、やすやすと追いつけるレベルではないのです。それを思い知らされました。
突然、台所にいた母が叫びました。
「何をそんな番組に夢中になっているの! もう大学生でしょう!」
 母には幼児番組に出演していることを言っていませんでした。大学生の息子が幼児番組を目の色を変えて見ていたら、心配になりますね。
 日ごろ何気なく見ているテレビですが、どれも大変な作品ばかりです。
 どんなものでもそうですが、一度作り手の側に立ってみると、それまで見えていた景色と違うものが見えてきますね。
イラスト by R-DESIGN

English


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?