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小6の時に作った福岡市全住所が登場する巨大すごろく「福岡市大すごろく」

はじめまして。ツムラクリエイションの津村修二です。

私はオリジナルのボードゲームを考案し、制作するボードゲームクリエイターとして活動しています。その制作に対するこだわりや美意識の高さからボードゲームアーティストと呼ばれることもありますが、ちょっと聞き慣れない、この肩書きが私の肩書きです。

ここで簡単に自己紹介。私は1983年福岡県福岡市生まれ、福岡育ちです。幼い頃から絵を描いたり、遊びを考えたりするのが好きな子どもでした。小学6年生の時に「福岡市大すごろく」を制作。その後、お笑い芸人、ミュージシャンと目指す夢を変えながら、2011年にツムラクリエイションとしてオリジナルボードゲーム「Amen-アメン-」を商品化。ほかにも各種ゲーム会やアート展などを企画・開催し、ボードゲームの楽しさやデザインとしての美しさをより多くの人に伝える活動も行なっています。現在、天神イムズ6階の玩具店「つみきや」のスタッフとしても勤務中。


前置きが長くなりましたが、今回は「福岡市大すごろく」を紹介したいと思います。


●「福岡市大すごろく」(1995年7月~1996年3月制作)

私が小学6年生の時に9か月かけて作ったすごろくが「福岡市大すごろく」。画用紙17枚を繋ぎ合わせた、約900のマスがある巨大なすごろく(縦135cm×横132cm)です。福岡県福岡市の全住所を載せ、道路は一般道や高速道路を忠実に再現。フェリーに乗って志賀島や能古島へも行けます。作成にあたっては市販の地図を見ながら描いていきました。

ゲーム内容は、目的地(ゴール)を毎回サイコロによってランダムに決め、一番に着いたプレイヤーに賞金が与えられます。誰かが目的地に着いたら、またサイコロで次の目的地を決めます。これを繰り返しながら、ゲームを進め、所持金を増やして一番お金持ちになったプレイヤーの勝ちです。


●「福岡市大すごろく」の制作について書かれた日記
当時の日記帳に「福岡市大すごろく」の完成とその制作について書いた日記があります。
日付けは1996年3月4日。それはちょうどその日記帳の最後のページにありました。

正式名称が「福岡市サスペンスすごろく」で、95年7月からその構想を練っていたようです。7月が構想、8月が住所調べと住所書き、9月がカードの印刷、10月が住所書き完成、線の色書き、11月が画用紙のつなぎ、12月・1月がほとんどできず(中学受験のために勉強していたのだと思います)、2月が全体的なアイデア構想とマップの絵描き、3月が土地カード切り、丁寧な仕上げとあります。完成は3月4日。

「難しくもなく容易でもないちょうどいいものを作ったつもり。いろんな工夫、それを思うと努力したなと思いました。涙が出てきそうにうれしい」と締めくくっています。
担任の先生からは「感動の福岡市サスペンスすごろく。一回学校に持って来れるものなら持ってきてね」と赤色のペンでコメントが付けられています。結局、学校には一度も持っていけなかったです。


●「福岡市大すごろく」を作るようになったきっかけ
よく「夏休みの工作で作られたんですか?」と聞かれますが、動機は「ただ作りたかったから」というだけでした。当時、私は自転車で「旅」と名付けたサイクリングに出掛けていました。あの道の向こう側にはどんな景色が広がっているんだろうという好奇心から始まる冒険の旅です。そのため地図も大好きでした。地図は色々な想像を広げてくれる絶好の遊び道具でした。そのうち「福岡市の地図で冒険するように遊べたら・・・」と思うようになり、このすごろくを作り始めるようになりました。
もともと、ノートや画用紙に自分で作ったゲームを使って近所の友達とよく遊んでいたこともあって、ゲームを作るということは私にとって自然なことでした。「次はあんなゲームを作ってみたい」「今度はどんなゲームを作って友達に楽しんでもらおうか」と、そんなことばかり考えてはニヤニヤとしていました。そうして作ったゲームを友達と遊んでみて、そこで得た反応や声をもとに改良を加えていく、そんなこともしていました。
なかでもゲーム盤の上に乗って遊ぶという大きさの常識を超えたこの「福岡市大すごろく」は、私のゲームをずっと遊んできた近所の友達からは驚かれ、「すごい!でも、ものには限度があるやろ」と笑われたものでした。


●復刻作業&新ルールとカード作り
2013年、私は福岡市立青年センター(現在閉館)で毎月開催されていたアートイベント「くうきプロジェクト」の中で「津村修二のアナログゲームとおもちゃの広場」と題し、イベントを主催していました。その際、「福岡市大すごろく」も様々な方に見てもらったのですが、「これ、遊べないんですか?」という声が多く挙がりました。
私自身、大まかなルールは覚えていましたが、細かいマスのルールなどはさすがに忘れてしまっており、必要なコマやカード類も無く、遊べる状態ではありませんでした。そこで「福岡市大すごろく」の復刻を決意。同年、7月20日に18年の歳月を超えて、2013年度版が完成。ルールの整理・追加、コマ・カード類の作成に加え、薄くなった全ての文字やイラストを上から鉛筆で濃く塗るという復元作業も同時に行ないました。


●福岡市博物館にて常設展示
2014年7月より福岡市博物館1階みたいけんラボにて「福岡市大すごろく」(原本をスキャンしたパネル)の常設展示が始まりました。学芸員の方に1995年当時の福岡市とその近郊の様子がよく分かるという意味で資料的価値がある点と、子どもたちに良い影響(「自分もすごろくを作りたい!」など)を与えられるという点を評価してもらいました。
福岡市博物館に自分が小学6年生の時に作ったものを置いてもらえるなんて想像もしませんでした。福岡市民の一人として、大変光栄なことです。


●2019年の今思うこと
一昨年あたりからありがたいことに新聞、テレビなど多数のメディアで「福岡市大すごろく」のことを取り上げていただいています。「好き」や「楽しい」という気持ちから始まったゲーム作りですが、こうして自分の作ったゲームが注目されることは本当に幸せなことです。
先に挙げた日記帳にはゲーム作りについて書かれたものもあります。そこには「ゲーム作りは僕の生きがい(友達がおもしろいと言ってくれたら最高)です。とってもおもしろい。これからも続けていく」とありました。それを読んで、私はやっぱりその頃から根本は変わっていないのだ、と思いました。ゲームを作るのが好きで、そのゲームを友達が楽しんでくれることが喜び。その気持ちは今でも変わらないです。
今後も「好き」「楽しい」という純粋な気持ちを大切にしてゲーム作りを続けていけたらと思います。



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