最近の娘はとにかくプリキュアにハマっている。正確にいうと、娘がハマったのは前作のキラキラプリキュアアラモードからである。自分はそれまでプリキュアなんて全く興味がなかったけれど、娘がハマった作品なのだから、俺も勉強しよう、という気になった。

俺はテレビドラマなどでも初回から観ないとハマれない、途中から入っていけないタイプで、そもそも人の名前を覚えるのが苦手なので、本当にこれは”勉強”という感覚だった。恥ずかしい話だが、自力で名前を覚えられたのは主人公の「いちかちゃん」だけである。なのでプリキュアのことはだいたい娘から教わった。

「えーと、この人はゆかりちゃんだっけ…」「ゆかり”さん”だよぉッ！」

娘のプリキュアに対する愛は本物だ。去年のクリスマスにプリキュアの変身コンパクトをあげたのだけど、よっぽど嬉しかったのか、5時間ぐらいずっとぶっ続けでコンパクトをレッツラマゼマゼしていた。すっかり日が暮れ薄暗くなった部屋で、コンパクトのあかりにぼんやり照らされる娘の真剣な顔。そのとき、俺は本当に娘がプリキュアに変身してしまうんじゃないかと思ったぐらい、娘はプリキュアの世界に没頭していた。

ある日、娘がおもちゃ屋でもらったプリキュアのカタログを熱心に見ていたので、俺は何の気なく「いちかちゃんはどこ？」と聞いてみた。娘から返ってきた答えはこうだった。「いちかちゃんはいないの。おわかれだから…」

そうなのだ。娘が愛したキラキラプリキュアアラモードは1月末で終わってしまい、2月から新しいシリーズ・HUGっとプリキュアが始まるのだ。カタログにも新シリーズのものしか載っていない。あれだけ娘が愛したプリキュアなのに、いちかちゃんともう会えないのは悲しいのでは…と思ったが、娘は娘なりに、「別れ」というものを理解し受け入れているようだった。

「えいがでしかあえないの」と娘は言った。

「わかった。一緒に映画を観に行こうね」と約束した。