舞台「千と千尋の神隠し」を配信で観た。

「千と千尋の神隠し」
最も有名なジブリ作品であり、
私が最も好きなジブリ作品です。

それが舞台化すると知って驚かなかったファンはいないのではないでしょうか。

予想通り、チケットはかなりの争奪戦。即完に次ぐ即完で、私の手元にはチケットは1枚も回ってきませんでした。そんな時に目に入った「配信する」というアナウンス。

私が観たかったのは「橋本環奈/千尋 × 夏木マリ/湯婆婆」でした。配信されるのもまさにその組み合わせということで願ってもない機会。

千と千尋プロモーションチームには感謝しかありません。

配信チケットは5,500円。
コロナ禍でさまざまな配信を観てきましたが、それらと比較しても決して安くはない金額。一瞬ためらいましたが、またとない配信だろうと思ったのと、ロンドン公演も決まったタイミングで、エンタメ好きとして投資する価値のあるコンテンツだろうと思えました。
そして、それは視聴して、より強い確信に変わりました。

心から、本当に観てよかったと思いました。
元の映画に対して余計な解釈を加えることも編集することもなく、純粋に「千と千尋の神隠し」のことを好きな人たちが、観客をワクワクさせるためにつくった舞台なのだということが伝わってきて。
偉そうに言えば、安心したというのが率直な感想です。

舞台に挑むのが初めてだという橋本環奈さん。千尋の一生懸命さと重なって見え、千尋すぎない千尋というか、千尋という一人の少女の人間性が橋本環奈さんを介して表れていて良かったなと思います。アニメーションでは他のキャラクターが映され千尋が描かれていなかったカットでの千尋の表情や仕草を見ることができたのも嬉しかったです。

そして映画で湯婆婆を演じた夏木マリさんの存在感は舞台上でも健在で、「あれは敵に回しちゃいかん」と納得させられる恐ろしさ・女王の風格がありました。銭婆との演じ分けも秀逸でした。湯婆婆と銭婆はほとんど同じ衣装(に見えた)であるのに、立っているのがどちらの婆なのか、佇まいだけで判るほど。

「この制作チーム、千と千尋の神隠しのこと好きなんだろうなあ」と思ったのは、隅々まで演出の工夫がされていて細やかで丁寧すぎたからです。プロなので当たり前だと言われてしまうかもしれないのですが、ステージのすべてが真剣だと思いました。まさに「手作り」という言葉がふさわしいと思います。まるで魔法のようでしたが、魔法では作れない。
特に、アニメーションかと思うほどに目まぐるしく転換されるセット、そして様々な使われ方ができ色々な表情を持つ舞台装置に驚かされます。なかでも、腐れ神のシーンでの会場・ステージを広く華やかに使った演出が印象的でした。
配信だと、豊かなカメラワークのお陰で上下左右様々な角度から舞台を見ることができ、黒子(後見人)がいかに丁寧に動いているかよく分かって驚いたし感心しました。

そして、音楽もとても素敵でした。私は映画やドラマを観るときに音楽の効果についてよく考えるのですが、(私の思い違いでしたらすみませんが)「千と千尋の神隠し」からそのまま引用している部分もあれば、そうでなく舞台に合わせてつくっている部分もあったと見受けていて、複雑に緻密に構成されていてかっこいいなあと感じました。

このように感想を残させていただきましたが、
さらにんにたくさんの人に観て欲しいというのが今の私の願いです。
ロンドン公演をするということではありますが、日本のエンターテイメントとして輸出していくべき作品だと確信しています。
どうか、大成功しますように。

「魔法でつくったんじゃ、何にもならないからね」を体現した舞台でした。


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