見出し画像

カスタマーサクセスは営業職であるという持論の根拠

久しぶりのnoteです。
#SaaSLovers 秋のブログ祭りのバトンが回ってきました。

SaaSのトピックということで、カスタマーサクセスについて大事だと思えるポイントを書いてみます。

SaaSといえばカスタマーサクセス、カスタマーサクセスといえばSaaSというように、すっかり市民権を得た職種になっています。Linkedinを見るとカスタマーサクセス職の募集をしている企業が多く、経験者は現代において市場価値の高い職種の一つと言えるのではないでしょうか。

一方で、組織としてカスタマーサクセスを置いてあるにもかかわらず従前のカスタマーサポートをしている企業も多いのでは無いでしょうか。「カスタマー」と「サクセス」という耳障りの良い言葉を使いつつも、本質的にその意味や目的を定義していない企業が多いのでは?と思ったのと、noteを検索してもカスタマーサクセスについて買い手ある記事が少なかったので、持論100%、権威者の引用ゼロでいっちょ書いてみるか、と思い立った次第です。

釈迦に説法ですが、カスタマーサクセスの本質を正しく理解することは、特にSaaS企業経営者、営業責任者、CS責任者、CS担当者、営業、マーケの方々に限らず、この国でビジネスをしている全ての企業とってプラスになると信じています。

読んで損はない(ハズだと思っている)ので是非ご一読ください。

1. 向井について

過去のnoteをご覧いただいてフォローしてくださっているファンの皆さまはご存知ですが、7月に18年強のサラリーマン人生を辞め、独立起業しました。どういう立ち位置で何をしているのかはホームページを頑張って作っているので覗いてみてください。

直近ではアップアニーという米スタートアップのモバイル市場データプロバイダーの日本法人でカンマネ(カントリーマネージャーの略。代表です)をやっていました。

カスタマーサクセスについて僕が持論を持ち得るのは、何を隠そう(何も隠してないけど)、カスタマーサクセスという言葉がまだ広がる前からカスタマーサクセスに該当する活動を当事者としてやっていたり、前職でカスタマーサクセス含むセールスチームのマネジメントをして様々な改善をしてきたからです。そしてビジネスの成長に貢献した実績と結果を残せたと自負しています。

長らく営業職をメインミッションとし、営業チームをマネジメントしてきた僕にとっては、カスタマーサクセスの活動がビジネスの成長を支えたと言っても過言ではありません。

2. カスタマーサクセスのミッション

「カスタマーサクセスとは」とGoogleで検索すると、175万件の情報がヒットし、もう何が何だか分からなくなります。検索上位の多くはマーケ&セールステック系ベンダーの記事で、次いでマーケ&セールスメディアの記事が出てきます。その全てを読んだわけではないのですが、多くは「抽象的な概念」と「小手先のテクニック」に触れているものばかり目につき、本質的かつ再現性のある形で述べているものが見当たりませんでした(そもそも読むという行為があまり好きではないので見つけられてないだけの可能性も)。

僕の思考のベースにもなっているのですが、本質は常にシンプルです。カスタマーサクセスのミッションを本質的に捉えると、以下のように定義して良いかと考えています。

カスタマーサクセスのミッション
自社の将来の成長のために収益基盤を維持する役割である

これが僕の持論です。

チャーン(解約)を最小化するとか、NPSで高得点を得るとか、KPIとして各々定義して設定している企業は多いと思いますが、これは上記のミッションを因数分解したときの必要要素にすぎません。既存契約の維持は収益の基盤となるものであり、継続的な成長には欠かすことができません。

既存契約の多くがチャーンするとなると、その穴を新規案件で埋めなければならず、頑張って穴を埋めたとしてもARRで見ると「成長してない」ってことになります。これは辛い。穴のあいたバケツで水を汲み続ける事をイメージしてもらえればわかりやすいです。どんなに頑張って働いても報われない。

本質的な事を言うと、営利企業である以上、そしてVC等から資金調達をしている以上、SaaS企業はビジネスを成長させることが正義です。そしてその組織に属している以上、成長に向けた活動をするのが組織人としての責務になります。

なので、冷たい言い方をすると、顧客満足度を上げるとかNPSで高いスコアを出すという目先のKPIを「カスタマーサクセスの仕事だ」と捉えているとビジネスパーソンとして視座が低いと言わざるを得ません。顧客満足度を上げるのは目的ではなく手段であるべきで、目的は上記にある通り「ビジネスを成長させていく」ことなのです。これはカスタマーサクセスが営業組織に属していないとしても同様です。

3. カスタマーサクセスがやるべき営業活動

では、「自社の収益基盤を維持する」という点について具体的にお伝えしたいと思います。つまり「カスタマーサクセスがやるべき営業活動」についてお話します。

以下のスライドをご覧ください。僕が #旬トレ という名前で無料のセールストレーニングを毎月2件ずつやっており、ここ1年ほどでのべ40社程に提供しているのですが、その中の資料の1ページです。

問題と課題、ゴールとニーズを正確に理解していない状態で営業活動をしている人、いませんか?自分の言葉でこれらを定義し、さらに共通言語として社内で会話できていますか?

感覚ですが、ゴールをニーズだと思い込んですぐに前のめりになって提案をしたがる営業は非常に多いように感じますが、それだと売れないです。もし売れたとしたらお客さんのお陰です。営業は、ゴールと現状とのギャップ=課題を顕在化していく活動が求められますが、課題の裏返しがニーズとなります。

ビジネスはニーズが出発点です。商売である以上、そこに必ずニーズがあります。そのニーズを買い手が自覚してはじめて商談がスタートします。

次に、おそらく当たり前すぎて意識していない落とし穴についてお伝えします。

- 会社は生きている。つまりビジネスゴールは変化する(当然だ)
- 現状のステータスも、時間と共に変化する(そりゃそうだ)
- てことは、課題も変化する
- つまり、ニーズは変化する

当然すぎる事実であるものの、ここをすっぽり頭から抜け落ちている人は非常に多いのではないでしょうか。

話を少し戻してカスタマーサクセスの営業活動の話です。

一般的に、新規で契約を締結したあと、営業からカスタマーサクセスに引き継がれます。クライアントのプロファイル情報、組織やステイクホルダーの情報、契約の背景や導入目的、リスクやアップセル機会など、営業はカスタマーサクセスに必要情報を渡します。

そして一般的に、カスタマーサクセスはサービスのログインや利用状況のログを確認しながら、きちんと活用できているかをウォッチし、定期的/不定期にミーティングをセットするなりしてサービスが定着するように活用支援をします。

この時「クライアントのビジネスゴールの変化状況」と「ゴールに向けたクライアント内部の活動状況やゴール達成状況」をちゃんと把握していますか?というのが僕が提起したいメッセージです。

契約して1年経ち、契約更新の話を持ちかけた時に「実はあまり活用できていないので解約をしたいです」と言われ、そこで初めて顧客の状況をきちんと把握することになった、という経験をした人は少なくないのではないでしょうか。1年前の新規契約時のビジネスゴールと課題、そして契約の目的は過去のものです。当時の情報のままアップデートされずに1年間同じ活用用途だと思い込んでサポートしていませんか?

クライアントは、ビジネスゴールを達成するためにあなたのサービスを採用しました。ビジネスゴールの達成がクライアントにとってのサクセスです。ということは、カスタマーサクセスという肩書きを持つのであれば、クライアントのビジネスゴールの達成状況を定期的に把握することはもちろんのこと、他に阻害する新たな障壁や課題が出ていないのか、そもそもビジネスゴール設定自体に変化点はないのか、などを責任持って把握しなければなりません。サービスの活用状況を上げるとかNPSスコアを上げるというのがカスタマーサクセスが背負うメインの役割であってはならず、上記の活動をしていれば結果としてついてくるものだというのがご理解頂けたのではないでしょうか。

カスタマーサクセスは、ビジネスゴールと現状の変化点の把握をし、そこからギャップとなる課題を抽出してクライアントに自覚してもらう。そしてその課題の解消のためにソリューションとして契約しているサービスの活用に落とし込む。この一連の流れは、営業が契約締結に向けて進める非常に重要なプロセスです(この活動によって創出された商談をクロージングしていくプロセスへと続きます)。

4. 向井からの提案

カスタマーサクセスを営業組織に所属させていない企業も多くいると思いますが、僕は以上の理由から営業組織に入れて収益基盤の維持をターゲットとして背負って活動する事をおすすめします。具体的に言うと、例えばネットリテンション率やアップセル貢献度等です。

SaaS企業にとって、ネットリテンションとアップセルは両方ともかなりクリティカルです。ネットリテンションが低いということは前述した通り穴の開いたバケツ状態ということですし、アップセルは成長のために重要な活動です。

ネットリテンションが低くてアップセルをゴリゴリに売ってもARRとしては大して成長してないことになりますし、逆にネットリテンションが高くてもアップセルが取れてないとARRは同じく成長しません。ネットリテンションとアップセルは両輪が回って初めて成長していくことになります(あとは新規契約のビジネスがありますが、ここでは割愛します)。

従って、組織の形を変えるだけで両輪がいきなりうまく回るとは言うつもりはありませんが、カスタマーサクセスを営業部門の組織にすることを提案します。そしてビジネスの成長のためには穴の塞がれたバケツにする必要があるので、将来の成長に向けた既存契約の維持、というミッションの元、KPIや評価制度はネットリテンションやアップセル貢献度等の「収益に直結する指標」を背負うということにするのはいかがでしょうか?

企業ごとの課題の解消によるビジネスゴールの達成がSaaS企業としての価値である以上、カスタマーのサクセスを責任持って担当することは、営業活動とは切っても切り離せません。

あとはもちろん評価制度も大事です。おそらくカスタマーサクセスの評価制度は減点方式になっているのではないでしょうか?営業は加点方式です。数字を積めば詰むほど評価されます。カスタマーサクセスも同様に、例えばネットリテンションが上がれば上がるほど加点方式で評価していくという形が本質的だと考えています。

業務プロセスに入りこむSaaSだとチャーンはしにくいでしょう。だからといって上述したカスタマーサクセスのミッションを無視していいと言うわけではありません。疑問や質問に受動的に対応するのはカスタマーサポートです。利用状況をモニタリングして「使っていないみたいだけど、どうかしました?」程度のコミュニケーションも然り。

企業は生き物です。変化します。その変化点を把握し、不要な機能やライセンスは削り、必要なものを新たに組み込んで結果アップセルをする。そしてクライアントはその時に合わせた自分たちに必要なサービスを活用してビジネスゴールに向かっていく。

SaaSがこの先も様々な領域で立ち上がっていくにあたり、カスタマーサクセスの位置付けや役割、ミッションを改めて考えていただくきっかけになれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?