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大人も学生も、世界史を学びたい人は必携!現役の高校の先生が書いた「整理されすぎた世界史」の流れを刮目せよ。【山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』SBクリエイティブ】

高校で世界史を教えている。

世界史の教科書というものは、文章自体はわかりやすく書かれているが、「流れ」が非常にややこしい。たとえば中国文明の起こりから中国史の話が始まったかと思えば、唐が衰退するころに次のページをめくると「イスラーム世界の成立」とある。さらにゲルマン民族が大移動してフランク王国や神聖ローマ帝国が成立し、十字軍が遠征して百年戦争でジャンヌ・ダルクが処刑されて、ようやく中国史の話に戻ることができる。

こんな教科書の構成上、しょうがないので中国史の話の次の時間にはいきなりイスラームの話をせざるを得なくなることが多々ある。これでは「世界史がよくわからない」と混乱する生徒が続出するのは当然だろう(もちろん僕の授業の腕の未熟さも問題ですが)。

この本は、そんなややこしくわかりにくい世界史の「流れ」に着目して、徹底的に地域や出来事を整理して一冊にまとめたものである。

著者の山崎圭一先生は福岡県立高校に勤める現役の社会科の先生だが、同時に「ムンディ先生」の名前でYouTubeに授業動画を続々とアップされている、いわゆる「YouTuber」としての一面も持つ(ただし無償で活動されている)。実は自分が授業を作るときにいの一番に参考にしているのは、このムンディ先生のYouTube動画授業だったりする。学校さながらの授業を手軽にYouTubeで受講できるのは非常に画期的だ。

前述したように、中国史のあとにイスラーム史がはじまり、西洋史へ飛んだかと思えばまた中国史・・・とあっちこっち話の方向が散る一般的な教科書とは違い、この本ではまずだいたい大航海時代くらいまでの流れをヨーロッパ・中東・インド・中国の順番に、各地域に分けてそれぞれ流れをおさえる。そしてゆるやかに各地域が結合して、現代に至るまでをざざーっと追っていく。時代が進むにつれ、まるで小説のように「ああ、ここでこれがリンクするんだ!」と腑に落ちる瞬間は、実に快感だ。

また、ストーリーのように話が進んでいくので、ノイズになりうる余計な情報がほとんど排除されている。たとえば神聖ローマ皇帝がローマ教皇に3日間許しを請い続けた「カノッサの屈辱」という事件があるが、1077年に起こったということは巻末付録でちょっと触れられているだけ。本論ではこうした年号もほぼ登場しない。それがまた、ストーリーでなく年号に気を取られずに済む、という点では非常にありがたい。

いま世界史を学んでいる高校生はもちろん、教養として世界史を学び直したい大人も必携の一冊だ。余談だが、事前にムンディ先生のYouTube授業をある程度受講してからこの本を読めば、文字の一字一句がムンディ先生の声で再生されるように読めるので、授業を受けている感覚になる楽しみもある、ということも付け加えておこう。


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