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「ベストはさておき、とりあえず!」―繊細で気がつきすぎるすべての人に届けたい「ラクに生きる方法」【武田友紀『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』飛鳥新社】

この本は、「繊細でストレスを感じやすい人が、繊細な感性を大切にしたまま、ラクに生きる方法」を書いた本です。

この書き出しが、この本のすべてを物語っている。

おそらく、「気が利く人」や「気がつきやすい人」というのは良い人であるという認識を持つ人は多いと思う。たとえば冷房がよく効いている状況下で「寒くないですか?大丈夫?」と聞かれたり、そっとブランケットを持ってきてくれるという行動に対して「不愉快だ!」と思う人はそういないだろう。

しかし、世の中には一定数「気がつきすぎる」という人もいる。そして「気がつきすぎる」がゆえに、実は本当はめちゃくちゃに疲労している人がいる、というのも事実だったりする。この本ではそんな人たちを「繊細さん」と形容して、いかに日常生活を生きやすくするか、ラクに過ごせるかを徹底的にわかりやすく解説している。

食事中、机のキワキワにお茶が入ったコップが置かれている」。こういう状況はたいして珍しくない。そんなとき、「繊細さん」はあらゆるシチュエーションを頭の中で徹底的にシミュレートする。この人の箸を持つ手がこう動いたら肘打ちする形になってコップは机から落ちる。そうなればお茶は床にこぼれるし、なによりそのコップはガラス製なので、下手すれば落ちた衝撃で粉々に砕け散る可能性がある。すると片付けるのが超面倒くさいしうっかり破片を踏んでケガするかも・・・。

もしも食事相手がそっとコップを机の安全なスペースに勝手に移したのなら、その相手は頭の中でそんなシミュレートを繰り返して「危険だ!」という結論を導き出し、最悪の結末を回避するためにコップに手をかけたかもしれないのだ。だから「勝手に動かすな」などと思わないでほしい。

「繊細さん」は、誰もそんなこと気にしないだろうというレベルまで気がつきすぎる。そして自分が動くことで解決したり、リスクが回避できるのならば動く。「気がついた」のなら、動かないという選択肢を考えない。そのために常にアンテナを張り巡らせているからこそ「繊細さん」は疲れがちになってしまうのだ。

また、あまりに繊細すぎて、「繊細さん」には考えすぎて動けないということも多々ある。このデータは円グラフか棒グラフのどっちが良いだろうか、オレンジ色で表現したら目がチカチカすると課長に怒られないかな、でも白黒のグラフだとどっちがどっちかわかりにくいって言われそうだな、というかそもそもこのデータ必要なのか・・・?

これはあくまでも数多のリスクを回避するための行動であり「完璧主義」とはまた別モノである、と著者は力説している。しかしながら、考えすぎて動けないというのもこれまた問題である。会議中、「相手はこの意見を待ってるんだな」と気がついてしまったが最後、自分の本当の意見を言えずお茶を濁したり、場合によっては思考停止してしまう。これはとてももったいないし「お前の意見はないのか!」と怒られてしまうかもしれない。そうなればもう悪循環である。

だからこそ、著者はこんなアドバイスを「繊細さん」に送っている。

「ベストはさておき、とりあえず!」

自分の繊細さが仕事で悪影響を及ぼしている、逆に疲れすぎて困っている、そんな人にぜひともオススメしたい一冊だ。

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