【Mr.Bike復刻】みやもと春九堂通信 vol.04

 年末年始といえば、忘年会やら新年会のアルコールのもたらす興奮と混乱で、さまざまなモノが乱れたりする時季だ。公衆の面前で騒ぎ立てたり、路上で眠り込んだり、ゲr……失礼、吐瀉物をまき散らしたりと、おおよそマナーや常識というモノを捨て去ったケダモノのような光景が繁華街の各所で繰り広げられる。


 ネット上では、チャットなどのオンラインのコミュニケーションに対して、直接会うことを「オフラインミーティング」略して「オフ会」という。そして年末年始となると、さまざまなサイトの主催で忘年オフ会・新年オフ会が、文字通り全国各地の繁華街で催されることになる。

「オフ会」などという名前がついているものの、内容は基本的には食事会であったり、アルコール入りのいわゆる飲み会であったりする場合が大半だ。他に様々な企画やイベントを行うところもあるが、やはり「腰を据えて」となると、飲食は欠かせないものなのだろう。事実、僕自身も何度となくオフ会を主催し、また参加してきたが、一切飲食の絡まないオフ会というのは体験したことがない。いや別に好んで飲食のあるオフ会に参加しているわけではない。ホントのホントである。

 さて「食」は特に問題ないのだが、問題は「飲」だ。さらに言えば「酒」であり「酔」が問題になる。まぁ要はネットで知り合った集まりだろうがなんだろうが、マナーや常識という大切なモノを脱ぎ捨ててしまう様な酔っぱらいは大迷惑だということ。服の2枚や3枚を脱ぎ捨ててしまう様な妙齢のグラマラスな女性の酔っぱらいなら、まぁ許さないでもないというかむしろ歓迎してしまうところなのだが。そううまい話はないのだ。

 同じ酔っぱらいにしても、からむだの吐くだの騒ぐだのの迷惑ならば、まだ対処のしようもある。だが、それを超えた大迷惑な酔っぱらいもいる。酔ってぶっ倒れるだの、暴れてケンカするだののバカタレどもだ。こういう連中はオフ会であろうが会社の忘年会であろうが、急性アルコール中毒で救急車のお世話になるか、傷害などの罪状でパトカーのお世話になるかという結末が待っているのだが、ここでネットならではの、ちょっと困ったことが起きる。

 ネット上では、ほぼ全員がハンドルネームという別名を名乗るものなのだが、オフ会という場でもそれが適用される。ニックネームといってしまえばそれまでなのだが「まぁまぁファンタジスタさん一杯どうぞ!」とか「それじゃドグラマグラさんも!」とか「月光騎士団さん、そこの灰皿とってくれますか?」などという会話が交わされたりすることもあるわけだ。もちろん、あまりにもアレなハンドルネームであったり、諸々の事情で呼びにくかったりすれば、省略されたりなどの対処で別の呼び名になるが、基本的にはこれが通例である。

 まぁ呼び名までは別にいいのだが、問題は本名や年齢、連絡先などを知らないケースもあるということだ。確かにハンドルネームとケータイ番号さえあれば、会うのに支障はない。だがそんな参加者の一人が急性アルコール中毒で倒れたりしようものなら大変だ。「銀河☆聖天使さんがトイレから出てこないよ!」「えっ! 銀河☆聖天使さんが?」などという事になった場合は、トイレのドアを叩きながら「銀河☆聖天使さん! 大丈夫ですかあ!」なんて声をかけたりするハメになる。☆どうやって発音するんだ。

 非常にマヌケな光景だが、それしか呼び名を知らなければ、そうするしかない。救急車を呼んだとしても、誰かが機転を利かせて倒れた者の所持品から免許証や身分証明書などで本名を調べない限り「こちらの方のお名前は?」と救急隊員に訊かれても応えに窮するばかり……というような珍現象も起きてしまうわけだ。

 こんなアホくさい珍事は人生というロードマップを走る上で絶対に避けて通りたいポイントであることはいうまでもない。しかしこの年末年始も、どこかでこうした珍事が起きたに違いない——都内繁華街の片隅で、ネット上でもかなりコアなサイトの専門用語を口々に叫ぶ泥酔集団の横を通り過ぎながら、僕はそう確信した。どんな集まりの飲み会であれ、くれぐれも飲み過ぎには注意、なんである。

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【Mr.Bike復刻】みやもと春九堂通信

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