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ミネルヴァ映画会 2024年4月26日金曜日開催 解説②



線は、僕を描く


鑑賞した日:2024年2月1日
鑑賞した方法:Netflix

監督:小泉徳宏
主演:横浜流星、清原果耶、三浦友和、江口洋介
公開年・国:2022年(日本)
リンク:
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0BX23CHD5/ref=atv_dp_share_cu_r

▼140文字ブリーフィング:

監督の小泉徳宏さんは、
『ちはやふる』の監督だそうです。
百人一首の漫画原作の、広瀬すず主演のやつ。
私は『ちはやふる』は第一作だけ観て、
あまり刺さらなかったんですよね。

わりと今回も方向性は似ていて、
テーマは「水墨画」です。
水墨画に魅せられた大学生が、
師匠について水墨画の面白さを知っていくという。
私は井上雄彦のバガボンドの筆絵が大好きなので、
そういう技巧とかについて知ることができたら面白そう、
と思って鑑賞しました。

確かに面白くはあるのだけど、
ずっと漫画を読んでいる感じで、
私はそこまでぐっと来ませんでした。
詰め込まれた「青春要素」は100回ぐらい見たことある感じだったし、
かといって水墨画の深い知識が学べるわけでもない。
こういう(あくまで私からみて)中途半端な邦画が、
観客動員でいうと「最適解」なんだろうなと思いました。
私が好きな映画って、
なんか商業的に成功しないもののほうが多いのかもしれない。
すべてというわけではないけれど。
(396文字)


逆転のトライアングル


鑑賞した日:2024年2月1日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(500円)

監督:リューベン・オストルンド
主演:ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ウディ・ハレルソン
公開年・国:2022年(スウェーデン)
リンク:
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0B8LLVSPH/ref=atv_dp_share_cu_r

▼140文字ブリーフィング:

これはめちゃくちゃ面白かった。
スウェーデンの映画監督、
リューベン・オストルンド氏の映画は、
これまで2本観ています。
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
『フレンチアルプスで起きたこと』

両方とも面白かった。
特に『ザ・スクエア』は、
現代の格差社会をシニカルに描く傑作で、
そのオストルンドの新作だったら観るっしょ、
てなわけで鑑賞しました。

最高でしたね。

今回は「豪華客船」というギミックを用いることで、
格差がより記号的・戯画的に描かれる。
そして後半、ある出来事が起き、
その格差の前提がひっくり返ります。
擬似的な「革命」が起きる。
上層の人が下層に落ち、
最下層の人が頂点に君臨する。

めちゃくちゃニヒルな笑いがちりばめられて、
もう「最高」でした。
ぶち上がりましたね。
嫌いな人は嫌いだろうなー、この映画。
でも好きな人はめちゃくちゃ好きだろうなー。
私は大好きです。
(369文字)



ヘイトフル・エイト


鑑賞した日:2019年3月3日初見 2024年3月1日 再鑑賞
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:クエンティン・タランティーノ
主演:サミュエル・L・ジャクソン他
公開年・国:2015年(アメリカ)
リンク:
https://goo.gl/7sCvkr

▼140文字ブリーフィング:

この映画、5年前に観て、
すごく好きなのでもう一度観ました。
タランティーノの映画って、
定期的に再鑑賞したくなるんですよね。
ちなみに去年の秋、
私は『パルプ・フィクション』の三度目を観ました。

『ヘイトフル・エイト』もすごく好きで、
もう一回みたいとずっと思っていたのですが、
Amazonで課金されるようになっていて観られなかった。
それが今回は100円セールに入っていたのでレンタルした、
という感じですね。

『12人の怒れる男』という、
古典的な映画があるのですが、
本作はタランティーノ版『12人の怒れる男』なのかな、
とか、タイトルは『七人の侍』は絶対意識してるだろうな、
とかいろいろ考えながら観ました。
タランティーノって映画オタクなので、
過去の作品を参照しながら、
それをヒップホップ的にサンプリングするようなかたちで映画を作ります。
『キル・ビル』の深作欣二オマージュとかが代表的ですが。
本作では何といっても、
長年タランティーノが憧れていた、
映画音楽作家のエンニオ・モリコーネが楽曲提供してるんですよね。
モリコーネはちなみに『ニューシネマパラダイス』の「あの曲」を書いた人です。

舞台は南北戦争直後の冬のワイオミングの雪山。
賞金首の犯罪者(女性)を生け捕りにして街に向かう男と、
その街から来たという自称保安官と、
途中で出会った、リンカーンの手紙を持つ黒人の男と、
雪山で唯一吹雪を避けられる山小屋にいた男たちと。

7人の男性と1人の女性が、
雪山で吹雪の中、山小屋に閉じ込められます。
そして全員がなんかウソをついてるっぽい。
ほとんど場面展開がなく3時間近く会話劇が続くのですが、
これがなぜか観てられるのがタランティーノなんですよね。
『パルプ・フィクション』のファンなら、
サミュエル・L・ジャクソンの長広舌がまた聴ける、
ってだけでもうぶち上がると思うのですが、
そういうシーンの連続です。

ライムスターの宇多丸さんが、
「タランティーノの映画は、
 その場の会話を支配した人がドミナンスを握るというルールがある」
と言っていて、めちゃくちゃ納得しました。
なんか、ラップバトルみたいなんですよね。
丁々発止で、ウソと真実を交えながら、
誰が「場」を支配するか、というゲームが行われる。

しかし、この映画の結末は賛否分かれるでしょう。

『イングロリアス・バスターズ』とか、
『デス・プルーフ』とかって、
フェミニズム的視点が織り込まれていて、
それが批評的で好きなのだけど、
本作ではそれが逆転しています。
町山智宏さんがMP3で解説する有料音源を私は購入して聞いたのですが、
「魔女を絞首刑にするカタルシス」への疑問を町山さんは語っていました。
これは魔女裁判だ、と。

とはいえ画面比1:2を生かしながら、
男たちが「口上」を垂れるときの、
それを聞いている他の男たちの表情を、
「これはウソをついていることに気付いてるな」とか思いながら見る、
というのが本作はたまらないんです。
ゲーム『かまいたちの夜』をプレイした中学校時代から私は、
「雪山閉じ込められモノ」が好きなのもあり。
そんなジャンル、あるのかどうか知らんけど。
(1,244文字)


アウトレイジ

鑑賞した日:2017年10月14日 2024年3月12日 再鑑賞
鑑賞した方法:TSUTAYA DISCUSでレンタルして鑑賞

監督:北野武
主演:三浦友和、北村総一朗、加瀬亮、ビートたけし、椎名桔平他
公開年・国:2010年
リンク:http://amzn.asia/dg82X6h

▼140文字ブリーフィング:

昨年の秋、岡山旅行中に、
北野武監督映画『首』を観ました。
そのあといろんな人の『首』評をYouTubeなどで漁っていたら、
なんか北野映画がまた観たくなってきた。

ところが、北野映画ってめちゃくちゃ「観づらい」んですよね。
どのサブスクにも入ってないから、
「円盤(ブルーレイかDVD)」以外観る方法がない。
じゃあ、レンタルってなるんだけど、
TSUTAYAやゲオの実店舗は減りすぎてもはやどこにあるか分からんし、
オンラインのTSUTAYAで北野映画を検索すると、
全部品薄でまともに都度課金レンタルできるものがほとんどない。
ブルーレイ買うと1作4,000円とかの出費になるし。

そんななか、アウトレイジの第一作だけ、
オンラインでレンタルできる状態だったのでレンタルしました。
『アウトレイジ』シリーズは三作とも観てますが、
かなり久しぶり(7年ぶり)に観たら、
やっぱりいろんな細部は忘れてて、
改めてよくできた映画だなぁと感心したわけです。
まず、ストーリーの転がし方がめちゃくちゃ上手ですね。
小さな事件が因縁のつけあいや謀略を経て、
雪だるま式に大きくなり、
広域暴力団組織を巻き込む「戦争」になっていくところとか、
ゾクゾクします。

なぜゾクゾクするかというと、
北野武のヤクザ映画(ちなみに『首』も)は、
現実世界のメタファーだからです。
ヤクザ映画を観ているようでいて、
我々は現実の政治の世界を観ているのです。
第一次大戦はオーストリアの皇太子暗殺という「小さな事件」から、
ヨーロッパ全土を焦土にする大戦にまで転がりましたが、
まさに『アウトレイジ』そのものです。

あと、北野武はやはり「編集」が抜群に上手い。
不必要なアクションシーンはまったくないんだけど、
それを観客は「そのシーンあったよ」と鑑賞後に錯覚するほど、
編集で観客の脳内を自由に「操作」できる。

たとえば『アウトレイジ』には、
覚醒剤売買に関わっている中華屋店主の厨房に、
ヤクザが押し入り、まな板で指を落とすシーンがあります。
その指が客に提供される「ワンタン麺」の中に落ちる。
入店してからずっとイヤホンでニンテンドー3DSをしている客に、
その「指入りワンタン麺」は届けられるのですが、
客が驚くシーンはなく、
次の場面に転じる。
映画の観客の脳内では、
その2秒後に3DSの客がイスごと後ろに倒れて驚くシーンが、
完全に補完されるのですが、
実際にはそんなシーンはない。

こういった編集のうまさが、
「テンポの良さ」を生み出す。
とにかく冗長さがなくて、説明的じゃないんですよね。
でもちゃんと「説明」に成功している。
この手際の良さは異常です。
これを武は「映画の素因数分解」と本に書いていました。
北野武は本当に頭が良いんだなぁ、と映画を観るとわかります。
(1,081文字)


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