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ほ 「香港」


香港が好きだ。最初に行ったのは2001年、弟と2人、大学の卒業旅行で立ち寄った。あの雑多な感じは他にはあまりない。新宿歌舞伎町の前で主に欧米の観光客の方が写真を撮りまくっているが、多分僕たち日本人が香港に抱く異国情緒とそれは良く似ている気がする。未来と過去と現在がごった混ぜになっているあの歌舞伎町や思い出横丁の感じを映画監督のリドリー・スコットが『ブレードランナー』で映像化し、それが人々の抱く未来の映像を透明なパイプの中を空飛ぶ自動車が走っている「手塚漫画の未来」から、アジア的雑多な街角に登場する「目にコンピューターが内蔵された人造人間」が闊歩するというようなイメージに上書きした、と映画評論家の町山智宏さんが言っていた。香港の雑多さと歌舞伎町の雑多さは、区画整理(セグリゲーション)が徹底している欧米からするとすごく新鮮に感じられるのだそうだ。

あと、香港ってあまり地震がないから、建築の法律とかが日本とまったく違っていて、マッチ棒のように細長いビルが林立している光景はちょっと現実離れしていて目眩がする。日本人の国民病である「ここで地震が起きたら」と考える癖が発動すると、完全にあり得ない構造の建物が本当に多い。

昨今の政治的変動で香港はもはや「近い国」ではなくなってしまった感があるが、それでも香港の文化はやはり好きだ。イギリスの文化と中国の文化が混じり合っていて、英語と広東語が混ざっている。イギリス式のトラムが走っているかと思えばその横で太極拳をしている老人の集団がある。かの地では夜に甘いものを食べる習慣があるらしく、屋台でココナッツミルクの中にマンゴーが入っていて、そこに白玉団子的なやつとかタピオカとか、そういった類いが混ざってたりするものを食べる。旨い。

昔香港に旅行していた人々は今や台湾に流れているかもしれないし、台湾でも近い体験はできるのかもしれないけれど、それでも香港にしかないものもあるのだろう。いや、「なかった」ということになるのだろうか。僕のような人間にとってお隣の超大国は反面教師以外の意味をあまり持たないし、規模が違いすぎて参考にもならないし、横から何を言っても無意味なのだろうけど、「国内の多様性をもっと大切にしたらいいのにな」とはいつも思う。一国二制度、良い考え方だったと思うんだけどなぁ。わりと寛容だった鄧小平さんが墓から復活すれば良いのに。


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