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凝灰岩の洞穴とSanta FeのAdobe建築

先日投稿した短編小説「魅惑の洞穴」表紙に使った「洞穴」の写真に興味を持たれた方がいるかも……と思い、紹介させていただこうと思います:

1.はじめに

これはアメリカ南西部、ニューメキシコ州にあるバンデリア国定公園、かつて先住民が住んでいた洞窟群のひとつです。

凝灰岩の岩山に、洞穴がたくさん開いています。

凝灰岩とは、火山灰が堆積してできた脆い岩です。
風雨で浸食されやすく、また、加工しやすいことで知られています。
日本で良く知られた凝灰岩として、建材として使われる「大谷おおや石」が挙げられます。

ニューメキシコ州最大の都市・アルバカーキに住む「再勉生活」時代の親友を訪ねた時、州都サンタフェを経由し、この遺跡に連れて行ってもらいました。

2.Bandelier 国定公園

Bandelier 国定公園は、サンタフェから北西に 70 キロほどの場所にあります。

このあたりには1万年前から人が住んでいたようですが、Bandelierの岩山のほとりに先住民Pueblo族が定住したのは西暦1150年頃で、400年後の1550年頃にはこの地を捨てて出て行ったとのことです。
公園全体が博物館であり、岩面彫刻や象形文字、石造りの家、そして洞窟住居と、一連の古代遺跡が保存されています。
洞窟住居は、風化した洞穴を人力で掘って広げたり、繋げたりしてけっこう広く、2DKぐらいのマイホームもありましたね。
「ここに住むのもいいかも!」

この梯子を登って行くとマイホーム

20年ほど前に某住宅関連メーカーが、土を固めて作った内壁を商品化し、最適な大きさの開気孔によって、常に室内を最適な湿度に保つと宣伝していましたが、凝灰岩はまさにその条件にあった天然素材だな、と思いました。

かなり大きな部屋もありました
竪穴式住居の遺跡も残っていた
石積みの住居跡
洞窟と日干し煉瓦を組み合わせたかなり近代的な住居(砦かも)

最後の写真(↑)にある、洞窟と日干し煉瓦を組み合わせた、かなりおおきな住居(なのか、砦のような公的な建物なのか)を見てからSanta Feの街にもどると、洞窟住居からAdobe(後述)に至る連続性を感じましたね。

3.Santa Feの街

サンタフェの街にもどりました。
ここは芸術家が多く住んでおり、美術ギャラリーも多く、音楽祭や工芸祭が開かれることで知られています。
ある年齢以上の方は、篠山紀信撮影の宮沢りえさん初ヌード写真集「Santa Fe」が浮かぶかもしれません。

街に入ると、メキシコ風の茶系統の建物ばかりになります。
これは、砂や粘土に藁や木質材料を混ぜて乾燥したAdobeと呼ばれる自然素材の伝統建築物、あるいはそれに模して造られた建物です。
Adobeはスペイン語ですが、AcrobatやPhotoshopで有名なAdobe社の社名由来でもあります。

美術ギャラリーが並ぶAdobe-like建築の商店街
銀行もAdobe!

日本でも、伝統的建造物の保存地区などでは、コンビニだろうがハンバーガーショップだろうが、街に溶け込んだ外観にすべし、という条例が制定されていることがあります。
ここSanta Feのダウンタウンは、Adobe風の外観にしなければ建築許可が出ないそうです。

Adobe建築風ホテル
ここは、カウボーイブーツの工房ショップ、だったと思う……。
Institute of American Indian Arts Museum

Adobeはもともと「日干しレンガ」のことを言い、水分を含む壁が熱を非常にゆっくりと放出するので、建物の内部は涼しく、暑くて乾いた気候に適しているそうです。

なんだか、凝灰岩の洞窟住居にきわめて似ています。
スペインのアンダルシア地方でも、今も洞窟住居の中に住む人がいて、冬暖かく夏は涼しい ── という話を聞きました。

Adobeは、かつての洞窟での住みやすさを、平地で再現しようとした住居なのかもしれません。

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