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[アルバムレビュー]1998年のミステリアスな大傑作について。

(アステロイズにアルバムレビューを寄稿しようと思ったら、予想以上に熱が入ってしまったのでnoteに上げました…)

今回レビューするのは

Neutral Milk Hotel 「In the Aeroplane Over the Sea」

です。

ハッキリ言って、私はNeutral Milk Hotelというバンドについて何も知りません。


何故このアルバムを聴くに至ったかも全く覚えていませんが、しかしその奇妙なバンド名とアルバムジャケットは、今日に至るまで私の脳内にすっかりこびりついています。


ほとんど情報もない中で、唯一私が断言できるのは、このアルバムがまぎれもない名盤であるということです。
正直ジャンルもよくわかりません。強いて言えばインディー・ロックでしょうが、ぜひカテゴライズによる先入観のない、フラットな状態で聴いていただきたいです。


特にコンセプトアルバムが好きな方、実験的な楽曲が好きな方にはお勧めです。確実に予想を裏切られ、そして超えてくると思います。言うまでもなく通しで聴いてください!!(シャッフル再生・プレイリストアンチからの切実な願い)


ですので初見の感覚を楽しんでもらいたいという意味でも以下のレビューはおまけです。とりあえず”一聴”してから読んでいただけたら一番うれしいです...。



T1 King of Carrot Flowers Pt. 1
T2 King of Carrot Flowers Pts. 2 & 3

タイトルを見れば明らかなように連作となっています。
T1は牧歌的なサウンドにやや語り部じみたボーカルが載せられ,異国情緒を感じさせます。

T2も引き続いて穏やかなイントロから幕を開けますが、歪んだベース、落ち着きのないブラスが加わることにより、徐々に不安感を煽ってきます。
そして急激に加速するドラムに引きずられるようにして、この曲は突然重厚で切迫感のあるパンクへと変貌するのです。

背後のローファイサウンドと、あくまで詞を紡ぐようなボーカルのミスマッチ感は、かのヴェルヴェッツを彷彿とさせるものです。
アルバム開始後5分の内に一つ目のハイライトが訪れるスピード感もまた魅力です。


T3 In the Aeroplane Over the Sea

アルバムのリード曲です。ジャケットからも分かる通り胴体着陸した飛行機ってことですかね。
詞を深く考察する派でもないので詳しくはわかりかねますが、束縛からの解放、希望を感じさせる爽やかな楽曲に冠するタイトルとしては奇妙で、そこがクセになる。


T4 Two-Headed Boy
T5 Fool

これらもアウトロとイントロが接続した連作です。
T4はT3で獲得した解放感を加速させるように、アコギを力いっぱいかき鳴らし、ボーカルもまた今までになく声を張り上げ、非常にエモーショナルな楽曲となっています。

ただしタイトルも歌詞もどことなく不穏であり、この伏線を回収するかのようなインタールードがT5です。
2分に満たない楽曲でありながら、このアルバムの世界観を構築する上で間違いなく欠かせないピースです。
管楽器の音色は呼吸するように不安定で、ジャケットにあるように、まさに聞き手に浮遊感を与えゆっくりと揺さぶる海そのものといえるでしょう。


T6 Holland, 1945

かなりキャッチ―な楽曲で、疾走感のあるファズいギターに独特な語り節を乗せるスタイルは、アルバムの流れを抜きにしても魅力的です。
終盤はT1にも見られる(詳しくないので楽器名は出せませんが)エスニックなサウンドが加わり再び牧歌的な雰囲気を取り戻す…と思いきや、最後の一秒が聞き手の心に言い知れぬ不安感を植え付けてきます。


T7 Communist Daughter

今までも片鱗は見せていたものの、直球の下ネタとそれに伴う宗教的な詞が登場し、ますますこのアルバムに引き込まれる一曲です。
曲だけ聞いていれば2分弱のシンプルな美メロです。なおアウトロはやはり(いい意味で)おかしい。


T8 Oh Comely

短い曲が並ぶ本作の中で唯一、8分もある壮大なアンセムです。
壮大とはいうものの、派手なストリングスが出てくるわけでも、BPMが著しく変化するわけでもありません。
アコギに乗せ、ただひたすらボーカルが力強く言葉を紡ぐだけの楽曲でありながら、8分の中に退屈する瞬間はありません。
歌詞もかなりドギツい印象は受けますが、力尽きたので誰か和訳したら私に教えてください。


T9 Ghost

T6に並び、単体でも聞きやすい楽曲といえます。
過去最高に歪みつつも温かみのあるギター、軽快なドラム、そして殻を破ったように朗々と歌い上げるボーカルに、否が応でも心が躍ります。
後半は頭を振りたくなるほど痛快なロックと化し、本作の受けの広さを物語っているようです。


T10 無題

2曲目のインストです。
これに関してはもう私の語彙力では説明できないので聴いてください。凄いんで。


T11 Two-Headed Boy Pt.2

トリを飾るのはT4のアンサー・ソングです。
このアルバムは大方これから生まれ出づる子供、胎児に対する賛歌(だと勝手に思ってる)なのですが、それを総括するような楽曲となっています。

些かホラーチックなSEから始まり、素直なフォークソングが歌われ、終盤にはT4のメロディーがアコースティック・アレンジされます。あまりにニクい演出です。
これまでに抱いた様々な感情が一気に押し寄せ、あまりに濃厚な39分間が幕を閉じます。


本当は歌詞を丁寧に考察し、様々なバンドとの比較を交えたいところですが、あまりに知識不足故稚拙なレビューになってしまったことをお許しください。
これを機に本作を気に入ってくれる方がいたら幸いです。


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