2014年に書いた漫才です

最近は女性が強くなったというけど、我々の世代だと、最近というよりも生まれたときからすでに女性は強かったように思うね
そうだね
うちの母親はすごいよ。私を産んだ明くる日からもう働いてたからね
すごいね。からだが丈夫なんだ
もうね。なんでもかんでも自分でやっちゃうタイプでさ。自分のことは自分でしなさいってよくいわれてさ
ちゃんとしたお母さんだ
とにかく強いのなんのって、出産のときは、自分で股の間に手をつっこんでさ、こうやって俺の頭を持って、ほらよ! つって、ひっこ抜いてたから
いやいや、それはねえだろ
それから俺を抱きかかえて、今日からひとりで生きていくのよって
ずいぶんと厳しいね
母乳をほしがると、こらダメよ! ってよくしかられたしね
そうなの。それはまた厳しいね
ダメ! こっちはお父さんのよって
スケベか!
だから俺は子供ながらに気をきかせてもう片方のにいこうとすると。こっちはお隣さんのよっ! て
スケベどころか不倫してんじゃねえかよ!
だから俺も困ってさ。母乳欲しさに隣の家をのぞくとそこに若くてきれいなお姉さんがいてね、すらっとした髪がこう妙に色っぽくてね。で、その人の胸のふくらみを両手で…
お前もかよ! 親子そろって何やってんだよ!
いや、だから、隣のお姉さんの胸のふくらみをね
言い方がやらしいんだよ! 子供の頃の話だろ!
え?つい昨日の話だけど
完全な変態じゃねえかよ!
まあまあ
なにがまあまあだよ
とにかく母親は強い人でね、あまりにも強いものだから父親も途中でまいっちゃってさ。ある日、母親が寝ている間に台所でガチャン! と音がしたものだから、急いでかけつけると、父親が床に倒れててさ
なにかあったの?
かけつけた俺は、倒れている父親を目にして、ああ! ってもう気が気でなく、必死になってお父さん! って呼ぶと、少ししてから、ぁぁって小さな声で返事があってね、俺は思わず、ああ、くそっ! この野郎まだ生きてるのかって
そこは悲しがってやれ
それから俺は父親をこう抱きかかえてね、腕の中で父親は、なんとか声を出そうとしてるんだけど、ろくに声もでずに苦しそうにうなってるだけなんだ。でも父親は俺になにかを伝えようとして、テ―ブルのほうを見つめててさ、なにがあるのかと思って、そっちを見ると…
なにがあったの?
コップと白い粉が…
おいおい、ぶっそうだね
はやってたからね。あの頃は…
なつかしそうにしてんじゃねえよ!
まあ、それは冗談でテーブルにちかづいてみるとなんとそこには…酒と塩が
アル中じゃねえかよ!
そう。舐めてみるとしょっぱくて…ああ、こいつはシロか、と
誰だよ! お前は
俺はその足ですぐに2階に向かってお父さんセーフ! シロ! って叫ぶと2階からチューブを腕に巻いた母親が注射器持って出てきてさ、ああ、シロか、と言ってさ
なにやってんだよ! お前たちは!
なにやってんだよつって、見りゃあわかるだろ、チューブと注射器持ってんんだからさ
いや、そうじゃなくて
犯人は結局見つからないままなんだ
目の前にいるじゃねえかよ!
だからさ、私も疲れちゃって、まあ、こういうときはこれで一杯いきますか? つっていうと、母親がいやいや私はこれがありますからって注射器とって腕にぶすってさ…いやあ、あの頃はよかったよ。目を閉じればお花畑が目の前にこういうふうに広がってね…
なんだよその会話は! 完全にキマッてんじゃねえかよ!
まあね
まあねじゃねえよ!
と、まあいろいろありましたが、結局母親は最後まで俺を厳しく育ててくれてさ、こうやって舞台にたてているのも、母親のおかげだと思うんだよね…ありがとうお母さん!
勝手にまとめんじゃないよ。でもたしかにお前の言うとおり、若い頃は恥ずかしくて、両親にありがとうということもできなったよな、これからは親孝行しないといけないよな
そうです。でもさ最近は親子の関係ってのがどんどん薄くなってるっていうじゃない?
そうだね
うちの母親なんかこの前会うとすごく痩せててさ…もしかしてクスリでもやってんのか心配になっちゃうよ
やめたんじゃねえのかよ!
父親は誰だかわかんないくらいハゲてるしさ
ハゲは別にいいだろ
おまえ。ハゲはいいだろって。お前に俺の気持ちがわかんのかよ! 俺だっていずれはハゲるんだから、、、
だからハゲはいいって! ハゲじゃない親子の話をしろよ!
遺伝するんだよな…
ハゲはいい! てかハゲてもいい!
でも最近は学校を舞台にした事件が多いですね
なんだよ急に
お前がハゲからはなれろっていうからさ
素直だね。たしかにさ、普段はおとなしかった生徒が急に暴れだしたりとかさ 
学校では喋らないけど、週末になると秋葉原に行ってあっちゃん卒業! とかいってる奴
古いな
あと、急にキレたりする奴とかいるだろ?
お前とか?
これは仕事!
まあ、でもお前の言ってることはわかるよ。でも、そんな奴は俺らのときでもけっこういたと思うんだよね
そうかな?
授業中とかにいきなりでかい声だしたりとかさ
言われてみれば、そうかもな
ピカチュウ!
ポケモンじゃねえかよ!
皆、授業そっちのけで夢中になっちゃってさ。ついこの間もテレビだけじゃおさまらなくて、そこら中の子供を次々に倒していったからね。あいつはとんでもないワルだよ
ポケモンはいいよ
じゃあ、ヤクチュウ!
おいこら。そっちに戻るな
でもあいつはすごいよな、あのピカチュウを手下に従えてさ、あいつこそ本物のワルだね、いつも帽子被っててさ、、、名前なんていったっけ?
サトシだろ  
そう、パンチョさん!
そいつはカツラだろ! しかも古いよ!
他人ごとには思えなくてね
だからハゲはいいって!
お前ひどいな、人ごとだと思って。お前みたいな奴がそうやって自分で気づかないうちに人を傷つけてんだよ
これは仕事!
仕事だったらなにいってもいいって思ってんのか?
そんなことはないよ。何だよ急に
(無言)
何もねえのかよ! まあ、我々の時代には今みたいに携帯電話やインターネットがなかったんだような。どっちかっていうと全体がまだ明るい時代だったかもしれないね
カツラがないから明るいっていうのは古いよ
おまえハゲ本当に好きだな。いいかげんにしてくれ!
まあね、でも俺たちだってけっこうひどいことしてきたと思うよ。気に入らない奴にジュース買いに行かせたりとか、給食をそいつの分だけ配らずに皆でわけて食べたりとかさ
それはひどいね
シューズを片方隠したり、机に落書きしたりしてさ、こうネチネチとしていくのが効果があるんだよ
お前、やな奴だね、そういうのやってたんだ?
ううん、されるほう
なんだそれ
だからもう悔しくてね。学校が終わると嫌な目にあわないようにとんで家に帰るじゃない。そうすると酔っぱらった父親が床に寝てて、ヤク中の母親がひとりで喋ってるんだよ。もう情けくってさ、家にいるのが嫌だから学校に行ってたようなもんだよ
でも、休まないのはたいしたもんだね
いつかあいつらに復讐してやるって
こわいよ
当時の友達の名前覚えてんだけど、たしか松本くんっていってさ
そうなんだ。よく覚えてるね。その松本くんって人は今何してるの?
数年前に参議院に立候補して、けっこう有名になってたよ
へえ、すごいね、出世したんだ
歌も出したりしてね。でもその後、地下鉄に落とし物して、それが評判になってさ…たまに宙に浮いたりとかね…
おい、あぶねえな
で、今は刑務所にいるよ
いるよじゃねえよ、なに可愛く言ってんだよ!
でも、もうそろそろいなくなるかも
もう、いいよ!
あと、キムって呼んでたんだけど、奴は海を渡って向こうの国で…
だから、お前の話はいいって!
お前、そんなこといっていいのか?
今度は何だよ?
お前の仕事はなんだかもういっぺんいってみろ
そりゃ、俺は漫才師だよ。お前がボケたら俺がツッこむ
だろ、だから俺がボケないかぎり、お前にはツッこめないわけだ。な? と、するとだな、お前は今もっとも言ってはいけないことを言ったんだ。お前の話はいいって…
まわりくどいな!もういいよ!

               終り

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Shun Mimura

米国駐在中です。音楽と映画と野球ゲームが好きです。Twitter https://twitter.com/Shun_Mimura
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