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インドの大学院で修士号を取得したヨガセラピストがまとめた「ヨガの資格取得で抑えるべきポイント」

はじめに

たくさんのヨガに関する情報がある中、こちらの記事にたどり着いていただき、ありがとうございます。

ちょっと張り切って書いちゃったので、合計1万字超えてます…マジ万字……

主に
「よーし!ヨガインストラクターになるぞー!」
「資格取るぞー!!」
という方向けに「入門書」として書いておりますが、

「ちょっと学術的にヨガってなんのか知ってみたいな」
という方にも楽しんでいただけるんじゃないかな、と思っております。

ここに書いてある内容や、画像に関しては「絶対使っちゃダメ!」とは言いません。

ですが、「こういう時に使いたいよー」とか、「この前、こういう時に使わせてもらって、みんなの反応はこんな感じでした!」とか、「使わせてくれてありがとう」とか「使った結果、みんなの反応悪かったけどどうしてくれんの?」とかとか、この記事がお役に立ちそう or お役に立てた!際にはこちらよりご連絡いただけると幸いです。いや、めっちゃ嬉しいです。

情報量が多いので、随時訂正または必要に応じて加筆してゆきます。
加えて「ここ、違うんじゃない?」と思われる箇所がございましたら、ご指摘いただけると幸いです。まだまだ未熟者ですので、みなさんのご指導を何卒宜しくお願い申し上げます。
最終記事更新日:2019年5月24日


誰が書いてるの、これ?(筆者について)

最初に僕自身の話をすると、2015 - 2017年で、南インドのバンガロールにある大学院にてヨガの修士課程を修了しました。帰国後、2018年には横浜でプライベートヨガスタジオ studio Sahana をオープンし、今に至ります。

ヨガの修士号ってなんやねん、って思われる方がたくさんいらっしゃるかと思うのですが、「ヨガって体にも心にもめちゃ良くない?」と気がついた科学者たちが、「これを現代科学で解明・証明するともっとたくさんの人にヨガの良さが伝わるんじゃない?」と研究を始めたんです。

そして、科学的に証明されると同時に医療の現場でも「ヨガを応用すると、西洋医学でカバーできないところにアプローチできるんじゃない?」と、研究施設の隣に療法施設ができました。

そこに知識を共有する学びの場が隣接され、学士・修士・博士が認可されて大学・大学院となりました。ヨガについて骨の髄まで勉強できる素晴らしい環境でしたし、なにより人生の修行ができました。そんな気になる学生生活についてはこちらをご覧くださいませ。


なぜこの記事を書くの?

「もうこの記事さえ理解できれば、たくさんお金払って資格取得のために座学受けなくていいですよ…!(資格に向けての座学の予習はバッチリ!)」と思うほどに気合い入れて書きます(でも、なるべくシンプルに、コンパクトに)。

少なからず僕も「インストラクターの方へのインストラクター業」を生業にしていますので、情報を提示しすぎると他の先生方からお叱りがくるのではないかとビクビクしております(ご、ごめんなさい…)。

ですが、「そもそも昔の人達が頑張って残してくれた知識を自分も授かっているだけだよなぁ」と、ふと気が付きました。お金はシェアできないけど、知識はシェアした方がみんな幸せだよね。って、僕の好きなバーテンダーの台詞なんですが。

例えば、「ヨガを身近な人に教えたい!けど、資格を取るにはお金がかかるよなぁ…」という人や、「頑張って資格を取った!現場で指導するヨガには詳しくなった!でもヨガの本質を生徒さんたちにどうやって伝えよう…」という人が、もっと気楽に、もっと手軽に、もっと詳しい情報にアクセスできるようになれば、ヨガをしている人たちもその周りの人たちもハッピーになると思ってます。

僭越ながら、僕がインドで学んだことや感じたことをシェアすること(だってインドまで行こうと思ったら時間もお金も体力もかなり気合い入れなくちゃですよね…!)に意義があると思っております。少しでも、日本のヨガ業界のお役に立てればなぁ、と。ナマステです。


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さて、ここから本文です
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What is Yoga?
ヨガの概要をサクッと

ヨガは単なるテクニック

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ヨガのイメージって、本当に色々おありかと思うのですが、
・痩せる?
・瞑想?
・スピリチュアル?
etc.

ざっくりいうと「心と体をしっかりと結び付ける」ための手段、という感じです。

上図が表しているように、「肉体」とか「生気(元気・活力)」とか「感性」が私たちを構成してるよねってヨガは考えます。*霊性は道徳とかに置き換えられますね。

その構成要素ひとつひとつをしっかり結びつけるための手段がYoga(語源は「楔/くさび」)です。

例えば、なんだかやる気が出ないなぁ…という時に、背筋をシャキッと伸ばして鼻からゆっくり大きく呼吸すると、気持ちが爽やかになったり(肉体から生気へのアプローチ)。

肥満や病気等が気になったりする時に、「なにを食べるべきか」や「嗜好やストレスに惑わされない」ように食生活を改善をしたり(感覚をコントロールして肉体へアプローチ)。

そんな時の手段としてヨガって役立つよね、とういうものです。

シンプルに、体を伸ばしたり動かしたりすると、体も心も気持ちいですよね。そうだよなぁ、心と体は繋がっているよなぁ、という感覚が既に少しでもあれば、あなたは立派なヨガ実践者(ヨギー、ヨギニ)です。

*僕たち日本人は「統合」って言葉よりも、「融合」の方が分かりやすいし実践・実感しやすいねって臨床心理士の河合隼雄先生がおっしゃってました。



ヨガの定義

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ヨガの定義、実はたくさんあるんですけど、定義だから一つにしてくれよ、ということで一番有名で大事なものが上図の

ヨガは心の作用を止めること

です。
この言葉のまま受け止めてしまうと「冷淡で面白くない人間の爆誕……!」と思ってしまうかもれませんが、そういうことではないです。

意訳すると「ヨガを使って心の揺れ動きを制御して、いつでも穏やかな心でいましょう」となります。

そうすることによって、目の前にあるもの・ことに一喜一憂することが無くなり、期待や失望や怒りの機会が日常で減っていきます。

環境を変えずとも心の在りようを変えるだけで、「日常の幸福度って上がっていくよね」と、考えます。その手段としてのヨガとは、「ポーズを取ること」だったり「呼吸に集中してみること」だったり、「静かに座って精神統一すること」だったり。本当にシンプルに、簡単な事ひとつひとつの積み重ねなんです。


Why Yoga?
なぜ、私たちは今ヨガをするのか?

ストレスって実はいいやつ

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ヨガにおいて、「ストレスとは、スピードである」とする一説があります。社会変化の速度が年々どころか日々めまぐるしくて、色んな情報が飛び交っています。直接的に自分が関係する情報だけでなくても、勝手に外で飛び交っている情報に意識が惑わされることもしばしば…なんて。

もともとストレスは「悪」ではなくて、ただの「反応」なんですね。ストレスを大きく2つに分けたら「ユーストレス(役立つストレス反応)」と「ディストレス(役立たないストレス反応)」に分類されます。

ここで大事なのが、ストレス(反応)のもとになるストレッサー(原因)は常に「ただのストレッサー」です。どうストレスを感じる(反応する)かはあなた次第だということです。

例えば、シャワーを浴びる行為そのものってストレッサーなんですけど、あなたが気持ちよく感じるからユーストレス(役立つストレス反応)です。対人関係でも、「どう感じるか」ってすごい大事ですよね。

ヨガにおける心のコントロール・テクニックは、すなわち現代社会に溢れる膨大なストレッサー(原因)に対して、上手に反応していくテクニックとも言えます。



生活習慣病への予防として、療法として効果的

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ヨーガは平等の境地である

これが、先ほどの定義とは別に、有名なヨガの定義のひとつです。心と体のバランスを保つこと、そうすることによって生活習慣病の予防に繋がります。

原因がハッキリとしない病気において、「ストレス」や「そのストレスに対する発散方法」が主な原因として考えられます。体が疲れているのに、心が刺激を求めてしまったり、その逆も然り。前述したとおり「ヨガを使ってストレスをうまく対処しよう」とすればよいのです。心と体のバランスを常に保ってあげる為の手段、それがヨガです。

モヤモヤする時はちょっと体を伸ばしてみたり、疲れちゃった時は仰向けでくつろいでみたり。「やりすぎず」「やらなすぎず」のバランスって、とても大事なんです。仏教でも「中庸が大事」っておっしゃってますね。



実は体を動かしているだけじゃないんです

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ヨガと言えば、あのヨガっぽいポーズ。でもこのポーズを取る時って、体を動かしているだけじゃなくて、「自分と向き合っている時間」なんですね。

「足を広げて、腕を上げて―」って、自分の体を意識して動かさないといけないですし、「たくさん息を吸う」って呼吸に意識を集中しなくちゃいけないんです。

仕事の失敗で過去の事を後悔しちゃったり、将来の不安で未来の事ばかり考えちゃったりして、“心ここにあらず”の状況になったことはありませんか?

マットの上に立つだけでも、胸の前で手を合わせるだけでも、意識って“今ここ”に戻ってきたりしてくれるものです。



Yoga for....
おっ、ヨガって現代社会に
めっちゃ応用できるんじゃない?

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ここまでの説明で「ヨガの可能性なかなかヤバくない?」と思ったあなたは、ヨガでもうすごいところまでいっちゃいそうですね。

前項でご紹介したように、ヨガが私たちのもつ各要素を向上させてくれると、上図のように各分野に当てはめることができます。

ビジネスパーソンを例にして説明すると、もちろん体が一番の資本ですよね(肉体/食物鞘)、そしてやる気が大事になってきます(意志/生気鞘)。チームで働く能力が必要で(感性/意思鞘)、ここぞという時のタイミングを逃さぬ判断力がキーです(知性/理智鞘)。どんどん昇進していくあの人はプラスアルファで、他の人が思いつかないようなアイデアを持っていたりします(創造/歓喜鞘)。

「あれ、生活習慣病の予防にもなって、仕事にも生かせるヨガって、一石二鳥で最高じゃない…!?」って、思いませんか?



How to do Yoga?
実はシステマティックなヨガ

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ヨガって、実はしっかりとした手順があります。瞑想状態を得る為、さらにはその先の三昧/自由を得るためのシステムなのです。

ざっくり説明しますと、意識を外側かたどんどん内側へ向けていくプロセスです。「1.社会規律」って、自分の生活する社会のことなのですごく外側にありますよね。その次に「2.個人規律」で、自分の生活の事になる。そして「3.座法」で自分の体に意識を向け、「4.調気法」で呼吸に、「5.制感法」は感覚器官に、「6.精神集中法」から先はもっと自分の意識に―。

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なので前半の5ステップは「外側のヨガ」と呼ばれ、後半3ステップは「内側のヨガ」と呼ばれます。まずは自分の身と身の回りを整えてから、心を整えることへシフトしてゆくのです。

そんな8つのステップをこれから順番に解説していきます。



①Yama
社会のルールを守ろうぜ
自分にいいことあるから

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有名なのは一番上に記載されている「非暴力」ではないでしょうか。これはかの有名なガンジーさんが実践して世界を変えましたね。

これらは、分かってはいるけど、ついついやってしまいがちな私たちの悪しき習慣です。あらためて「しない」と心に決めることにより、結果として、自分自身の為になります。「しない」ことが目的ではなく、「結果」を得る為に、社会規律を守るだけです。

他人の事を考えて行動するということは、全て自分に返ってくるんだよ、それも良いように、とヨガは教えてくれます。

さらに

どんな生物に対しても、どんな身分の人に対しても、どんな場所でも、どんな時でも、どんな状況でも、これら(5つのこと)を守ると誓い、実践するのがYamaである

と説いています。

この最初の1ステップ目をしっかり実践するだけでも、揺るがない心の土台が築けちゃいそうですね。

ちなみに上図右側に書いてある結果を得るには「12年守ると結果を得られるぞ」と言っております。今日から忍耐ですよ、忍耐。



②Niyama
個人のルールに徹しよう
自分磨きの重要性

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他人の為、さらには自分のために社会規律を守ることが出来たら、今度はさらに自分に行動に焦点を当ててゆきます。

前項の社会規律が「しちゃだめなこと/Do not」だとしたら、この個人規律は「すべきこと/Do」です。

「常に清潔に」
心の清潔さを保つために・頭の中をスッキリさせておくには、まずは部屋も体も綺麗に。

「足るを知り」
今の環境・状況に満足できるか。そうすれば困難な事も乗り越えられる。

「努力を続け」
意志を養い、自分を律する。

「勉学に励み」
聴き、考え、熟慮し、日常的に瞑想をする。

「清きを保つ」
自分の力だけで生きているのではないことを感じ、自然の摂理に身を任す。

のが2ステップ目のNiyamaです。
ここまでの2ステップを実践するだけで、相当な修行僧感がでてきましたね。



③Asana
兎にも角にも、まずは体の健康だよね
綺麗にビシッと座れる?

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3ステップ目でようやく自分の肉体に意識を向けてゆきます。
いわゆる「ヨガのポーズ」です。

このヨガのポーズ、一応定義みたいなものがありまして。

座法(アーサナ/ポーズ)は快適で、安定しているものである

「なじゃこりゃ凄い」と思う難易度が高いポーズが目立ってしまうので、他フィットネスと同じように「発散型」のイメージが付きがちなヨガのポーズ。

ですが、体を快適な状態で安定させ続けるのが目的であり、「温存型」のイメージのほうが伝わりやすいかもしれませんね。デスクワークも立ち仕事も、「なかなか疲れない体」の方が効率上がりませんか?

色んなポーズがありますが、つまるところ色々と動いてみて「体を安定させたい」んですね。

そして、安定した結果どうなっていくの、と言いますと、

体が安定すると相反する二極のものには悩まなくなる

と、説かれています。

「好き」とか「嫌い」とか、「気持ちいい」「気持ち悪い」とか、そういったものに悩まされなくなっていくよと、されているんですね。

つまり肉体を中心とした環境の変化(暑いとか寒いとか、分かりやすいかもしれないですね)にいちいち悩ませることが減っていくんだよ、ということです。


では、上図の3種類のポーズについて少し詳しく見ていきましょう。

強化
これから先のステップで感覚をコントロールしたり、瞑想したりするのですが、頑張って精神統一してる時に足がしびれちゃったら、もうそれだけで集中力が途切れちゃいますよね…

ということで、まずは強靭な体づくりです。
写真で見かけるヨガの凄いポーズも全て「体づくり」の為の実習です。

なので「このポーズ凄いでしょ!」とドヤ顔するのが目的ではなくて、「瞑想の為に何時間、何十時間とずっと座っていられる体づくり」が真の目的です。

「ヨガと言えば凄いポーズ!」みたいに欧米でめちゃくちゃウケたのも経緯があるのですが、いつかどこかでお話します。そして、個人的にはInstagramで見る皆さんのポーズが凄くて、肉体美も相まって美しいので「#asana」とか「#yoga」で検索するのお勧めです。

リラクゼーション
強化と一緒に実習すべきは、もちろん体を緩めることです。
柔道でも「柔よく剛を制す」と言いますね。

あぐら、かけますか?正座、ちゃんと座れますか?

椅子生活で地べたに座る機会が減っちゃって、意外と座れないんですよねぇ…

【瞑想座位】
瞑想するためにとてもとても重要なヨガのポーズです。
しゃんと背筋を伸ばして、両鼻からゆっくり呼吸するだけでとても気持ちいものですよ。

心は姿勢を表しますし、姿勢も心を表しますね。

ヨーガ教典ですごい有名なものがあるのですが、その教典で「もうヨガのポーズはこれさえすればいいよ!」とゴリ押ししているのが瞑想座位です。

行者さんたちからしたら「解脱」するために長時間の瞑想が必要だったので、ゴリ押しも納得です。ですが、このご時世、かわいいヨガウェアを着てオシャレなヨガスタジオに行ったのに座るだけで60分終わっちゃった…って嫌ですよね…



④Pranayama
体を活力で満たそう
呼吸の方法で気持ちも変わってくるよ

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さぁ、体がしっかりと緩み、しっかりと鍛えられたら、次は呼吸に焦点を当ててゆきます。

姿勢が快適で安定している時、呼吸の流れは静かにゆったりとなる

呼吸と体、呼吸と心の関係性については詳しく説明しなくとも、皆さんがご自身の体にてたっぷり経験されていると思います。

寝る前とか、心も体も落ち着いている時ってお腹でゆったりと呼吸しています。しかし、疲れたら肩でハァハァと呼吸しますし、怒っている時も肩を揺すりながら息を荒げています。

呼吸のコントロールとは、プラーナと呼ばれる生命エネルギー(僕たちの体の中だけではなく、自然現象全てを司るエネルギーとして考えられています)をコントロールすることであり、プラーナがコントロールとはつまり心のコントロールができるということである、と説いています。

特にヨガの中でも「ハタ・ヨーガ」と呼ばれる大事な基礎ヨガでは、

Vayu(空気とプラーナ)が体内に留まる限り、それを生命と呼ぶ

としており、長く強く生きる為に、呼吸をたくさん吸うことや、その吸った空気を体内にしっかりと留めること(止息)を重要視してきました。

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次に、生理学的に「呼吸をコントロールすること」を見ていきましょう。

「ストレス反応は悪ではないよ」と先述したように、まずは過剰にストレスを感じない・反応しないようにするには?の手っ取り早い手段として呼吸があります。

ストレス反応で有名なホルモン「アドレナリン」ですが、このアドレナリンを分泌する副腎皮質に指令を出す大元は「視床下部」です。

自律神経系と関わっているんですが、交感神経と副交感神経を「調えるぞ…!」と思ったところで、コントロールってできないですよね。

ゆっくりと呼吸をすれば副交感神経が優位になってくれたり、短くフッ!フッ!と呼吸すれば交感神経が優位になるように、呼吸を使って自律神経系のバランスを調えることができます。

そうすると視床下部の働きも恒常性が保たれて、「勢い余ってアドレナリン出しすぎちゃった」とか、「アドレナリン出す指令をするのもめんどくさいわ…」っていう波/アンバランスさが解消されてゆくのです。



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「お、ヨガっていいじゃん、ちょっと初めてみるかぁ」と思われた方は、ここまでの内容で十分効果が期待できます。

この先を読む前にまずはお近くのスタジオへゴーですよ、GO。

「ここまでの内容は知っているし、なんとなく分かる。私はもっと深いところまで知りたいのだ…!」という方に向けて、以下も続けて説明してゆきます。お手柔らかに。

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⑤Prathyahara
神様は感覚器官を外に向くように作ったんです
それ、引っこめられますか?

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ヨガ実習の中でも「わ、分かりづれぇ…」リストTOP5くらいに常にいると思っています、このPrathyahara/プラタャハーラ(カタカナで読みやすいようにプラティヤハーラってよく発音されますね)。

感覚を制御すると書いて「制感」。どういうことかと言いますと、

五感に振り回されることなく、「感覚の動き」にも「対象物」どちらに対しても冷静で(心静かに)いられること

何かしらの対象があり、それに対する「感覚」があります。その感覚をどう操る/判断するかは私たちの「知性」。そして、「知性/理智」によって揺れ動くものは「心」。

なので、この制感法、「体と心の架け橋」とも言われておりまして、このヨガのシステムの中でも大事な橋渡し(体/外側から、心/内側へ)のパートです。

その為にもまずは自分自身で感覚器官をしっかり認識・操れないといけません。

「心を静かに見つめてください」と言われて心に意識を向けてみても、「自分の心、めっちゃざわつくやん…!」となった経験ございませんか?

心を静かにする手っ取り早い方法として「耳」とか「目」を使うことが挙げられます。例えば、静かに座って「外の音を聴き続ける(雨の日なんてすごくお勧めですよ)」ことや、「目の前一点をボーっと見つめ続ける」ことによって、自然と心のざわめきが落ち着いてきたり。

この制感テクニックが身に付くと、「ヨガってダイエットにいいやん…!」となるのですが、以下に例を挙げてみます。

イライラしている時に暴飲暴食した経験はありませんか?嫌なことがあった日には酒に溺れた経験はありませんか?この気持ちを上手にコントロールする技法を学ぶことができるのがヨガです。

ヨガでは、人間の器官を10頭の馬として考えてきました(*1)。これらの諸感覚器官の働きをしっかり制御する手段がヨガです。

想像してみてください、あなたの目の前には1頭の馬がいます。彼の名前は「食欲」。そしてあなたの手には手綱があります。彼を制御するためには手綱は丈夫でないといけませんし、彼をうまくコントロールするためにはあなたは手綱の使い方を知っていなければなりません。

苦しいエクササイズを何日も続けて痩せることができても、そのあとに食欲が抑えられずリバウンドを繰り返した経験はありませんか?「ただ今の生活に運動を足す」のではなく「今の生活を変える」ことができれば、一度さよならしたお腹の脂肪と再会する日はなくなるのです。

正しくヨーガを行えば、自然と生活における考え方が変わっていくでしょう。それにともない自然と体も変わっていき、内面から健やかに、美しくなっていくのです。こんな感じで、ヨガがもたらす効果って、「健康」にとどまらず「仕事」や「恋愛」など多岐にわたるからなのです。

*1
【5運動器官】「手」「足」「口」「生殖器」「肛門」
【5感覚器官】「視覚」「聴覚」「嗅覚」「触覚」「味覚」
(カタウパニシャッド - BC2,000)



⑥Dharana
「集中すること」
大事だけど難しいこと

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さぁ、規律(生活習慣)が整って、体と感覚が調ってきたら、お次は「心」に焦点を当ててゆきますよ。

子どもの頃から何かにつけては「集中しなさい」とか「集中力が足らんぞ」とか、分かってはいるけど集中するのって、難しいんですよねぇ…

最初にクリアにしておくべき、この精神集中状態の定義ですが、

心(意識)が一つの対象物に定まっている状態

です。

この次のパートに控えているのは「瞑想」なのですが、このステップでしっかりと意識を対象物に向けなくてはならないのです。

大事なのは「心/意識を特定の対象物に向け続けること」です。

心は動くものですし、それと同様に「考えは流れ続けるもの」としてヨガは解説しています。

この流れを理解し、流れる先を一点に集中させてあげるのです。

ここでご紹介したいのが「昔の時代の子どものしつけ方」です。

イライラしていたり落ち着きがない子どもに対して、「絡まった毛糸を真っ直ぐに解いて、丸め直しなさい」と指示する祖父・祖母がいたご家庭があったそう。

まさにこれこそ、イライラして流れが乱れている状態を「毛糸に集中させる」ことによって、毛糸の絡みだけでなく頭の中の流れもスッと一つに戻してゆくのです。

こういうことって日常生活の中にもたくさん転がっていますよね。
・書道、華道
・料理
・掃除
・皿洗い
・アイロンがけ
etc.

個人的にアイロンがけは精神を集中させる修行だと思っているので、大好きな家事のひとつです。



⑦Dhyana
「瞑想は無になること?」
いいえ、ハイパー集中モードのことです

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そしてそして、皆さんお待ちかね。
ヨガといえば…!の「瞑想」パートです。

かの有名なアップル社のスティーブ・ジョブズ氏も実践しており、経営者の方も非常に興味が湧く分野の一つではないでしょうか。

「心を静かに落ち着かせる」ことだけが目的でなく、きっとジョブス氏も、その稀る創造力を高めるために「意識の拡大化」の手段として瞑想を用いていたのではないかなと考えます。

瞑想の定義として

意識を一点に留め続ける

とあるのですが、加えて

意識が一つの不断の流れになっている状態

としています。

このポイントが、前ステップの「精神集中法」との違いなのですが、下図で説明します。

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「精神集中状態」とは、いわゆる意識が一点に定まっている状態なのですが、雑念がチラホラと入ってきます。なので、実習する際の感覚としては「精神を集中させる何分かの中で、何割かくらいは同じことに意識が向いていた」と感じます。

一方、「瞑想」になると意識が一点に定まっているだけでなく、雑念の入る余地がない程に意識の流れが一つなので、「瞑想しようと目を閉じて、次に目を開けた時には○○分/〇時間も経っていた…」という感覚です。

巷でよく耳にする「瞑想って無になることだよね」という解釈は間違いではないですが、正確には「一か所に留めている意識が不断の流れになっている状態」のことです。つまり「時間感覚が無くなるくらい、同じことをずっと考えている状態」とも言えるでしょう。

この不断の意識の流れをつくるためには、「快適で安定な座法をとれる肉体」と、「静かで落ち着きのある心」が必要なのです。

瞑想がさらに深まっていくと、「瞑想しよう」と思って瞑想するのではなく、常に瞑想しているかのような瞑想状態(三昧/サマーディ)が訪れるとヨガは説いています。



⑧Samadhi
境地、三昧
ここを目指してヨガをしているんです

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三昧って言葉、ちょっと分かりにくいので置き換えてみます。

◆ビジネスパーソンにとっての「創造性」

◆アスリートにとっての「無我の境地/ゾーン」

いずれにせよ「凄い!」と言われる人たちや、そう思われるパフォーマンスに深く関わっているんだろうなぁ、と認識していただければと思います。

瞑想が深まると到達されるとされるこの「三昧」ですが、さらにこの三昧の中でも多くのステップがあります。その行き着く先がいわゆる「無」なのです。

無という表現も、「なーんにも無いよ」という状態ではなく、「意識の拡大化(宇宙まで意識できると全人類を愛せちゃいそうですよね)」とか、「執着のない状態(途中から『瞑想するぞ』って思うことも執着なので、そう思わずとも瞑想状態でいれること。とされています)」です。

究極の「何もかも手放した状態」ですね。

「瞑想」と「三昧」の違いを図に表したのが下図です。

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例えば、苦悩の原因って
・無智
・好き
・嫌い
・自我
・生への執着
上記の5つがヨガの中では主とされているのですが、そういうのも全て手放しちゃう。(この苦悩・ストレスの根源について、いつかまたnoteに書きたいなぁと思ってます。色々面白いんですよ。)

そうすることによって、真の自由を得られるとしています。本当の本当にストレスフリーな状態ってこのことなんでしょうね、きっと。

ヨガの教典って、何千年も前から「人の心の状態」を説いているのですが、それが現代人にも当てはまっちゃうのが、いやはや凄いことだなと。


マズローさんの欲求5段階説ってご存知ですか?

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僕たちの欲求の段階をピラミッドとして示したものなんですけど、ピラミッドの下(土台)がしっかりしていないと上にはいかないよね、という考え方です。

最初の4段階って足りないものに対する「欠乏への欲求」なんですね。そして欠乏がなくなって、ようやく「成長への欲求」が充たされてゆきます。

マズローさん、亡くなられる直前に「あぁ、我々の欲求に5段階にとどまらず、実は6段階目があるんじゃないか」っておっしゃったんです。

上図に書いてあるような「至高体験」って、いわゆるヨガでいうところの「三昧/サマーディ」なんじゃないかなって考えられます。

ヨガの実習って、先述しているように外側からどんどん自分の内側へ意識を向けていくんですけど、本当の自分とか、自分の中の本質を理解するための手助けになってくれるんです。



最後に

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科学の発展と共に、色んな技術が出てきて、それこそAIの出現なんて、僕たち人間の在りようを変えちゃうくらいのインパクトがあります。

テクノロジーが進化すれば進化するほど「生き方」について考える人が増えているんじゃないかなぁ、とか思ったりしますが、それはまぁ昔からたくさんの人びとが考えてきたことですよね。言わずもがな。

インドで発祥したヨガの教えが、いろんな形(ホットヨガや、ハンモックヨガ等含め)で多くの日本人の方々に届いている現在について、なんだかとても感慨深いなぁと思います。

なんだかこう、色々議論されることもありますが、僕はヨガに関しては正解はないと思います。
より多くの人がヨガを楽しめて、より多くの人が人生を豊かにする手段の一つとしてヨガを活用する世の中になればいいな。そう願っております。


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平岡充乃介のこと
横浜にあるプライベートヨガスタジオのこと
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