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世界で行われるヨガの研究。ダイエットにおけるヨガの可能性とは。

ヨガとダイエットはどう関係しているのか

そもそもヨガってなに?

 日本では年々ヨガ人口が増え、それにともない教室やスタジオの宣伝を目にする機会、ヨガを始めた知り合いが増えているのではないでしょうか。こんな話を大昔のヨーガ行者が聞くとびっくりするでしょう。なぜなら、ヨガというものはヒマラヤ山中で独り修行に励むヨーガ行者によって行われてきたからです。そして行者たちは自らのヨーガ修行を他の人には見せませんでした。日が昇る頃には朝の修行を終え、日が沈むころにまた夕方の修行を行う。それらは全て自らが深い瞑想(三昧)に入るためなんですね。行者たちによって自分のためだけに行われてきた修行法が、今やこうして全世界の人によって行われるようになったのです。

 最近では「ホットヨガ」と呼ばれるものが多く、「ヨガとダイエット=体を動かして汗をかく」という印象を持たれている方が多いかもしれません。間違いではありませんが、それでは「エクササイズとヨガの違いはなに?」となります。Yoga(ヨーガ)とは語源であるサンスクリット語のYuj(ユッジュ)「結びつける」という意味であり、伝統的なヨーガとは「人間の意識と神様の意識を統合させる」ための古来の技法です。実は「身体」ではなく「意識/心」に焦点を当てているのがヨガなんですね。ヨガって実は、心の科学なのです。

ダイエットとの関係性

 イライラしている時に暴飲暴食した経験はありませんか?嫌なことがあった日には酒に溺れた経験はありませんか?この気持ちを上手にコントロールする技法を学ぶことができるのがヨガです。

 ヨガでは、人間の器官を10頭の馬として考えてきました(*1)。これらの諸感覚器官の働きをしっかり制御することがヨガであると言われています。想像してみてください、あなたの目の前には1頭の馬がいます。彼の名前は「食欲」。そしてあなたの手には手綱があります。彼を制御するためには手綱は丈夫でないといけませんし、彼をうまくコントロールするためにはあなたは手綱の使い方を知っていなければなりません。苦しいエクササイズを何日も続けて痩せることができても、そのあとに食欲が抑えられずリバウンドを繰り返した経験はありませんか?「ただ今の生活に運動を足す」のではなく「今の生活を変える」ことができれば、一度さよならしたお腹の脂肪と再会する日はなくなるのです。

 正しくヨガを行えば、自然と生活における考え方が変わっていくでしょう。それにともない自然と体も変わっていき、内面から健やかに、美しくなっていくのです。筆者がヨガをダイエットにおすすめする理由は、ヨガ実習がもたらす効果が「健康」にとどまらず「仕事」や「恋愛」など多岐にわたるからなのです。

*1【5運動器官】「手」「足」「口」「生殖器」「肛門」【5感覚器官】「視覚」「聴覚」「嗅覚」「触覚」「味覚」(カタウパニシャッド - BC2,000)


世界で行われるヨガの研究

 何度も「ヨガは体にいいから」と言われても、よく分からないものは疑ってしまいますよね。「なにがどんなふうにいいの?」と。

50年ほど前から始まったインドのヨーガ研究機関を中心に、今では欧米諸国でもヨーガに関しての研究・調査が行われています。ヒマラヤ山中の厳しい環境下にも関わらず、「薄着のヨーガ行者がなぜ健康なのか?」「なぜ一日に何キロも移動することができるのか?」と疑問を持った研究者が「もしかしてヨーガの技法にその秘密が隠されているのではないか?」と思い研究が始められたのです。

では、どのような効果があるのかを過去に発表されている論文から少しご紹介します。


気管支喘息

M.V. Bhole、N.S. Vahia、K.N. Udupa、R. Nagarathna、H.R. Nagendraらにより、「喘息を治すために可能な治療の数々を試したことのある患者が、ヨーガによって著しく改善した(殆どの人が薬をやめたり、量を減らすことができた)」ことが報告されています。R. Nagarathna博士とH.R. Nagendra博士の論文では179名のうち152名の症状が改善。

方法:クリヤー、アーサナ、プラーナーヤーマ、瞑想


高血圧

Patel C.H.はシャヴァ・アーサナ(屍のポーズ)とバイオフィードバックによって収縮期の血圧が大幅に下がったことを発表しています。Stone R.A.とDe Leoの研究では自然な呼吸を意識的に数えていく訓練で、高血圧患者の血圧の大幅な降下と血漿中のドーパミン・ベータ水酸基値の減少が見られた(交感神経の働きが穏やかになった)と発表。他にもDatey K.K.、R. Nagarathna、H.R. Nagendraらが研究論文を発表しています。

方法:呼吸法、アーサナ、プラーナーヤーマ、瞑想、ヨーガ・ニドラー


糖尿病

Varandani N.による研究の発表では286名の様々な程度の糖尿病患者の25%が正常な血糖値に、27%が血液と尿の科学組成が改善されています(何も効果のなかった25%は主に子どもの頃からの糖尿病患者)。他にもK.N.Udupa、R. Nagarathna、H.R. Nagendraらが研究論文を発表しています。

方法:(ハタ・ヨーガ)クリヤー、(ハタ・ヨーガ)アーサナ


不眠症

Miskiman D.E.、Woolfolk R.L.らによって瞑想が不眠症改善に効果がある(眠りに入るまでの必要時間が短くなった)ことが発表されています。

方法:TM、瞑想

ご存知でしたか?ご紹介したこれらの論文は古いもので既に50年前から発表されているんです。ヨガブームが起こったのにも、現代がストレス社会と言われるようになり、心身のバランスを崩した疾患が増えたという理由があったんですね。他にも心臓疾患、アレルギー性鼻炎、慢性肺疾患、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、胃酸過多、月経異常、男性生殖器障害など、さまざまな疾患に対してのヨガの効果が研究されています。

「ダイエットを始めよう」と思った理由はいくら小さなものだったとしても、体重を減らすと同時に病気になる可能性も減らしたくはありませんか?


今からすぐに始められるヨガ

お腹を使って呼吸する

 皆さんは一日の内で自分の呼吸を意識することは何回あるでしょうか?きっと鼻詰まりした時に「あれ、自然な呼吸ってどんな感じだったかな…」と思われる方も多いのではないでしょうか。呼吸は私たちの命を支えてくれているだけでなく、私たちの心を浄化して、感情の動きを静め、心身内部に活力として流れているエネルギーも呼び起こしてくれます。

 運動した直後に、疲れて胸でハァハァと呼吸したことはありませんか?さらにハードな運動をしたあとは膝に手をつき、肩を上下に動かしながらゼェゼェと呼吸したことはありませんか?体が疲れていくにつれ、呼吸する時に動かす部位が上に移動していくんですね。長時間机の前に座っていると、気づかないうちに背中が丸くなり、お腹を使って呼吸がしづらくなるため、体がぐんと疲れやすくなってしまうのです。

 腹式呼吸の利点は、普段から腹部の筋肉を使える(とても軽い腹筋運動を毎日何百回、何千回もすると考えてみてください。呼吸しているだけでもお腹が引き締まりそうでしょう?)だけではありません。酸素をたくさん取り込むことができ、いらなくなった空気を体の外にしっかりと出すことができるのはもちろん、何が起きても「一呼吸おける」ようになります。恋人の一言にすぐに腹を立てていませんか?部下の失敗にすぐにカッとなっていませんか?そしてその後に自分の言動に後悔したことはありませんか?意識して呼吸を行えるということは、自分の心を落ち着かせるために「いつでも深呼吸ができる」ということです。生活するうえで余計な「怒り」の感情をうまくコントロールできれば、仕事でもプライベートでも人付き合いが円滑になりますね。

 意識しなくても体が勝手に呼吸してくれるからといって、放っておいてもあまりいいことはないんですね。現代の飛行機が「自動操縦モード」で目的地まで到着できるようになったといえ、パイロットが常に天候や気流の「異常」を見つけて「手動操縦モード」に切り替えるように、私たちも呼吸に意識をおいてあげる必要があります。私たちは内臓をコントロールすることはできませんが、呼吸をコントロールすることはできます。脳にたくさん酸素を送ってあげることで食物の消化、栄養の吸収、脂肪の燃焼、免疫力の向上等を促すことができるんです。

 「腹式呼吸を意識する」こと、それだけでも立派なヨーガの修行なんですね。

腹式呼吸のメリット

・お腹周りの引き締め、姿勢の改善

・感情がコントロールしやすくなる

・内臓機能の活性化


朝目が覚めたとき、夜眠る前に

 さて、誰でも簡単に始められる「腹式呼吸を意識化する」方法をご紹介します。朝目が覚めたとき、夜にベッドに寝転がったときにおススメです。もちろん、床の上にラグやタオルを敷いて、その上で行うのがベストです。

① 仰向けに寝ます。脚を少し(1m程度)広げて、足先はやや外向き(がに股)でリラックス。両腕も両腿から少し離れた場所におき、両手の平は天井に向けて肩から力を抜きます。やさしく瞼を閉じます。(シャヴァーサナ)

② 体が床(ベッド)に沈んでいくのを感じます。そして上下する自分のお腹を観察します。自分の呼吸が規則正しくなり、ゆっくりしてくるのを意識します。(目安:5分間)

③ 鼻から息を吸ったときにお腹が膨らんでいきます。鼻から息を吐いていくときにお腹がしぼんでいきます。自分の自然な呼吸とお腹の上下の動きが連動しているのを意識します。(目安:5分間)

④ 次に、息を吸う時には全身にエネルギーが満ちていく(綺麗な酸素で満たされる)のを感じ、息を吐くときには全身が床(ベッド)に沈んでいく(イライラや疲れが空気と一緒に出ていく)のを感じます。体がだんだんと軽くなっていくのを感じます。(目安:5分間)

 朝に行えば目がすっきりと覚め、今日も一日頑張ろう、楽しもうという気持ちがみなぎってくるはずです。そして夜に行えば、一日の疲れが体から抜けていき、ぐっすりと眠ることができるでしょう。「自分の呼吸を意識する」ことが大事です。この呼吸(リラックス)法は、特に時間が限られているサラリーマンの方々におススメです。

ヨガが気になってきたあなたへ

 今回の記事を読んでみて皆さんのヨガに対する見方は変わったでしょうか。もっと詳しく書きたいこと、まだまだご紹介したいこと、たくさんあります。そして今ではたくさんのヨーガ関連の本が出版されていますし、多くの方がヨガに関するブログを書かれています。なにが良い・悪いはないと思います。皆さんが「これいいな」と思ったヨガの技法や智慧を実際に試されてみて、「あぁこれはよかったな」と思うものを続けていかれればよいのではないでしょうか。


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【書いた人】
平岡 充乃介
ヒラオカ シュウノスケ

ヨーガ療法学修士/ヨーガ教師/プライベートヨガスタジオ経営


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平岡充乃介

広島生まれ。南インドの大学院でヨーガ療法学修士課程を修めました。サイエンティストな雰囲気を醸し出したいヨギーです。ヨガとかインドっぽいことを書いてます。続きはwebで www.studio-sahana.com/home

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