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果てしない黒の向こうへ。

これは私の全て。
そして心からの願いだ。

挨拶【写真展を終えて。】

はじめまして。あるいはまた会いましたね。
彩藤峻(さいどうしゅん)です。

今回は4月25日より30日までの渋谷ルデコで開催された写真展壁に参加し致しました。
まずはじめに主催してくださった別所先生。並びにこの写真展の運営の皆様。そしてお力添えいただきました出展者の皆様。最後に来てくださった方々。心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。
マジで超絶楽しかったです。ほんとに今回参加できたこと誇りに思ってます。次回絶対また参加したい。ひっついてでもどこへでも行きます。

開催された壁展の告知画像

主催者:文学研究者 別所隆弘先生のInstagram



今回はこの壁展の振り返りをしたくて。そして完成した私の作品の展示内容をここに掲載し、内容、解説と経緯を書いていきます。


以下、スマホの方は画面を横にして画像表示するとフォトエッセイの表示が見やすくておすすめです。

展示作品

展示全体
フォトエッセイと解説ノート
フォトエッセイ【果てしない黒の向こうへ。】

エッセイ本文

解説、後書きノート。


解説、感想ノート


経緯、解説

この作品を作るに至った経緯。

写真展の開催が決定された当初、私は非常に悩みました。
「壁」
それが今回私達に与えられたメインテーマでした。
各々それぞれの感じる壁。

こちら我らが別所隆弘先生の記事の言葉をお借りいたしますと

コロナ禍の戒厳令の中で世界中の人々が見つめ続けた家の中の「壁」、人と人が出会う時にその邂逅を阻む心の「壁」、あるいは暴風が吹き荒れる日に我々を守る「壁」、我々の生活の中に立ち現れては消え、時に我々を抑圧し、時に我々を守る様々な「壁」

出典:https://note.com/takahirobessho/n/n9e1416088d17

とのように、特定の物理的な壁だけでなく様々な「壁」としての側面を持つあらゆるものをテーマとして取り扱ってよいというのが今回の主題でした。
胸が高鳴りました。私はこうした挑戦めいた取り組みが好きなのです。


私にとっての壁。それはいの一番に思いつきました。
最も私がしんどい時期に形成された「自らの内に築かれた心の壁」
この人生で感じた「壁」にあたる最も大きな事例はこれでした。


では何に私は悩んだのか。
この暗い内面を人に晒したくないという気持ち。
それを人に見せることで暗い気持ちを与えてしまうという不安。
私が人に与えたい、見せたいものは明るい気持ちだという事。

これらを抱えたことで、私は他のテーマを考えざるを得なくなりました。
しかし困ったことに私の内面はこうした時間を長らく歩んだためか非常に
内向的な思考が核になっていました。出てくる案はどれもこれもとてもマイナス印象を与えるものばかり。

テーマ発表から少し経ち、展示未経験者の人々は運営さんのご厚意で展示に向けた講座を受けることができました。私もその一人です。
その際受けた言葉として私に響いたのが
「お客さんにどんな顔で帰ってほしいかを考えて展示をする」
というものでした。

私は小さい頃からずっと、人を笑顔にすることへの強い執着がありました。
よって私は当然笑顔で帰ってほしいという願いが強まる一方、出てくる案は負の感情に支配されたものばかりでした。
時間は経過しました。テーマを決めなくてはいけない。私はマイナステーマの羅列に溺れていきます。

後日、運営さんは私達に向けて相談会を兼ねた講座を開いてくださいました。
その際私はこの心の内を吐露する事となりました。

僕、白状すると超根暗なんですよねぇ。そのせいかどうしても負の感情がベースとなったテーマしか思い浮かばなくて。。。私は人の笑顔が見たいはずなのに。僕は人に対して希望への影響を与えたいですのに…笑笑

正直いままで誰にもこうした言葉を口にしたことはありませんでした。
自分の内面絶対死守。何が何でも見せない侍にて候。長男なので。
そも人生において私は相談されることはあれど相談することがほとんどありませんでした。それも自分の心に関しては誰にも明かさない道を歩んできました。家族にすらです。
しかし不思議とあの場において私はあっさりと吐いちゃったんですよね。
本気でテーマに悩んでた事も事実でしたが、なんかそれを口にしてしまっても大丈夫じゃない?みたいな、妙な安心感があったんです。

これに対し運営であるYuki Okuboさんはこう答えました。
「彩藤さんのような視点からじゃないと見えないものもあると思います。
だから、同じような気持ちをもつ人々に向けた、彩藤さんの視点だからこそ発信できる応援歌のようなテーマはどうでしょうか。」

この言葉にハッとしました。
なるほど。光無き世界を歩む人には闇の渦中で手を引いてあげる存在が必要なのだと。かつての自分がそうして欲しかったようにだ。私は偶然にもふらふらさまよっているうちに自身を導くことができたが多くの人々はそうではない。
苦しい時を歩む人に寄り添える私でありたい。それが私の根源であることを思い出しました。ありがとうYukiさん。

僕はかつての絶望を世に放つと決意した。



写真展壁 ディレクター: Yuki Okuboさん Instagram



テーマが固まってから。

テーマが固まったとき、書くべき文章からして当時への心の揺り戻しは必須でした。あの頃の絶望に身を浸しその中で湧き出る気持ちを書き綴らねば伝わらない、出て来ない言葉があると感じたからです。
それから作品ができるまではほとんどの交友をに極端に減らしました。

改めて感じましたが交友や会話の断絶は心の壁をぐんぐん育んでしまいますね。内面に蔓延る黒いものが確かに膨らんでいくのを感じました。
私は当時の記録の振り返りを行いました。メモ、写真、メール等。中には弁護士さん、警察の方とのやりとりや●●未遂の画像等、私にとって本当に苦しいものを掘り起こす事となりました。濃縮された黒い期間を短時間で味わうことを余儀なくされた私は尋常ならざるダメージを受け続けていました。
しかしその中で私は一つの発見をしました。
既に展示すべき作品撮影のほとんどを終えていることに気づいたのです。

それらを撮っていた当時の私は写真を始めて1年程といった頃合いです。
当時私は絶望の中にありながらも写真に魅力を感じ、常に携帯し撮影していました。
ただ、その頃の私は世に発表することはおろか、SNSに上げることすらしない暗い写真ばかりで。無我夢中でギリギリを生きる中で撮っていたそれらの写真を見返すとかつての私が抱えていた黒い気持ちが蘇ります。
3年越しの自分への、呪いの手紙みたく感じました。まさかこんなところで再会するとは。
今回新たに撮影したのは、考えをまとめるために登った渋谷スカイでの鶴の写真のみでした。

本書で伝えたい願いを考え、まとめた場所。渋谷スカイ。


過去の痛みに苦しめられ、書の完成が近づくにつれ負の側面の自分はみるみる大きくなる。
しかし私は、今この闇に立っている人々。あるいはこれから大きな闇に飲まれてしまう未来の人々を思い出す。
かつての私のような存在にこれを押し付けて闇の底から引き上げてやる。という燃え滾る信念が私を奮い立たせた。
こうして文章が完成した。

ちょっと燃え尽きかけた。へろへろで苦しかったけどちょっと楽しかった。いや。楽しかった。

レイアウト、展示に関して。

今回のレイアウトは場所の割り当てが決定されてからやりたいことがまず二つ思い浮かびました。
まず一つは絶望から希望への転換の表現。
同時に、展示を見る動線と展示の掲載方向は逆であることから、光の側から闇へ堕ちてしまってもまた闇の側から光へと戻ってくれるような展示の表現がしたいなと。
そしてもう一つは、写真の前に立ったときにアクリルに反射して映る鑑賞者自身の遺影になるようにしようと。
有り得べからざる絶望の後。死後の自分の影を今この時に見つめ、もし未来でそこに至ってしまった時、ここで見た絶望の中での死以外の道があることを思い出してもらえるような展示にしたいなと思ったのです。

決められてた展示場所。この壁を眺めながら案を練った。

この考えをベースに数度の相談会を経て以下のレイアウトが完成しました。

完成したレイアウト。当時少し迷ってる部分もあった。

選ぶべきメインの写真二枚は自然に浮かんだ。
最も私が死に近い時間を歩んでいた時に撮影した、マンションの階層を見下ろした様子。
そして私にとっての救済への光であった渋谷スカイからの景色。

完成

そして当日。手書きでノートに後書きを付け足して、完成しました。

完成した展示。
正面に立った時、自らが映り込み遺影のような装いになる。

メインとなる写真の額と滴りには私がこの日本で手に入れられる中で最も黒い素材。太黒門を使用し内面から溢れる黒い感情を表現しました。
上から2枚目、3枚目、壁側の4枚目はそれぞれ自己投影されたような空き缶や壊れた旗立、同じく壊れたビニール傘が映り込む。
もっとも私の心を削った上から3枚目の写真は私の心のガタつきを表現すべく展示。後半になるに連れて、異界のような精神内の描写がイメージされる、夜の伏見稲荷の様子へと転換していくようなレイアウトに。

希望を得た後の写真達。

左上から
池袋の街中に煌めく虹色の階段。
丸の内のビルの隙間に映る青空。
原宿で撮影した私の手に止まり、羽ばたくヤマガラ。
そしてフォトエッセイ、メイン写真の渋谷スカイの景色。
撮るものが明らかに変わっていった様子が見られる。

上記二枚撮影:可愛すぎ家族写真家のShota Yamaguchiさん https://twitter.com/papa_camera_

私の心の壁を溶かしてくれたこの景色。
SNSにはごまんとある、みんなが知ってる絶景。
眼の前の形すらおぼろげになるような暗い日々を過ごした私をこの景色が照らしてくれた。

綺麗でかっこいい印刷の方法を井上浩輝さんから教わり、大事に大事にクリエイトさんで印刷、額装していただきました。井上さん、クリエイトさん、ありがとうございます。


キタキツネの写真家: 井上浩輝先生  Twitter



人の暖かさを改めて感じた。

いざ展示会へ。
開催前の準備。開催中の会話。開催後の交流。
全てが暖かく。そして楽しい。とても幸せだ。

今までせき止めていた人との関わりは穏やかな濁流として私に押し寄せました。
展示者同士であれば互いの作品、人物への敬意と尊重。
お客さんとであれば作品への案内。そしてお客さんから頂いた感想、または涙と想い。

それらを一身に受けた私は今一度、過去築いた愚かな心の壁を思い出す。
当時の苦しみは今この時のために。
そしてここで受け取った想いで未来へ歩むためにあったのだという強烈な実感と幸福感に満たされました。

本当にこの写真展に参加できて良かった。
ただひたすらにこうしてこの場に立てたことが嬉しい。
ここにもまた、新たな「光」を感じました。

冒頭に重ねて繰り返しになりますが、主催である別所先生。運営の皆様。展示者の皆様。来てくださった全ての方。
私の新しい生きがいをくれてありがとうございます。


そして同時に、私の闇から放つ写真と言葉が世に受け入れられなくなるまで発信し続ける必要性を感じました。
感想ノートにいっぱいに書き込んでくれた人々の存在はこの世の辛さを実感させました。
言葉を、メッセージをくれた多くの人々がいる。


いつか私の言葉が響かない世の中になりますように。
ささやかな彩りで世界が満たされますように。
僕は内なる闇と添い遂げ、光への道案内ができるような作品をつくっていきたいなぁ。



出展者の方々の記事です。
ぜひともこちらも合わせてご覧いただければ幸いです。




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