駄作

海が見えるどこかにいます。

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最近の記事

小さなヘタな恋のうた

週末、とある川沿いを散歩していた。好きなシャツを着て、メルカリで買ったトラックジャケットに袖を通して、春の道を歩く。 晴れの日曜ということもあり、たくさんの人がいた。マクドナルドを食べながら花見をする女子高生。春爛漫のカップル。ランニングをする初老の男性。犬の散歩をする人。人に散歩させてあげる犬。子どもとキャッチボールをする親。親にキャッチボールをしてあげる子ども。 春というには少し暑くて、せっかく買った上着を片手に歩く。 川沿いというのは面白いもので、みんなが特に目的

    • 科学館の裏

      ランチタイムに食い込んだ打ち合わせを終えて、一息ついた。 昨日、大量の桜を散らせた豪雨とは打って変わって、気持ちのいい晴れの日。 「そうだ、外で読書でもしよう」と少しずつ読み進めている詩集のようなエッセイのような本を手にとり会社を出た。 そこは、市がやっている科学館の裏。駐車場のとなりにあるよくわからない広場。 ぼくはここでよく昼食をとる。とはいっても、蚊にさされまくる問題と、あまりに寒いという問題で、季節は春と秋に限られるのだが。 その広場には8つほどの机とベンチが置

      • だから、がんばります。

        銀行で働いていた時間を、コピーライターになってからの時間が超えた。 と言っても、もう1年ぐらいはとっくに超えているのだけど、 ふと振り返ったら超えていた。 広告の仕事がしたくて、したくて、たまらなかったあのとき。それでもなれない、届かないばっかりだった時間があった。 そんな状態で入ってきたものだから、毎日が本当にたのしい。書きたい、考えたい。好きなことをしているだけで、お金はもらえる。世の中に出ることだってある。何もかも憧れていた世界だ。 だけど、ひとりである程度の仕事

        • ありがとう2023!

          今年もあと2日。 12月の後半に入り、駆け抜けていく日々がやけに好きで、やけに苦手だ。 特に意味など何もない、大晦日というただの月末と、お正月というただの月初に向けて、みんながドラマの最終回みたいな顔をして生活をはじめる。 銀行の営業というノルマに追われ続けるような仕事をしていたもので、この、月という区切りや、年という区切りのバカバカしさをいつもいつも感じていた。 どんなに大変なノルマを追いかけて、みんなで一丸となって、汗を流して達成しても。あら不思議、 0:00を過ぎ

        小さなヘタな恋のうた

          次あるなら優勝してほしいんだから本当に

          ザ・セカンドを見た。見終わって、改めて思った。 やっぱり、ぼくは、囲碁将棋の漫才が好きみたいだ。 学校指定の制服屋はほぼ公務員。 大学病院の売店は三軍のパンが飛ぶように売れる。 AV男優は若い頃は憧れるけど、大人になってしんどいのがわかる。 プロ野球選手のダサい私服。 ロベルトバッジョと、ロベルトバッジオ。 満車は、エロワード。ウイスキーのヰ。 書いてるとキリがないけど、 おふたりがおもしろがっていることが好きみたいだ。 ーー 「なんか、すいません…」 どうしようも

          次あるなら優勝してほしいんだから本当に

          じっぽ

          実家に帰ると、一枚のカッパの絵が飾ってある。たしか、小学校3年生ごろに描いたカッパの絵だ。そのカッパの名は「じっぽ」という。読んだ本の絵を何も見ずに描く、読書感想画コンクールと呼ばれるもので佳作をもらった作品だ。絵の中で「じっぽ」は、水槽に入れられてサンマのようなものを鷲掴みにしている。もしかしたらアジかもしれないし、サバかもしれないけど。ちょっと細長いのでサンマだと思う。まさか、カマスじゃないだろう。 細長い魚をどんどん書いていくことになると、最終的に寿司屋の湯呑みのよう

          じっぽ

          ありがとう2022!

          いやぁ、「頑張らなあきませんねぇ〜!」言うてますけども。 なにわの漫才師さんのお決まりのフレーズのように自分に言い聞かせ、じたばたした1年だった。 当たり前のことなのだが凡人の日々には、M-1グランプリのように、大きく人生が変わるような瞬間は訪れない。たぶん今後もない。 だけど、1年、365日も生きていたら、ちょっとした忘れられないことが起ることもある。たいていそういうことは、じたばたしていたから起きたことだ。 最近になって、ようやく分かってきたことがある。 自分が書い

          ありがとう2022!

          東京

          関西の地で、コピーライターになってから3年ぐらい経つ。 それは、東京から情けない逃げ方をして、4年ぐらい経つってこと。 ぼくにとっての東京。それは、当たり前だけどすごく遠い場所だ。 夜行バスだと10時間ぐらいかかる。新幹線に乗っても2時間半はかかる。 2時間半もあれば、サザエさんとちびまる子ちゃんとクレヨンしんちゃんとドラえもんとおじゃる丸と忍たま乱太郎がぜんぶ観れる。(なにをもって、ぜんぶなのかは分からないけど) 物理的な話だけじゃない。心の距離も遠い。東京は華やかな場

          ラジオをやってみます。

          考え事が好きだ。でも、政治の話や、社会問題について、いろいろ考えることが好きなわけではない。 だから、なんてことないことを考えることをつづけてきた。 となりのおじさんが話してたこととか、いつもおなじ場所で会う鳩のこととか、もしも自分がゾンビになったらどんなゾンビだろうとか。こんなのは序の口だ。 本当に、取るに足らないことを考えて生きてきた。 新聞は読んでいるし、世の中でいま何が起きているかも分かっている。 ただ、分かれば分かるほどに、そうじゃないものを見つめたくなる。流

          ラジオをやってみます。

          音の話

          外を歩く時、イヤホンをすることが多い。 好きな音楽だったり、好きなラジオ番組を聴いている。 そのとき、ぼくの目は世の中をボーッと見つめて、次の角を曲がろうだとか、あの人変わったシャツを着ているなとか、そんなことを考えている。ただただ、音だけを聴いていることはあまりない。 ーー 今から6年ほど前、祖母が認知症と診断された。銀行の研修で習ったとおり、お医者さんは治ることはないと言った。ただ、進行を止める方法がある。それは、会話をすること。人と話すこと、たくさん色んなことを考

          音の話

          何者か

          夏だ。暑い夏だ。気だるい夏だ。バテきった夏だ。動きたくない夏だ。 夏になるたび、自転車で走り回っていた営業の頃を思い出してしまう。 朝、誰よりも先に支店に着き掃除をはじめる。 抜いても抜いても生えてくる、雑草を引っこ抜く。 拾っても拾っても増えている、ポイ捨てタバコを拾う。 壊れた電動自転車にまたがって、いつもの営業エリアへ。 橋を渡るので、それだけでもう暑くてたまらない。 お客さんの家に行って、汗を拭いながら話をする。 「ちょっと、汗がひくまで待ちなさい」と冷たい麦茶を貰

          何者か

          自分なりの恩返しを。

          「ぼくの仕事は、幸せに繋がっているんだろうか」 買ってもらった投資信託は、なかなかプラスにならない。 前任の担当者がムチャクチャだったことを聞きながら、 ていねいに、ていねいに、結局おなじように保険をすすめる。 定期預金を出す!と言われたら、「そこを何とか…」と泣き寝入りする。 新卒で、銀行の営業になって3年間。そんなことを、年がら年中、考えていた。 何とか得をしてもらおうと、粗品をごっそり持っていく。地元のお菓子を持参する。いろいろやるけど、「自分と付き合うメリットねぇ

          自分なりの恩返しを。

          ありがとう2021!

          高校生の夏、父親を釣りに誘った。 大学には進まず、お笑い芸人になりたいと言った。 父親はこっちを見ること無く、「大学に行け」と一言。 何を話したのか、何が釣れたのか詳しくは覚えていない。 ただ、自分には勇気がなかった。「楽しいことは、大学に出てもサラリーマンでもできる」と言われてしまい、言い返せるようなパワーがなかった。 気がつけば、あれから10年ほど経っている。 Instagramを開けば、友だちの子どもがみるみるうちに成長している。クリスマスにプレゼントを置いている

          ありがとう2021!

          和田誠さんに会いに行った。

          12月17日の金曜日。東京へ向かう夜行バス。 ぼくは必死に、腹痛と戦っていた。 本当は新幹線なら一瞬なんだけど、あえての夜行バス。前日から旅がはじまる夜行バスが好きで、行きはバス、帰りは新幹線がいつものパターンだ。 なのに、腹痛。大人なのに漏れそう。そんな状態で久しぶりの東京ぶらりは始まった。パーキングエリアについて、トイレに走り込む。最近のパーキングエリアは綺麗だなぁと思いつつ、なんとか滑り込んだ喜びを噛みしめる。 いま思えば、最大の試練はあそこだった 旅の目的は

          和田誠さんに会いに行った。

          油をひかない。

          ソーセージを炒めた。 油をひかずに炒めた。昔からそうしている。おなじような手法でメンバーに振る舞っていた。ソーセージに切り込みは入れずに、焦げてはち切れるように焼く。 一度、「ガキの使いやあらへんで」でココリコの田中さんが同じような手法でメンバーに披露していた。浜ちゃんは「そんなちゃうか?」みたいな反応をしていたけど、ぼくは田中さんの説明をウンウンと聞いていた。 「あんな、ソーセージは油ひかんほうが美味いで」 一緒に暮らしていた祖父は、ある日、ぼくにそう言った。アルト

          油をひかない。

          開けば、そこが図書室。

          小学校の図書室では、よく裏取引が行われていた。 取引の対象は『かいけつゾロリ』。 全校生徒から大人気だったゾロリは、図書室で見かけることが、ほとんどないレア物。 見つけた子はクラスメイトに勝ち誇る。 その結果、「次は俺に貸してくれ!」と複数から頼まれ、契約を結んだ子に翌週渡す。どこか不正をしているような、裏取引感が、そこにはあった。 ゾロリの中でもさらにレア度は分かれる。 「かいけつゾロリのドラゴンたいじ」は、あまりの定番っぷりに生徒たちも一通り読んでおり、少しトリ

          開けば、そこが図書室。