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上海でバーチャルアイドルのライブを観ながら、次世代での戦い方を考えてみた【前編】

先日上海で観てきたバーチャルアイドルのライブに熱狂する人々の魂にあてられて、やっぱりインターネット最高だなと思いブログを書くことにしました。 

とりあえずこの動画はサービスだから、まず観て落ち着いて欲しい。

ライブの終盤、初音ミクさんと洛天依さんが一緒に「B WITH U」という曲を一緒に歌う場面です。後者は中国のミクさんだと思ってください。
※ライブは撮影・シェアOKでした

ちなみにこの曲の前には、お互いが相手の代表曲を互いの言語で歌うというエモすぎる演出があり、わかりあいが深すぎて泣きました。

はじめに:おゆさん最近何してんの?

6月上旬にブログ(こちら)を書かせていただいてから、はや2ヶ月。
短いような、しかし時間って思っているよりあっという間に過ぎるんだなと、いつもながらに実感しているところです。最近よく聞かれる質問ベスト3は

1. 次何するの?
2. 今何してるの?
3. 日本にいるの?

とかですね。
次のテーマは決まってなくて、頭をチューニングするために気の向くままに色々な国に足を運んでいます。今回のブログはその一環のアウトプットです。

一応、記事の着地点を予想しておくと

・バーチャルアイドルのライブが素晴らしかった!ので、そこから感じた可能性
・ライブ及び、その前後で中国を散策した際に感じた日中の文化比較論
・相対的に感じた日本のもつ可能性と活かし方

辺りをざっくばらんにカバーするものになると思います。

なお、道中をご一緒してくれたシャオさん(@shao1555)からは、鋭い洞察をいくつも頂き糧になってこの記事が生まれています。大きなSpecial thanksをここに記しておきます!!サイコウヾ(゜□゜@)

【ライブの概観】 主催する「ビリビリ動画」の時価総額はなんと5,000億円

まず、とにかく圧倒的にライブが楽しかったです!
掛け合いの遅延なども少々あった気はするものの、全体でみるとライブのクオリティは満足いくものだったと感じました。

元々のきっかけは投資している「にじさんじ」さんのキャラクターがライブに出る、というので「せっかくだし行ってみたい!」という気持ちで参加したのです。
が、ライブが終わった瞬間に「これ体感するだけでも海越えてここまで来た価値があった!」とがっつり感じたのを今でもはっきり覚えています。

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オリジナルの大型サイリウムが全員に配られたりと、装備も◎やった

ちなみに、今回参加したのは「ビリビリ動画 (※概要後述)」の運営会社が主催する、「Bilibili Macro Link 2019」というイベント。

全3日間の中でも、バーチャルアイドルのライブを中心とした1日目に参加させてもらいました。この3日間の他に、別日程で「ニコニコ超会議」のようなリアルの展示型イベントも開催予定で力の入れようがうかがえました。イベントLPも豪華です↓

会場は上海のメルセデス・ベンツアリーナで、収容人数1.8万人。
一部視野角の関係で壇上が見づらく不使用になっていた箇所以外は、割と埋まってたじがするので1.5万人弱は収容してたんじゃないだろうかという規模感。イベントのサイズとしては、武道館ライブ以上という感じですね。
この人数が一人当たり〜1万円近く払っていて、すなわち1億円を軽く超えるお金が動いていると思うと、消費者層の高まりを感じますね。

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※ビリビリ動画をあまり知らない、という人はこちらをご覧になられたし。興味深いところを引用するとこんな感じ

ビリビリ動画とはニコニコ動画に似た、動画上にコメントが流れる動画サイトである。それゆえ日本のメディアではしばしば「中国版ニコニコ動画」と称される。
 (中略)
近年は「Fate/Grand Order」「刀剣乱舞」「乖離性ミリオンアーサー」「オルタナティブガールズ」などのスマートフォン向けゲームの運営にも精力的。
特に、Bilibiliが配信するスマートフォン向けオリジナル擬人化艦船少女STG「アズールレーン(碧蓝航线)」は中国国内のみならず、日本でも株式会社Yostarがローカライズ・運営しており、今や日本国内だけでユーザー登録者400万人を超える大人気スマートフォン向けゲームとなっている。

ちなみに、Bilibili Inc.はニューヨーク証券取引所に上場しており()、執筆時現在で時価総額が約5,000億円ほどあります() 鼻水止まりませんね。

サービスの概観は こちら がサービスリンクなので見ていただけますが、ニコニコ動画を強くした感じのサービスです。

思ったよりもまだ日本のコンテンツがウケてるが、時間の問題

さて、ライブの内容自体にもう少し触れます。

何よりもまず場の一体感が圧倒的に高く、それによりライブ体験がとてもいいものになっていました。
ライブには入れ代わり立ち代わり、総勢30キャラほどが出演。
驚くべきはなんとその内の半数程が、日本生まれのキャラクターだったこと。極めつけは、ライブが盛り上がる後半において、ほとんどが日本発のコンテンツで構成されていて印象的でした。

これは割と興味深くて、主催しているビリビリには実はバーチャルアイドルとしての、オリジナルキャラクターがいるんですよね。
にも関わらず、それを押しのけて後半を日本キャラで固めていたのはある種のビジネス的な割り切りが垣間見え、清々しさすら感じました。

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こちらはパンフレットから引用。著者撮影

22,33というちょっと不思議な名前なんですが、成り立ちなどをもうちょっと詳しく知りたい!という方は上のリンクから。
動いているのを見たい方は下の本家サイトで「22,33」と検索してください。

良い意味で期待が裏切られたのは「思ったよりまだ日本のコンテンツがウケてるな」という発見があったこと。

とりわけ、最後に初音ミクさんが出てきたときは会場のボルテージMAXだったので、15年来のファンやってる身としてはエモすぎて「Oh, 大陸の友よ」となりました。

基本的な壇上パフォーマンスは、大半が(あらかじめ準備していたであろう)中国語での簡単な挨拶 → コール&レスポンス → 歌唱、という感じの流れ。
中には、歌はもちろん自己紹介含め終始日本語で押し切る!というキャラもいて驚いたのだけど、それでも割と掛け合いも成立していた印象でした。おそらく日本語を意欲的に学んであろうオタクの気配も感じました(褒めてます)

好みの差はあるのかもしれませんが、中国発のキャラの造形を見てるとまだ日本が積み上げてきた歴史もあってか先行者優位を享受しているかな、という印象です。

一方で、上記でも貼ったイベントのサイトを見てもらうとわかりますが、2Dの美麗さはもはや遜色ないです。
またグローバルでIPの展開をしている方曰く、3DCGについてはもはや中国が圧倒的な制作元となっているとのこと。これに鑑みると贔屓目に見てもアドバンテージは1年、もって1年半なのかなと素直に思うところでした。

一方で今後考えるべきはクリエイティブの質、というよりは如何に双方向性を高めた体験を作れるのかだと思います。
クリエイティブの質が同一になったとすると、流石に「片言で自己紹介 → 日本語で歌う」という単純化されたパターンだけだとエンタメとして辛いよね、というのは想像に難くない。
そういう意味では他国進出するなら言語の壁を乗り越え、文化理解をどう育むのかは今後向かい合うべき大きな宿題ですね。

この文脈においては、キズナアイさんが中の人を複数人にして運営していっている「分人チャレンジ(勝手に命名)」は割と面白いトライだと思っているのですが、それだけで一記事書けそうなので、これは誰か頼みます。

未来のライブはもっと自由でワクワクするはず

またライブ自体の体験、という意味では中国におけるスタンスは心地よかったです。

具体的に言えば「基本的に撮影歓迎、シェア歓迎」というスタンス。
現地民からするとこれが普通みたいなんですが、ある意味こうやって雑でも発信しようと思えたのも、そういうスタンスが下敷きにあることの影響は感じます。

絶対シェア禁止!と言われてたら、わざわざ文字だけの映えない状態で発信しようという意思削がれてただろうなと

もちろんTPOあると思いますが、ネット上にある動画を閲覧するのとライブで味わう楽しさが別である、というのはエンタメが成熟した国であれば直感的にわかるはずで。
そうなると、動画が出回ることはライブ売上を押し上げこそすれど、毀損することはあまりないのかなと感じています。

これはシェアだけの話にとどまらず、今後ライブ自体がより深くテックと融合してことは間違いないと改めて確信しました。
スマートフォンを通じたもっとシームレスなライブ体験の実装ってなんだろう、というのは業界の宿題ですね。
一昔前のPCと同スペックのデバイスを、みんながライブに持参しているわけですので出来ることは多々ありそう。

例えば、席に貼ってあるQRコードを通じて投げ銭ができ、ステージに能動的に介入できるとか。こういう未来は数年以内にくると思うんです。
つまりバーチャルアイドルという文脈だけじゃなく、会場での視聴体験すらもテックが塗り替えていくということです。

「1億2,000万のシェア50%」ではなく「70億人の1%」

とにかく何が言いたいかって?

こういったサブカルチャーって、サブなので基本的には社会においてメジャーじゃなくてマイナーから始まります。だからこそ人種のようなわかりやすい壁が合ってもそれを乗り越えて結束感を強くできるのではないか。
つまりこういった文化を愛する心は世界共通だよね、ということを文字通り身をもって感じられたのは本当に楽しい体験でした。

日本は相対的に外国語を学ぶ必然性も低い国ですが、テクノロジーに親しむ人ほど「国境」という壁を、フィジカルにもメンタル的にも軽々と超え始めているのではないかと感じます。
こういうテックもありますしね↓

最近サービスを考えたり、投資先と議論したりするときによく話すのが、もう僕らはとてもフラット&グローバルな時代に生きているということ。
つまり、日本人同士はわかりあえるのだというのには割と幻想があって、カッとなって煽り運転をしてしまう日本人よりも、初音ミクが好きすぎてカタコトの日本語喋りながらサイリウムを振るオタクのほうがわかり合えたりするでは?という話です。

もっというと、これからの10年は「1億2,000万のシェア50%」ではなく「70億人の1%」を取ることが現実味を帯びる時代なんだと思います。
これから何かをスタートする野心的な皆さんにおかれましては、これを真顔で考えてみるもの一興かなとか思うので、是非Twitterで絡んでください。

上海の地で言葉が通じないながらに、カルチャーを通じてわかりあえたことに趣きを感じて書き始めたら、思った以上に長くなってしまい文化比較論まで至りませんでした。
申し訳ありませんがそこまで含めると長すぎるので、前後半とさせて下さい。

後半は明日ごろ公開予定。こちらがむしろ本論なので乞う、ご期待。
旅先から編集頑張るので、よかったらRTでもして応援してください!! 笑
(※後編へ続く...)


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