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走るイラストレーター

日本にはどのくらいのイラストレーターがいるんでしょう。プロ・アマ問わずとなると誰もその正確な数は知り得ないでしょうが、おそらく数万人規模、いやいやもっとずっとたくさんかもしれませんね。絵のジャンルは様々あれど、上手い方やセンスのある方が山ほどいるこの業界で、数限りあるお仕事を得て生きていかねばならない職業イラストレーターを選択した僕としては常に危機感を持っています。

そんな強者、猛者があふれる中でどうやってアピールをすれば自分を見つけ出してもらえるでしょうか。ただ単に「イラストレーターです」と肩書を伝えるだけでは弱いですが、例えばそこに自分だけの"強み"になるような何かが加われば多少なりとも反応が変わってきそうですよね。実際に経験を通してそう思えた事がありました。

僕はランニングが趣味で朝晩よく走ったり、マラソンに出場したりしています。熱中しすぎた時期にはもしかしたら絵を描く時間よりも長い時間走っている事もあったかもしれません。その頃からでしょうか、ちょっと面白がって肩書きを単なる「イラストレーター」から「走るイラストレーター」に変えて自分の事を紹介するようになったんです。

するとどうでしょう、徐々にランニング好きのイラストレーターとして僕を知っていただけるようになり、肩書のおかげなのかなんとマラソン関連のお仕事を立て続けにいただくことができました。大阪マラソンのチャリティTシャツや、神戸マラソン関連イベント広告、姫路マラソンの冊子等々。

走ってみるもんだな、と。それを周りに言ってみるもんだなぁと。

ここからは半分想像の域になりますが、きっとどこかでマラソンと言えばサタケ、という具合に僕の事を思い出していただけたのではないでしょうか。クライアントさんの頭の中の検索ワード「イラスト」と「マラソン」に見事ヒットしたわけです。こんな感じで「○○といえばこの人」という具合に自分につながる検索ワードや得意分野を増やすことで、お仕事の幅は広がっていくのだなと。それが例え一見お仕事に直接関係のなさそうなランニングやマラソンであっても、どこにチャンスがあるかはわからないものです。

「○○といえばこの人」が選ばれる。つまりそれは経験と知識に裏付けされた表現や描写ができる人=説得力のある絵を描ける人が選ばれている、という事でもあります。何かを描く時に、その対象となるモチーフやテーマについてよく知っているかどうかというのは大きな強みになると思いました。

例えば僕が昨今のマラソン事情を全く知らない状態で「ランニングをする人」を深く考えずに描いたとします。その結果はこうなっていたかもしれません。

ご覧の通り、ザ・ステレオタイプ!なちょっと古い?表現をしていたかもしれません。もちろんこれはこれでありかもしれませんが、需要とはズレがあります。今はもっとオシャレでたくさんのスタイルがあって、もうあんまりこんな感じの格好って見かけませんもんね…。

こんなふうに、自分が詳しい事だと求められるイメージに合わせてよりリアリティのある表現ができるようになります。

また、現在たくさんのお仕事をいただいている子育てのジャンルでも、2人の子どもを育児している経験が活きています。自ら体感していなければきっと子どもの年齢や月齢による違いの描き分けはもちろん、動きや表情などうまく表現できなかったでしょう。

そう考えると日々経験している事はどんな事でもお仕事につながる、活かせる可能性があるなと思いました。ただ、得意分野をアピールるするのは良いとしても、肩書を増やしすぎて逆にひとつひとつの印象が弱まる事もあるでしょうから、僕が「走る子育てビール好きイラストレーター」などと盛ればいいという話でもないようで。

そうだそうだ。仕事ばっかりしていてもダメだ、趣味であるランニングもこうして役に立っているじゃないか、と自分に都合のいいように物事を捉え、またお仕事そっちのけで走りに出かける僕なのでした…



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