非デザイン系の学生がコペンハーゲン式デザイン思考を学ぶ!1dayワークショップに行ってきた

先週末にコペンハーゲン式デザイン思考を学ぶワークショップに行ってきました!10時開始19時終了という長丁場のイベントでしたが、得るものたくさんでとても楽しかったので、ぜひ何かが伝わればと思いながらレポートを書きたいと思います。

デンマーク、コペンハーゲンと聞いた時に皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?LEGO®︎を思い浮かべる人もいれば、サスペンスドラマが好きな人であれば「キリング」を、あるいは料理好きな人は、独創的な世界観が話題となったレストラン「ノーマ」(下の写真はノーマで出される料理の一つ)を思い浮かべるかもしれません。日本の人口の4%ほど、570万人の国がこれだけ世界に影響力のあるサービスやプロダクトを生み出せている理由は一体何故なのか。それが今回このワークショップに参加した大きな理由の一つです。

もう一つの理由としては、僕の専攻である医学という分野にもう少しデザイン的な視点や考え方があっても良いのではないかと常々思っているからです。病院に行って疲れたという人や、長い待ち時間に不満を持ったという人は決して少なくないと思います。医療を提供する側も決して悪いサービスを提供しようなどとは当然の事ながら全く考えていないわけですが、他業種では当たり前に行われていることが、ある業種ではなかなか取り入れられないということは現実問題としてあり、他の視点を多く持った人が入ることでしか、そういった問題はなかなか改善されないと感じています。
また医療サービスの対象となる病気が、感染症から糖尿病や高血圧などの慢性疾患に移るなか、そうした慢性疾患を予防する重要な手段として、デザインを通じた行動変容は大きな注目を浴びています。

⓪ワークショップの概要

ファシリテーターは今回の仕掛け人である木浦さんに加え、木浦さんと同じCopenhagen Institute of Interaction Design(CIID)におられた神谷さん、デンマークのDesign School Koldingにおられた平野さん、ロンドンのRCA、NYのPratt Instituteにおられた田端さんの4名というとても豪華な顔ぶれ。そして倍率はなんと5倍超え。注目度の高さが伺えます。

全体の流れはこんな感じ。① Ice Breaking → 自己紹介、木浦さんよりワークショップの説明② Assumption Mapping ③ Research Planning → リサーチテーマの設定④ Interview → 20分のインタビューを3回⑤ Lunch Break⑥ Research Analysis → インタビューの分析⑦ Rapid Ideation → アイデア出し、ブレスト⑧ Concept Mapping → 1つのアイデアに絞り、深掘りをする⑨ Presentation ⑩ Q&A

① Ice Breaking

参加人数は20名ほどで、3、4名でチームを構成するという感じでした。僕のチームは3人のデザイナーに学生1人(僕)という組み合わせで、議論も活発なとても良いチームでした。参加者の多くは何らかのデザイン系のバックグラウンドを持った人が多かった印象で、僕のような学生(しかもデザイン専攻では全くない人)はかなり少数派だったと思います。個人的には、今回のような高度なデザインスキルを参加要件にしていないデザイン系のワークショップには、非デザイン系の人に多く来てほしいですね。

コペンハーゲン式デザイン思考の特徴として繰り返し挙げられていたのは、あらゆるステップでユーザーを巻き込む"People-Centred" Designであるということ。もともと、人口570万人ほどのデンマークにとって、デザイン思考は企業の業績を上げるためだけでなく、自分たちの生活をより良くするための手段でもあり、サービスの実際の使い手の声を詳細に聞くことは必要不可欠ということなのでしょう。

教育機関、イノベーションスタジオ、インキュベーターが同じ建物に入り、それらを全てやっているのがCopenhagen Institute of Interaction Design(CIID)の特徴の1つ (Adapted from Arvind Sanjeev's blog)

② Assumption Mapping

今回のテーマは"旅行"だったのですが、ひとえに旅行といってもそこから連想されるものは様々で、そこから生じるズレはこの後のインタビューやアイデア出しにも影響を与えかねません。このステップでは、そのズレを認識・共有することが大きな目的であり、旅行から連想される単語をひたすら書き出します。木浦さん、平野さんに繰り返し言われたのが、口頭で言うのではなく、"書く"こと。日本語は主語を省略しても意味が通じ、周囲も何となくは理解しているという状況を比較的簡単に作りやすいのに対して、留学していた時は、英語でコミュニケーションすることになるので言語特性の違い、書き出すことの重要性を感じたそうです(平野さん談)。個人で旅行から連想される単語が出尽くしたところで、それらをグループ内でカテゴリ分けしました。

Point・単語が浮かばなくなったら、異なる状況を想定(ひとり旅だったらどうなるか?海外旅行だったらどうなるか?など)する・とにかく書く!

③ Research Planning 

まず最初はリサーチテーマを設定します。
Assumption mappingで出たたくさんの言葉の中から、それぞれがアイデアを出し、「旅の楽しみ方」をグループのテーマにしました。
→目的を達成するために必要な質問を3つ考えます。僕らのグループは「最近で最も楽しかった旅行はどんなものだったか」というクエスチョンを軸に据えることにしました。

Point・ここでのテーマに対してソリューションを出すわけではない →あくまでもグループの興味のあるテーマが設定できればOK!・たくさんアイデアを出す!

④ Interview

インタビュアー、記録係、インタビュイーの3つの役割に分かれ、インタビュイーは他のグループのテーブルに移動します。

インタビューで特に意識することは以下の3つです。
1.  インスピレーションを得ること
2. 家族、友人、社会、モノ、コトとのつながりを意識
3. 思いやりを排除する

インタビューの時間が1回につき20分と長いので、当初用意したキークエスチョンがなくなってしまいそうになる時もありますが、whyを聞き続けて深掘りすることで、インタビュイー、インタビュアーのいずれも気づいていなかったような視点や知見を得ることができます。

Point・のちのプロトタイピングなどでのインタビューの質をあげるために、 インタビュイーと良い関係を築く・常にwhyを聞き続ける

⑤ Lunch Break 

インタビューが終わったところでランチの時間です。イベントの開催地である市ヶ谷周辺で美味しいランチをOptの社員の方がリストアップしてくれました。このランチのおかげで他グループの人とも会話をする機会が生まれ、とても良く練られたイベントだと感じました。(そして各レストランの紹介をしてくださったOptの方の説明がめちゃくちゃ面白かった)

⑥ Research Analysis

ランチをとって午後一発目のワークショップは、Research analysisから始まりました。Research analysisは以下の4つから構成されます。

 (1) ダウンロード
インタビューで気が付いた点をポストイットに書き出す
(2) テーマ
気が付いた点をクラスタリングしてカテゴライズする(僕のグループでは、旅行前、旅行中、旅行後にクラスタリング)
(3) インサイト
重要なテーマから得られる知見を抽出する
(4) オポチュニティ(=ゴール+制約)
インサイトに対する解決方針の策定

インタビューをする中で、旅の行き先ももちろん大事ですが、そこで大切な人(主に恋人、時には好きなアニメなどのキャラクター)と時間を過ごすという行為そのものが最も重要と思われていることに気づきました。
また旅行そのものの体験が素晴らしくても、あとで一緒に旅行した人との関係性が悪化すると(喧嘩、別れるetc.)、思い出したくない苦い経験に変わったり、逆に旅行中にトラブルがあっても、笑い飛ばせるような経験に変わったりすることもあることを発見しました。

そこでインサイトとして「人々は旅行に対して非日常的な体験を求めているが、実は一緒に旅行する大切な人と同じ体験を共有できれば、どこに行くかは問題ではない」、「旅の体験や思い出は時間によって変化する。人との関係性に大きな影響を受ける」の2つを設定しました。

また、インサイトに対するオポチュニティーとして、前者に対しては「大切な人との旅行に、より最適化した体験を提供するにはどうすればよいか」、後者に対しては「旅行中/後に関係性を良くするにはどうすればよいか」を設定しました。

Point・インサイト・オポチュニティーは広すぎても狭すぎても後のアイデア出しの妨げとなるため、良い塩梅を見つける

⑦ Rapid Ideation (Brainstorming)

いよいよブレストです。グループからファシリテーターを1人選んで、その人以外は他のグループに移動します。てっきりブレストもグループ内でやるものと思っていたので、非常に意外かつ良いアイデアを出すのに有効な方法だと感じました。
というのもファシリーテーターは、自分たちのグループがどういう思考経路を経てそのオポチュニティーにたどり着いたかを説明しないといけないので、反芻する過程でよりオポチュニティーを良く理解できますし、他グループのメンバーから新しいアイデアやクエスチョンが出ることも期待できます。
新しいものを考える時に、よそ者・若者・馬鹿者を入れろとは良く言われることですが、バックグラウンドが均一になりがちな日本的な組織で実際にそれがすぐにできるかというとなかなか難しいと肌で感じます。それに対して、このグループメンバーを変えてブレストをするというスタイルは、今日からすぐに実践可能でとても良いと感じました。

Point・ファシリテーター以外のメンバーは他のグループに移動する→こうすることで新しいアイデアが出やすくなる!

⑧ Concept Mapping

ブレストで出たたくさんのアイデアの中から1つに絞り、想定ユーザーやユーザーにもたらす価値、対象は誰なのか、既存のサービスに依存するのかしないのかなどを考えながら、アイデアを深掘りしていきます。
僕らのチームでは、オポチュニティーとして設定した「大切な人との旅行に、より最適化した体験を提供するにはどうすればよいか」に対して、誰かの日常が別の人にとっては非日常であるという事実に着目し、「短期の間、家同士をお互いに引っ越すサービス」を考えました。家同士を交換することにより、その人たちの間でより深い交流が生まれるという既存のサービスにないよりローカルな繋がりを売りの一つとしています。実際にどうマネタイズしていくかなどブラッシュアップするべき点は多いですが、他のグループのプレゼンを聞いていてもここまで色々なアイデアが1日で出てきたのは驚きです。

⑨ Presentation

Concept mappingで作った模造紙大の紙(上の写真)を貼って、各チームプレゼンです。自分のグループを振り返った時に、最初は「旅行」という非常にざっくりとしたテーマから始まり、徐々にそれがpeople centredでかつ具体的なものに落とし込まれていくのを肌で感じました。下にその流れを追ってみます。

⑩ Q&A

最後はQ&Aセッションで締めくくりです。円上になって、リフレクションを行うのがCIIDスタイルです!

Q1. 今回は1つの課題に対して1日のワークショップだったが、CIIDでは通常1つのプロジェクトにどのくらいの時間をかけてやるのか?

A1.
プロジェクトによるが、普段の授業では1週間でやることが多いが、2, 3週間のこともある。(木浦さん)
Q2. プロジェクトの長さによって、どの部分に重きを置くか変わってきたりすることはあるのか?

A2.
例えば、2週間のプロジェクトであればリサーチに時間をかけたり、プロトタイプを早く作り、ブラッシュアップに時間をかけたりすることもある。(木浦さん)
Q3. 具体的にどのようなプロジェクトがあるのか?

A3.
コペンハーゲンの公共施設のリニューアルや世界的ファッションブランドのブランディングなど。(実際に実現されることもある)(木浦さん)
Q4. 3、4人のチームに対して2回のブレストだったので、自分のチームでファシリテーターをやらない人がいたが、それは意図的だったのか?

Q4.
時間の関係上できなかったが、通常は3セッションやるなどして、全員がファシリテーターをやる。(木浦さん)
アイデーションのところで他のグループの人に混ざってもらうのがポイント。自分のチームの人はオポチュニティーを出すまでのプロセスを知っているので、バイアスがある。(神谷さん)
Q5. コペンハーゲン式デザイン思考が他のデザイン思考と違うところはどこか?

A5.
  各ステップに実際のユーザーとなる人を巻き込むPeople Centred Designが特徴。リサーチ、アイデーション、プロトタイプ作成後のテストに混ざってもらう。(木浦さん)
時にはプロトタイプを一緒に作ってもらうこともある。(神谷さん)

Q6. インタビューやアイデーションに一緒に参加してもらうユーザーへの対価は?

A6.
CIIDでは学生のプロジェクトでも予算がつき、その中からギフトを送ることもある。デンマークの人は気軽にインタビューに応じてくれることが多い(二人に一人は応じてくれる印象)。(木浦さん、神谷さん)
Q7. アメリカのデザイン思考との違いは?

A7. 資源や人口が多い国ではないので、プロダクトを作ってソリューションを提供するよりもサービスをアウトプットとして出すことが多い。ヨーロッパの中でもスタートアップの多い国だが、サイズ感としてはスタートアップの半数以上が5人以下の小規模ビジネスであり、スケールを前提としていないビジネスも多い。(神谷さん)

日本ではモノに落とすことが多い。デンマークは問題解決の意識が広い(ex. こういうサービスがあったら、街がこう変わるのでは)。
非常に早い段階でスタートアップに投資する(例えばY combinatorではプロダクトができた段階で投資するが、CIIDではその前の段階で投資を行う)。凄まじい利益を生まなくてもいいので、サービスとして成立させるにはどうすればいいかをよく考える。(木浦さん)

LEGOの国ということもあり、LEGOをよく使う(会場笑)。レゴシリアスプレイも、デンマークではキットを買えば誰でもファシリテートできる。ワークショップのアウトプットがサービス。もっと言えば生態系。デザイナーがブレストをすることもあるが、当事者がやることも多い。どのアイデアを採用するかの最終投票も当事者がする。(平野さん)
Q8. ユーザーが本当に必要とするかどうかも重要だが、一方でビジネスとして成立するかの評価も重要。CIIDのビジネス系のプロジェクトで、その辺りの評価まで行なって、クライアントに提案することもあるのか?

A8.
Design for Real Worldという授業があり、そこでどうビジネスモデルを作るかを学ぶことができる。事業化前提でプレゼンをすることもある。(木浦さん)
Q9. デザイン思考と実現化の間には大きなギャップがあると感じている。実現性を考えているチームとそうでないチームで、事業化へ進むかどうかの判断が変わってくる。すごく良いアイデアでも実現できないとなると落ちていく。一方で実現性を考えると丸まったアイデアが出てきがちになる。その辺りの"実現可能性"についてどのように評価しているのか。

A9. 
ユーザー価値を突き詰めるステージとビジネス価値を高めていくステージ、技術的な可能性のバランスをどうとるかは難しい問題。CIIDの場合は、ユーザー価値と技術的可能性を突き詰める。この2点を確認した段階で、ビジネスモデルを考え始める。(木浦さん)
どの国でどういうモデルでデザイン思考を使うのかによってカスタマイズをする必要がある。状況に応じて自在に変えられるスキルを持つ必要がある。(神谷さん)
Q10. 既存のサービスをどうやってスケールさせるかを考えているが、そうした時に今日学んだことを活かすにはどうすれば良いか?今日はどちらかというと新規事業を立ち上げるという内容だったので。

A10.
 どういう機能があればよりユーザー数が伸びるかという問いを立てると今日のワークショップが活きるのではないか。問いの立て方次第。(木浦さん)
デザイン思考は新規事業よりも既存事業の方が親和性が高い。課題が見つけやすく、それが論理的に説明できる。新規事業の場合、課題は仮説でしかなく説明が難しい。既存事業でデザイン思考を活かした成功例を多く作り、新規事業にも応用していくのが良いのでは。(神谷さん)
Q11. デザインの効果の定量化という点でなされている取り組みなどはあるか?

A11. ターゲットとなるユーザーにプロトタイプを見せた時のリアクション(発言など)を集める。(平野さん)
CIIDでもユーザーが何を言ったかは非常に重視しており、資料にもバンバン埋め込む。(木浦さん)

まとめと感じたこと

デンマーク式デザイン思考が、どのような価値観を重視し、何を目的として作られてきたのかがよく分かりました。人口、文化的背景、風土などは決して切り離すことができず、こうしたフレームワークを作ったり、導入したりする際には極めて重要だと考えます(前回の投稿で考察しましたが、普段使う道具一つをとっても、背景にある考え方が大きく違うのではないかと思います)。
日本企業でもデザイン思考を取り入れるところが増えてきていますが、それにより新規事業が打ち出せた、利益が上がったなどの声はまだあまり聞こえてこないような気がします。デザイン思考という言葉が一人歩きするなか、今一度何を目的としてデザイン思考を導入するのか、それが日本の状況や文化に合っているのか、きちんとチューニングされているのかといった議論が積極的に行われ、日本の組織に合ったデザイン思考がより浸透していくと良いと感じました。

最後になりましたが、木浦さんをはじめとするファシリーテーターのみなさま、木浦さんとともに企画してくださった坪田さん、会場を提供してくださったStudio Optさん、参加者の皆さんにお礼を言いたいと思います。ありがとうございました!


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ありがとうございます!
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Shuntaro Oribe

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