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大学の現場で、芸術祭を考える

昨日2019.5/28。筑波大学で、博士前期課程芸術専攻の授業をゲスト講師として行いました。「現代アート表現論&現代アート表現演習」の2枠で「さいたま国際芸術祭2020」、「中之条ビエンナーレ2017.2019」を中心に、芸術祭の現場から可能性と課題を学生の方と共有し、考える時間をつくりました。
                         



           
はじめに、自己紹介をし、これまでの作品制作のこと。また小学生の頃に夢中になって取り組んでいた新聞づくり、毎年広島で被爆樹木を撮影する活動を例に挙げ、アートプロジェクトについて話しました。
                                    
つぎに、芸術祭のイメージを学生に聞いてみました。
                                    
主な回答は、

沢山の芸術に関係のない人にも芸術を体験してもらう機会をつくるのではないか

沢山の人が来るので地域に活気がうまれたり、観光に貢献しそう

美術館やギャラリーのような場ではなく、広大な場所で作品を展示する

地域の人や場との関わりによって作品がつくられる

といった意見がでました。
 

                                                                       
そして、芸術祭の歴史の概説。
ヴェネツィアビエンナーレ、ドクメンタなど海外の芸術祭、日本の越後妻有の大地の芸術祭、横浜トリエンナーレを例に、芸術祭の開催意図や変遷を辿りました。日本では今日の芸術祭前夜の1991年にクリスト&ジャンヌ・クロードのアンブレラプロジェクト、94年のファーレ立川の取り組みなどもおさえつつ、今日の芸術祭百花繚乱時代をどう捉えるか意見交換。
                                                                        
どうしてこんなに芸術祭が各地で開催されるのか?

という学生の素朴な意見を軸に、中之条ビエンナーレ、さいたまトリエンナーレ、かがわ・やまなみ芸術祭の現場での経験を軸にしながら、芸術祭と一口に言っても、様々な開催目的や運営の形態があることに言及。
  



                    
その中で、学生のひとりが、筑波大学の学生が使われていない学生宿舎を作品発表の場として開催している展覧会『Hirasuna Art Movement ここにおいてみせる/みる』の取り組みを紹介。

「作品発表の場が無い中、自分たちの表現をする場を自らつくりたい!」と、芸術の専門の学生以外にも参加を呼び掛け50名以上が集まった活動をみせてもらいました。


ベッドと洗面所しかないミニマルな宿舎を展示空間とし、自らやりたい表現を自分たちの力でつくる動き、そしてその動きに様々な人が集い、多角的な意見が生まれている現場に、大きな可能性を感じました。




制作や日常生活の中で生まれる願いや課題をこうした表現の場をつくることで、他者と共有する機会を生み出す。またその経験を基にし、改めて課題を再構築していく。

それは各地で行われている芸術祭の現場とも通じるものが多くあると私は考えています。

またどこかの現場で再会できるのを楽しみに、あっと言う間のレクチャーが終わりました。


『Hirasuna Art Movement ここにおいてみせる/みる』展は6/2まで開催中!興味がある方は是非観に行ってみてください。
                                                                        
筑波大学
https://www.tsukuba.ac.jp

さいたま国際芸術祭2020
https://art-sightama.jp/

中之条ビエンナーレ2019
https://nakanojo-biennale.com

⚫︎写真作家・造形ワークショップデザイナー ・キュレーター・「時間」と「記憶」をテーマに制作。2012年〜ヒロシマの被爆樹木をフォトグラムで作品制作 ●中之条ビエンナーレ2019参加アーティスト ●さいたま国際芸術祭2020 市民プロジェクトコーディネーター