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フィリピンで感じる「時間」や「期日」に対する価値観や感覚の違い

南国には特有の時間感覚がある気がします。

多少、個人的な体験に基づく偏見が入っているかもしれませんし、必ずしも「南国」と一括りにする事は適切ではないと分かりつつ、どこか総じてのんびりしている気がしてなりません。
「南国」というか、暖かなラテンのノリというか、どこか「まぁ、多少食べ物や住むところがなくても、死にはしないよね〜」的な感覚というか。。。
対して、冬があり食べ物の蓄えや暖をとることができるシェルターがないと凍死してしまう、、、そんな危機感を持つ必要がある国とでは、やっぱり何か根本に流れる価値観に差がある気がするわけです。
私は登山をするのですが、夏山と冬山とでは緊張感が全く違うわけで、どこかそれに近い印象をもっているのかもしれません。

くどいようですが、あくまでも「気がする」だけです。特に学術的な根拠を調べた訳ではありません。つらつらと最近の体験や25年前の留学時代の出来事などを思い出すなかでの、まったくもって私自身の印象でしかないですww「いやいや、寒い国の人も意外とのんびりしてるよ〜」というコメントや学術的に検証された結果などがあればご指摘・訂正くださいませ。

例えば、先般の家探しの件があるわけです。
私からすると、「秋田犬がいるって言ったよね?サイズも写真付きで伝えていたよね?そもそも、君たちから確認してくれたよね?妻が来ているこの日に決めないと意味がないよね?」という状況だった訳ですが、結果は別記事の通り、行き当たりばったり。
結局、初回の(本当はここで決めきる予定だった)家探しの日に訪問した全てのコンドミニアムが秋田犬の受け入れを許可しておらず、当初予定から2週間ほど遅れて家を決める事になったのでした。結果、その後の予定が全て遅れ、慌てて家賃の入金のための海外送金手続きをする羽目になり、数日を要する海外送金が果たして入金期日迄に間に合うのか、、、と、かなりヒヤヒヤの綱渡りの状況。。。

同様に、Visaの手続きも本来2月頭からVISAの手続きを始める必要があったところ、いざ手続きを始めようとしたら「TIN(Tax Identification Number:納税者番号)が取得できていないので始められない。。。」と。

「え? だいぶ前に書類を送っていたよね?フィリピン渡航前に必要な準備は完了しているから、渡航後にパスポートの提出と書類へのサインだけで良いと言っていたよね?2月頭から始めないと4月1日の赴任開始日までにVisaの取得が間に合わないよね?」と、これまたフィリピン到着早々に一悶着あったのでした。結果、こちらもTIN取得にすったもんだがあって一ヶ月遅れでプロセスを開始することに。。。

この、計画通りに物事が進まない行き当たりばったりな状況に、この一ヶ月は本当にやきもきしていました。が、もはや悟りました。予定通りに進むことを前提にしていた自分が間違っていたのだと。最初からその期待値を持たず、「まぁ、何事も一回で思うように物事が進まないのが常だよね〜。2週間くらいバッファをみて考えておけば良いよね〜。」という心持ちが必要なのです。更に、「秋田犬はダメとコンドミニアムのペット登録証に明記されているけど、管理事務所にお土産でも持っていってニコニコっとお願いすれば大丈夫よね」「4月1日から正式赴任開始だけど、就労Visaがその日までに取得できていなくて多少先になっても、ニコニコっと『今、まだ手続き中なんす〜』って言えば大丈夫よね」くらい、ゆる〜く考えれば良いのです。

この感覚の違いを修正できないと、不必要に不安になったりイライラしたり、精神的に良いことがありません。しかし、この感覚で、そんな感覚を到底持ち合わせていないであろう日本のメンバーと一緒に仕事ができるのか。。。

言い換えると、日本とフィリピンが連携して一緒に仕事を進めるためには、日本側にその感覚を理解してもらうことが重要になります。逆にフィリピン側にも「きっちり期日を守ることへのコミット(守るためならある程度の残業も厭わず頑張ってやり切る!)」や「計画通りに進めるために詳細なWBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)に基づき進捗率をトラッキングすること」が日本ではスタンダードであることを理解してもらう必要があります。どちらか一方の感覚や価値観、仕事の型を押し付けるのではなく、お互いの歩み寄りの中で良い着地点を建設的に見つける必要があるわけです。

特に私が従事するシステム開発やシステム保守といったIT関連の仕事は、日本とそれ以外の海外で大きくプロジェクト・アプローチの文化が異なります。日本は「UKEOI(請負契約。成果物に対して完成責任を負い、成果物への対価を固定金額で支払う)」文化、海外は「Time & Material(工数単価方式。実際に発生した工数x単価に対価を支払う)」が主流の文化です(もちろんFixed Fee型でのサービス契約もあります)。正直言って、どちらのアプローチもメリット・デメリットがあり、一概にどちらのアプローチの方が優れていると言えるものではありません。

特に、私の赴任先のフィリピンのチームでは、これまでUSやヨーロッパなど日本以外の地域とのプロジェクトが主流だったため、Time & Materialでのアプローチが染み付いています。どちらかというと、そちらの方がグローバルスタンダードと言えます(但し、前述の通り、良し悪しは別議論)。そんな中で聞こえてくる、フィリピンメンバーの悲鳴。。。

「なぜ日本のチームはそんな細かいことにこだわるのか?」
「当初の依頼から変更・修正依頼があれば、期日を延ばして対応することになるのが普通。なぜ残業して当初の期日内に対応しなければならないの?」
「日本のPMから『なぜ遅れるのか?』『なぜできないのか?』『どうすれば期日通りに対応できるのか?』と問い詰められて怖い。。。もっと、和やかに言えないものか。。。」
などなど。

一方で日本側からは、
「言った通りにものごとが進まない」
「期日を超えることが多く、計画修正に迫られる」
「問い詰めている訳でなく、『期日を守る=コストを予算内に収める』ための対策を考えたいだけだが、フィリピン側がどう対処したいのか分からない」
といった、フィリピンのメンバーとプロジェクトを進める難しさを実感しているフィードバックを多く聞きます。

誤解無きようにお伝えすると、フィリピンのメンバーは相当頑張って日本側のやり方に合わせようとしてくれています。残業も厭わず、なんとか日本の期待値に応えようとしてくれています。それだけに、間に立つ私としては、どちらかというと日本側がもう少し寛容に、余裕を持って、「今までのやり方」にこだわらず新しいプロジェクトの進め方をフィリピン側と一緒に考えられるよう、歩み寄っていってほしいと切に思う今日このごろです。
もちろん、日本のアプローチに良いところがあるのも事実。他地域と比較して高い利益率を維持できているのは、細かく厳しいタスクと期日の管理手法やそれに追従するマインドがあって生み出される高品質なデリバリー手法の賜物であることは間違いありません。とはいえ、あまりに今までの手法にこだわりすぎると、ともすれば日本の人材が枯渇していく中、ついてきてくれる海外の人材もなく世界から取り残されていくかもしれない、そんな危機感も覚えずにいられません。

フィリピンに来て一ヶ月半。
少しずつフィリピンと日本の関係が見えてきた中での個人的所感でした。
引き続き、フィリピンと日本のブリッジになり、お互い気持ち良く仕事ができる環境構築に努めたいと思います!

ではでは、今日はこの辺で。
Sana Makita Kitano muli! (See you again!)


追記:
セカセカせず、のんびり気質なフィリピンですが、ファーストフードくらいはもう少しスピード感をもって欲しいかも。。。

ファーストフードのお店でオーダーしても、大抵「15分〜20分、料理に時間を頂いています〜♪。」とにこやかなマニュアル回答があり、実際それくらいかかって出てきます。お昼時、急いで次の会議までに食事を済ませる必要がある時は、やっぱり「早くしてくれ〜」と心の中で叫ぶ、心底日本人な自分なのでした。