ニートと人魚とアゲハ蝶
ヒラリヒラリと舞い遊ぶように姿見せるはエリートニート。
初夏の風の真ん中ルミネの下で。
アゲハなニートはマーメイド。
都会の酸素は汚くて、肺と履歴が荒んでいくのよ人魚姫。
人間に恋した人魚姫。最後は泡になるんでしょ?どうせ同じ泡ならばアルコール度数をちょっと頂戴。
彼女に尋ねてみた?どこまで行くのかと。いつになれば終わるのかと。
嵐のあの日のあなたに釘付け。初めて知った恋心。高鳴る鼓動を抑えきれずに、黙って海を飛び出した。あなたの居場所は知らないけれども、この両脚が助けてくれる。地上を自由に動けるならば、私の声などお安いものよ。
人間界の重力も、不便で可愛いハイヒールも、あなたを見つける為ならば、どんなことでも我慢出来るの。
恋に恋して人魚姫。あなたは一体どこにいるの?ハッピーエンドはすぐそこなのね?待ってて私が見つけてあげる。あなたが手招くネオン街、こっちへおいでと微笑みかける。憧れていた両脚も、いつしか黙って開く日々。どういう意味か知らないけれども、全部あなたの為なのね?これが2人の幸せなのね?
涙を流して人魚姫。まだまだあなたに会えないの。知らない男がたくさん来るけど、あいつもあいつもあなたじゃない。
それでも信じて人魚姫。物語の最後には、王子様が迎えに来てくれるから。
終わりなどないのよこの恋は。終わらせることはできるけど。
あなたに逢えたそれだけでよかった人魚姫。初めは全てが光に満ちてた。夢で逢えるだけでよかったのに、わがままだったの人魚姫。愛されたいと願ってしまった、都会が表情を変えた。世の果てで混じるのは空と海とだけ?真っ直ぐあなたを想うほど、私の身体は落ちていく。
少し疲れて人魚姫。もしこれが戯曲でも私あなたに触れてみたい。恋した相手が悪かった?違うの私は幸せよ。声も時間も他にもたくさん、売ってきたものはあるけれど、これも全部運命だから。
最後に笑って人魚姫。あなたが望むならこの身など、いつでも差し出す覚悟は出来てるし、だからここまでやってきた。降り注ぐ火の粉の盾にもなれるし、邪魔だというなら泡にでもなれるの。
あなたに恋して人魚姫。どうして近づけないのかな。いつまでここにいるのかな。あなたはここの王子様。都会の酸素は汚くて、少しでいいからお水を頂戴。あなたの愛もついでに頂戴。まだまだ私頑張れるから、一度でいいからその肩で、都会の人魚を抱きしめて。
アゲハ蝶を聴きながらクリームソーダの泡を眺めるニートの走り書き。
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