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試行錯誤が作り上げた”最高のゼルダ”、ティアーズオブザキングダム

ちょうどゼルダ新作が出て、1か月が経過した。
私はこのゲームに死ぬほどハマり、200時間以上プレイしてクリアした。
なので、感想記事を書こうと思う。ネタバレに関してだが、ストーリーの内容には一切触れないようにレビューを書いたので、安心してほしい。ただ、挿入されている画像に一部”結構プレイしないと出てこない装備”が出てくるので、気になる人はブラウザバックしたほうが良いかも。

一言で言うと
ティアーズオブザキングダムは
①前作ブレスオブザワイルドの改善+拡張
②今までのゼルダでの試行錯誤が結実した

作品だと感じた。

地上(ハイラルの大地)

地上は一言で表すならば拡張版ブレスオブザワイルドだ。前作は知らない場所、見たことない場所を開拓していく楽しさがあった。今作はベースは前作と同じハイラルであるものの、ハイラル全土の地形に何かしらの変化が見られる。そのため、ブレワイを楽しみ尽くした私でも、今作のハイラルに新鮮味を感じることができた。

カカリコ村は遺跡の飛来により見た目が大きく変わっている。

前作の大きな魅力として、気になったところにピンを打ち、地図を開きながら「あそこにはどうやっていけるんだろう」と試行錯誤しながら辿り着く過程が楽しいというのがある。これはロードが挟まずどこまででも行けるというオープンワールドの良さと、目標達成のために試行錯誤するというゼルダの持つ謎解き要素が組み合わさった素晴らしいゲームデザインだ。

今作もその楽しさは健在である上に、むしろ強化されている。登る、走るだけではなくクラフト要素を活かして車を作ったり、船や飛行機で向かうこともできるだろう。空の上もあるのだから、空島の祠や監視塔から飛んで行ってもいい。

城も山のてっぺんも、見えるところならどこでも行くことができる

このようにフィールド全体が謎解きであるというコンセプトはそのままに、それに加えて前作を楽しみ尽くしたプレイヤーも楽しめるよう、ハイラルは大きく変化している。

例えば前作のゲルドキャニオンは閑散とした荒野であったが、今作は気候の変化により川が発生し、ゾナウギアを生かした新たな遊びが生まれている。

また、各地に洞窟や井戸、イーガ団のアジトなどが設置されており新規プレイヤーはもちろん、前作をプレイした人にも「あそこって今作はどうなってるんだろう?」と思わせてくれる。

前作のスタート地点だった回生の祠。今作は草に覆われているが、中に入ってみると….

そんなハイラルの大地はただ広大なだけではない。オープンワールド作品はシームレスな旅が楽しめる代わりに、どうしても移動時間が長くなってしまいがちだ。「ただ世界が広いだけで、中に何も詰まっていない」と評されるオープンワールド作品も多々ある。それに対してゼルダの伝説は「イベントや遊びを徹底的に詰め込むことで、常にプレイヤーに新たな発見をさせ続ける」というアンサーを提示した。一歩知らないところに足を踏み出すと、敵の拠点にサブイベント、100を優に超えるミニダンジョン、隠された宝たちがプレイヤーのもとに飛び込んでくる。一度通ったところも、再び探索してみるとまた新たな発見があるほどだ。前作ブレスオブザワイルドでもマップの密度が高いことは評価されていたが、ティアーズオブザキングダムではそれらが前作以上の密度で、なんなら空も地底もあるので前作以上の規模であなたに襲い掛かってくる。このゲームをプレイしていて退屈になることはない、むしろこの世界に睡眠時間を削られる心配をしたほうが良い。

またサブイベントに関しては膨大であるためか、その発生する場所に関するヒントをnpcが教えてくれることも多い。親切設計である上に、npc全員に話しかけたくなるような動機付けも効果的に行えているのがこのゲームのサブイベントの良いところだ。

npcがサブイベントの発生場所のヒントを与えてくれることも

npcに話しかけるだけでなく、各地の馬宿や集落には
・料理のレシピ 
・桜の木が生えている場所のヒント 
・イーガ団のアジトの場所
・魔物の集落の場所
などの張り紙があり、テキスト以外でもイベントに関するヒントを与えている。これらを見た後、地図を開き実際にその場所に行ってみる(試してみる)ワクワク感は、プレイヤーをハイラルの世界に没入させる効果的な仕掛けとなっている。

これを頼りに龍の涙を探す

上空から眺めるハイラルは絶景だ

空は地上とシームレスに繋がっており、
・ストーリー上で通る大きな空島(ダンジョン含む)
・その他の小さい空島
が点在する空間だ。空は(当たり前だが)地上や地底と違い陸路で到達することは不可能であるため、どのようにして目的地に到達するのかを考え、実践する遊びとしても機能している。空へ浮上する手段はもちろん一つではなく、監視塔から上空へ飛んで行ったり、落ちてきた遺物にモドレコをして登っていく、飛行機を作るなど…今の自分が持っているモノ、できるコトから逆算してどのように空島にたどり着くのかを試行錯誤する過程はいかにも”ゼルダらしい謎解き”だ。

加えて監視塔からの発射や遺物での上昇は、空への探索の足掛かりとなるだけでなく、一度地上を空から見渡し「次はどこへ行くのが面白いかな」と考えるきっかけになる。起動した空島の祠は、辺り一帯の地上にロードを挟まず下りていくことができるので、地上探索の拠点にもなるだろう。こういった空と大地をシームレスに行き来し探索を進めていくというゲーム体験は、スカイウォードソード(2011年)でやりたくてもできなかったことが、ハードの進化によりついに実現できたように感じられた。(これがスイッチで実現できちゃってるのも正直驚きだが…)

スカイウォードソードでは空島「スカイロフト」を中心に、地上の3つの地方を冒険する。シームレスではないが、wiiリモコンプラスを使った感覚的なアクション・謎解きが楽しめた。

空にはストーリーで通る空島・ダンジョンのほかに
・祠の設置された小島
・謎解きやボスとの戦闘によって、宝の手に入る小島
がなどが主に存在する。

特に「古びた地図」は面白い要素だと思っている。これは空の宝箱から手に入り、地底にある装備の入った宝箱の位置をバツ印でマップに示してくれるというものだ。地底探索は真っ暗で、はじめてくる場所はマップもなしに進んでいく心細いものだ。だがストーリーとは別に「ここに来ると面白いものがあるぞ!」とゲーム側が目標を提示してくれると、地底を探索するのが楽しみになるし、道中もワクワクする。地上にも「ラムダの秘宝」という似たようにマップにバツ印でレア装備の場所を示してくれるイベントがあり、これもまた地上での探索を面白くしている。古びた地図をゲットして、バツ印の場所へ向かうため地図を開き、宝のありそうな場所を探している…..そんな瞬間のプレイヤーはさながら”冒険者”だ。

このような「宝のありかを示す地図を見つけて、その場所に行ってみる」という遊びは、風のタクト(2002)のトライフォース集めを思い出させる。

「風のタクト」は2002年のゲーム。大海原を旅しながら、島影が見えたら行ってみるというデザインは、ブレワイで実現したことの片鱗が見えている。

トライフォース集めとは、ストーリー終盤の「宝のマップ」をもとに、トライフォースの欠片を集めて完成させるというイベントだ。宝探しとして確かに楽しかったものの、「海図を見ながら宝箱を探し当て、それを開けるとまた海図が出てくる…」とか「船の進路を変えるたびにタクトを振らなくてはならない」など、ストーリーでやらされるイベントとして合格点かどうかで言えばちょっと微妙だった。(ちなみにwiiUのリメイク版ではかなり遊びやすくなっている。 青沼氏「あれは結局のところ,何かにアプローチするまでのプロセスが長すぎたんですよねぇ……。」)

ティアキンの古びた地図は、そういった風のタクトの反省点を活かし、楽しい部分だけをうまく抽出しているように感じた。そもそも古びた地図自体ストーリー上でそれを強制しているわけではなく、あくまでサブイベントの一環でプレイヤーの「やりたい、見つけたい」という気持ちを前提に動き出す遊びだ。また、宝探しイベントが空と地底を探索していく動機のひとつになるというのも秀逸だ。風のタクトで得たフィードバックが、令和のゼルダの試みである「空と地上、そして地底をシームレスにつなぐオープンワールド」をより面白くすることに貢献している。この点もまた風のタクトでやりたかった遊びを、長い時を経てついに実現できたと言えるのではないだろうか。

地底

ネタバレを一切踏まずにこのゲームをプレイした人は、地底の存在とそのデカさに驚愕したのではないだろうか。ハイラル各地には地底に繋がる禍々しい大穴が存在おり、その先にはなんとハイラルの大地と全く同じ大きさの地底世界が存在している。

地底には瘴気(食らうとリンクの体力の最大値が削れる)を纏った魔物がおり、ある程度の行動制限を掛けられながら探索をすることになる。

地底は地上とは違い、探索していない場所は深い闇に閉ざされている。基本的には、発光するアイテムを用いながら、オレンジの光を発する大木の根を目指し、道中の遺跡やイーガ団基地を探索するという比較的シンプルな構成となっている。

地上と同じ広さではあるものの、サブイベントのようなものや、コログ(収集要素)は地底には多くない。このゲームは地上と空がかなり盛りだくさんなので、地底がシンプルな作りなのは個人的にはちょうどいい濃度だと感じた。

特筆すべきは、地底がある種のゾナウギアチュートリアルになっていることだ。地底では、ゾナウギアとイーガ団を巡る長めのイベントが展開される。

地底に存在するイーガ団の基地。制圧することで設計図を手に入れられる。

イベント内では、「ブループリント」という能力と、「設計図」と呼ばれる乗り物や機械のフォーマットのようなものが貰える。ブループリントは自分が一度作ったメカと、設計図に記された乗り物などを自動で作り上げてくれる機能だ。設計図は地底各地のイーガ団基地でも手に入れることができ、加えて地底にはリンクの使えるバッテリーを増やすためのアイテムもあるので、地底を探索すること自体がうまくゾナウギアを使いこなすことに繋がっていくようになっている。

前作のイーガ団はストーリー中のステルスイベントとしての役割が強かったが、今作はゾナウに関するイベントを通して彼らが深掘りされるようになっている。他にもイーガ団に関する面白いイベントがいくつかあるので、ぜひプレイして今作のイーガ団もボコボコにしてほしい。

”リンク”する世界

空も地上も地底も、それぞれが独立して存在しているわけではなく、一つ一つがリンクした遊びになっている。空で手に入るヒダマリ草は瘴気に満ちた地底探索には重要だ。古びた地図は、危険な地底を探索する大きな動機になるだろう。逆に地底で手に入る数々のゾナウ設計図は空や地上の行動範囲を広げてくれる。加えて地底で採掘できるゾナニウムはリンクの持つ電池を強化できる上に、ブループリントの材料となる。そして地底を安全に探索するための光源は地上の洞窟や井戸に群生している。

空を探索しやすくするためのリソースは地底にあり、地底を探索しやすくするリソースはまた別のところにある...というように、このゲームでは探索に必要なリソースがうまくマップ全体で有機的に繋がっている。

ゾナウギアを動かすために必要なバッテリー。これは地底に行くことで要領を増やすことができる。引用(https://www.nintendo.co.jp/interview/totk/04.html)

新しい能力

前作の能力は主に祠内で使うことが多かったが、今作はより汎用性が高まり、あらゆる状況で使うことができるのが面白い。ウルトラハンドはマグネキャッチの上位互換で、動かせるものならなんでも持ち上げ、引っ付けることができる。

動かせるものをくっ付けられるウルトラハンド、前作のマグネキャッチは金属のみだった。

トーレルーフは、天井さえあれば潜って上に抜けることができるという、ゲームがゲームならシステムごと破壊してしまいそうなとんでもない能力だ。そしてモドレコは物体の時間を巻き戻すことができる。

空から落ちてきた遺物にモドレコして、空に上昇できる。他にも、戦闘に使ったりなんてことも。

今までのゼルダの謎解きは、自分の持つアイテムをダンジョン内の仕掛けに一つ一つ当てはめていくようなイメージだった。2006年発売のトワイライトプリンセスではダンジョンごとにどんどん新たなアイテムが登場し、物語終盤になるとアイテムポーチがとんでもないことになる。「アイテムがたくさんあるのはいいけど、特定のダンジョンでしか使わないもんもあるぞ!」なんていう批判もあった。

トワイライトプリンセス(2006)、画像はHDリマスター版。新しいダンジョンに行くたび新しいアイテムがもらえるというデザインは、それはそれで楽しい。

しかし今作は、4つの能力を全て組み合わせて回答を探していくような謎解きになっている。同じ能力をずっと使い続けるのはだんだん飽きてきそうなものだが、4つの能力全てが汎用性が高く、100以上の祠で違った能力の使い方をするので謎解きがワンパターンになっていない。

また祠やダンジョン内だけでなく、フィールドでもこれらの能力を使う機会は頻繁に存在する。例えばトーレルーフはダンジョン内だけでなく、洞窟や井戸から脱出する際にも使える。他にも天井のような地形があれば何でも登ることができるので、移動の際に頻繁に使用する。ウルトラハンドはフィールド上でも車や飛行機を組み上げたり、物を運んだりすることができる。そういった点で時のオカリナやブレスオブザワイルドと比べても、アイテムそれぞれが「どうすれば冒険の中でずっと使ってもらえるのか」を考えて作られているように感じた。

スクラビルドは、このゲームの戦闘を更に面白いものにし、前作の
・「魔物素材を使う場面が少なくて、システムとして活かせていない」
・「さまざまな武器があるけれど、攻撃力の差しかないので王家や獣神を使ったほうがいい」
という課題を一気に解決している。

持っている木の枝と、落ちている岩を
くっつけて攻撃力と耐久力が上がる!
「プロデューサーの青沼英二がプレイする『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』」

スクラビルドは剣先や矢先に素材を付けられるという能力だ。リンゴやバナナ、魔物の角からダイヤモンドまであらゆるものをつけることができ、それぞれに攻撃力や効果が付与されている。例えば矢先に魔物の角をつければ攻撃力が上がるし、炎の素材を付ければ矢に炎属性を付随させられる。

これが戦闘面を前作よりも格段に面白くしている。前作では、剣はその場に落ちてるものを拾って壊れるまで使うしかなかった。しかし今作は拾った剣に自分で好きなように素材を付けて使っていくことになる。魔物の角を付けて攻撃力を上げるのもよし、槍に槍を付けて超長い武器で敵をいじめるのもアリだ。「武器をどんな組み合わせで、どう使うか」という謎解きをプレイヤーに与えてくれるのがこのスクラビルドだ。

シュールな見た目になるものもあれば
かっこよく見た目が変わるものもある

前作ではレア度の高い武器や、強い敵の持っていた武器が基本的には強く、騎士シリーズや各種族の武器はそれらよりも弱いというようなイメージだった。今作の王家シリーズや騎士シリーズはスクラビルドしなければすぐ壊れてしまう代わりに、シリーズそれぞれに特殊効果が存在している。例えば王家の剣はラッシュ時の攻撃力が上がり、ゾーラの剣はリンクが水に触れていると攻撃力が上がる。またシリーズ同士の武器の攻撃力の差がそんなにないことから、「プレイヤーはどの武器を柄(つか)として、どの素材を剣先とするのか」というパズル的な要素が戦闘において大事になってくる。ラッシュで戦うのが気持ちいいなら王家シリーズに強い魔物素材を付けまくればいいし、火山の敵を楽に倒したいなら剣先に氷の素材を付けるという工夫もできる。プレイヤー自身がどう戦いたいのかというところから謎解きが始まるのが、このゲームの非常に面白いところだと私は感じた。

親切な誘導

今作ではパラセールを取得した後、npcからやたらとヘブラ地方に行くことを勧められる。監視塔の人や新聞は、へブラ地方に異常気象が発生していることを教えてくれるし、シロツメ新聞社のペーンも初対面から「リトの村の近くにある新聞社に行くとええぞ〜」みたいなことを言ってくる。また龍の涙のイベント(ストーリー上重要)自体も、へブラ地方に行くついでの忘れられた神殿で発生する。

序盤はリトの村近辺への誘導が多い

そういったnpcからの誘導もあってかはじめにリトの村から攻略したプレイヤーも多いのではないだろうか。はじめに誘導するだけあってか、ヘブラ地方のクエストはそんなに難しいものではなく、ボス戦も空中戦をひたすら行うシンプルなものになっている。このように、今作は広大な世界でプレイヤーに目的を身失わせず、初めの頃はリンクの強さに応じた場所に誘導する配慮が多くなされている。

オープンワールドは移動時間がどうしても長くなり、「何をしたらいいのかわからないからやめた」というユーザーが出がちなジャンルである。特に初めの頃は、少し街道を外れると強い魔物にワンパンされてしまいがちだ。

任天堂のタイトルは、ゲームに慣れていない人も多くプレイするので、「ゲームをどう進めるかは自由!でも誘導はしっかりさせてもらうぞ!」という今作のデザインは親切で、尚且つプレイヤーの自由を奪わない良いデザインだと感じた。

”反応”のゲーム、ゼルダの伝説

ゼルダは、プレイヤーの起こした行動に対して、細かくゲーム側がリアクションをしてくれるゲームだ。

『ゼルダ』らしさとしてよくできているなあと感心したのは、遊びながら
「こうやったらどうなるだろう?」と思ったときにそのリアクションがきちんと用意されていることなんです。たとえば、ダンジョンの中に何かの仕掛けがあって、「重いものをこの上に置いたら落ちるんじゃないか?」
と感じると、ゲームがそういう発想に応えてくれる。その懐の広さというか、選択の幅広さ。それがあることで、やらされている感じじゃなく、
自分が考えて、経験して、進んでいくという感覚がユーザーの中に生まれていくんだと思うんです。人それぞれの解き方があると、ユーザーが感じること、それが『ゼルダ』らしさなんじゃないかなと考えながら作っていました。

任天堂ホームページ 社長が訊くWiiプロジェクト 第一回「言語化されていない『ゼルダらしさ』」https://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol5/index.html

時のオカリナでは看板を剣で切り刻むことができ、その破片は水面に浮くようになっているし、釣り堀では竿をおじさんの頭めがけて投げると、帽子を奪うことができる。ゼルダの伝説はシリーズを通してプレイヤーの「こうしたら、どうなるんだろう?」という興味に、ゲームの中で答え続けてきた。長い開発期間を経て作り上げられたティアーズオブザキングダムでは、この”リアクション”がさらに膨大に、磨きがかかっている。

まずは読者の皆さんには、ゼルダを起動し、着ている服を脱ぎ棄て、真っ裸で街を歩いてみてほしい。こいつは何を言っているんだと思っただろうが、パンツ1丁になることでnpcたちのリアクションの細かさに驚かされる。

英傑流セクハラ
学校に現れる、マッパの変態リンク
君たちも服着てへんやん
パンツについても言及される

前作もnpcによってはパンツ一丁に対するリアクションが設定されていたが、今作では明らかにその量が増えている。普通にリンクのことを変質者だと思ってくる人や、風邪のにならないか心配をしてくる人、なんか感心してくるひとまで反応も人それぞれだ。あらゆるnpcの前でとりあえず脱いでみたくなるほどにはリアクションが豊富であり、もはや一日これで遊べそうなレベルである。ちなみにハイラルの女性が多く集まるある場所では、「そりゃ、街に突然パンイチの男が現れたらそうなるよなぁ」というリアクションが設定されている。ぜひみなさんの手で、いやマッパで体感してほしい。

あんまりマッパのことについて書きすぎると読者の方から変質者だと思われる皆さんの楽しみを奪ってしまうので、他のリアクションにも言及しておこう。例えばロース岩料理屋を営むゴロン族に、ロース岩をスクラビルドした武器を持った状態で話しかけると特別なセリフを聞くことができる。

申し訳程度のゴロン要素

このように、広いハイラルは状況やリンクの行動に応じて細かくリアクションを返してくれる。広大なハイラルが返してくれるリアクションの豊富さは、こんな短い記事に収まる量ではない。長年のゼルダシリーズが大事にしてきた、この”反応の細かさ”はゲームを現実により近いものにし、没入感を高めてくれる。時が経ち、ハードが移り変わっても、ゼルダの世界をゼルダらしくさせている要素を見失わずにゲームを作り上げてくれる開発チームの皆様には畏敬の念すら感じる。次に読者の皆さんがゼルダを起動するときには、現実世界の自分よりももっと自由に、いや傍若無人に振舞ってみてほしい。ティアーズオブザキングダムは、そんなあなたの行動にしっかりと答えてくれるはずだ。

課題点

switchで発売されている以上、スペックの限界を感じる場面はたまにある。例えば草木が燃えているときや、雨が降っているときにかなり重くなる。また、ロード時間の長さも気になると言えば….気になる。ブレスオブザワイルドの発売時よりは、改善されてはいるものの(ブレワイに関しては後に修正が入った)昨今のAAAタイトルに比べるとやはりロード時間の長さは目立つ。

ただ逆に言えば、ティアキンは「switchにしてはめちゃくちゃ頑張っている方」でもある。むしろゲーム体験を損なわせずに、ここまで多くの要素を詰め込めたスイッチのゲームは決して多くない。ウルトラハンドやトーレルーフなどの複雑な能力を多数実装している中で、ここまで目立つバグが存在せず、尚且つ美麗なグラフィックを実現できているのはむしろ褒めるべきことなのかもしれない。

「このゲーム、ほんとにswitchで出てんの!?」とよく言われる

実際、switchという広く普及したハードで発売しているからこそ発売から3日で1000万本という驚異的な売り上げを叩き出せたともいえる。(ファミ通.com「『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』発売3日で世界販売本数1000万本を突破。」)

課題点といいつつも、若干ゼルダを褒める感じになってしまったが次は純度100%の不満点だ。「祠に隠された宝箱の報酬がそんなにおいしくない」という点は正直気になる。祠に隠された宝箱は、場合によってはゴールするより難しい。一応マップに祠内の宝箱を開けたことは記録されるとはいえ、せっかく頑張って手に入れた宝箱の中身がちょっとした薬だったりするのはちょっとがっかりする。砕魔の祠は宝箱を見つける謎解きも面白いので、やはりその報酬ももう少し良いものであれば嬉しかった。

最後に

ゼルダの伝説はブレスオブザワイルドの時に、「ゼルダのアタリマエを見直す」ことを取り組んだ。その結果、非常に自由度の高い新たなゼルダを生み出すことができたわけだが、それはブレスオブザワイルドだけの功績ではない。初代ゼルダの伝説(1986)や風のタクト(2002)では、世界を自由に探索するオープンワールド的な遊びをずっと前から模索していた。時のオカリナ3D(2011)やスカイウォードソード(2011)では新規プレイヤーに向けて、最後まで遊んでもらうために「謎解きの答えを教えてくれる施設」を設置していたこともあった。

こうしたシリーズが積み重ねてきた試行錯誤、そしてブレスオブザワイルドでやりたくてもできなかったこと、それらをまとめて結実させたのが今作「ゼルダの伝説ティアーズオブザキングダム」なのだ。

そんな今作は、間違いなく今までのシリーズで一番ゼルダらしく、自由度が高く、親切さと遊びごたえのバランスが良く、ボリューミーで、それでいてゲームシステムとストーリーが見事な親和性を持つ、最高に面白いゼルダだ。

今作を遊んだことがない人、プレイしようか迷っている人には強くこの作品をお勧めしたい。任天堂が長い歴史をかけて作り上げた傑作であり、遊んで後悔することは絶対にない。

ぜひ自分の手でプレイして、ゼルダが積み上げてきた歴史を体感し、広大なハイラルの中であなただけの冒険譚を作り上げてほしい。

ハイラルって、美しい。



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