鮨屋No.1決定戦 ベストヤングプレーヤー賞〜僕が若手鮨職人の店を好きじゃない理由〜

世は空前絶後の若手鮨職人ブームだ。
近年、若手鮨職人が相次いで独立を果たしている。
そして驚くべきことに、そのほぼ全ての店が開店直後からグルメサイトやSNS、グルメ雑誌で絶賛のコメントとともに紹介されている。
ひと昔前は「開店直後は大変でした。お客さんが誰も来ないから、仕入れた魚が毎日のように残っちゃって・・・」、「お金がなかったから、店の2階の屋根裏で寝泊まりしていました」、「お客さんは大家さんだけという日が年間で100日はありました。いただいたお金は全部家賃になっちゃって・・・」みたいな苦労話がデビューしたての鮨屋にはつきものだったが、今ではそれも過去の歌だ。
ちなみに、前述のエピソードは順に『鮨 水谷』、『さわ田』、『日本橋蛎殻町 すぎた』のものである。
そのような時代の追い風を受けて活躍する若手鮨職人の鮨は、一体どんなものなのだろうか?
鮨 一幸』、『東麻布天本』、『鮨 いちかわ』、『鮨 あらい』、『ます田』、『鮨 はしもと』、『鮨 りんだ』、『すし家』、『鮨竹』、『くろ﨑』、『海味』、『鮨 たかはし』、『鮨 おとわ』、『たかおか』、『鮓職人 秦野よしき』。
僕はこの1年間で計15の若手鮨職人の店を訪れ、鮨“食”人としてその店の鮨をパクパク食べまくってきた。
そして今日、そのなかのNo.1を発表する。
本賞は、若手鮨職人が大将を務める店のなかで最も素晴らしいと思った店に贈られる賞である。
なお、18歳で高校を卒業してから鮨屋で修業を始めるというのが現代の鮨職人の一般的なキャリアだとすると、そこまでと同じ時間を鮨に費やした36歳という年齢がひとつのボーダーラインになるだろうという考えから、僕のブログでは若手の定義を36歳以下とした。


その発表をする前に断っておくと、上述の世の流れとは裏腹に、僕は若手鮨職人の店が苦手だ。
むしろ、好きじゃないと言ってもいい。
その理由は、次の3点に集約される。

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