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非現実空間「トランプルーム」一時休業について


「どうしよう、すーさん助けて」

そのコールがあったのは昨年末のことでした。

一時間ごとに状況が変わるカオスなタイムラインのなか、イチ客として、私たちがこの空間のためにしてきたこと、思いや経緯をあくまで私個人の所感で記します。これを読むことでひとりでも多くの方にこの場所を知ってもらいたいのと、この出来事を知ることが今後の何かに役に立てばと思って書きます。

1.元祖・非現実空間TRUMP ROOM

壁中にびっしりと飾られたアンティークの鏡に無数にぶらさがるシャンデリア
ニプレスだけでゆらゆら踊る美しい女性、頭部にまでピアッシングがされたお兄さん
1メートルほどの規格外ハイヒールで天井をつたいながら歩く黒いピエロ、歩行を手伝う全身ピンクの女の子
かと思えば壁と一体化しそうなほど永久に動かないスーツの男性
激しく鳴り響くエレクトロミュージック、覆面のDJ
壁から飛び出した鹿の首にかけられた誰かが落としたフェイクパールのネックレスは揺れて
ねえ、私のケータイ知らない?背中から羽が生えた黒いルージュの美人に甘い香りを吹きかけられ戸惑う

男女の隔たりはもちろんのこと、おしゃれとか日常のあれこれとか、そういった次元を超えた世界
ドレスアップが共通言語、自分が良いと思う格好をすることでのみ市民権を獲得できるような空間

ド田舎に居場所を見出せず、花の都トーキョーに飛び込んで間も無く
私の触れた花はさしずめラフレシア、はたまた青いケシ?
とんでもない場所に出会ってしまったのでした。


その場所の名前は
「TRUMP ROOM(トランプルーム)」
幻のようなこの空間がオープン以来12年つづけてきた歩みを止め
この夏、眠りにつこうとしています。


2.そこに在る以上終わりがあるということ

私たちはこれまで生きてきて、大小様々な出会いと別れを繰り返してきました。
とくに別れは突然に訪れることが多く
ただただ、惜しむしか手立てがなく
そのために何ができたか、もう今となってはあとの祭り。
なんにもできなかったし、気づけなかったことも悲しいし
惜しむ気持ちを声に出すこと自体申し訳なく、ただ口からこぼれおちそうな悲哀の言葉を静かにそっと飲み込むしかない
そういう想いを少なからず抱えてきたのではないでしょうか。
私はそうです。

在る以上終わりがあることは必然なのに、なぜ永遠を疑わなかったのか。

だから、冒頭のSOSの言葉をもらったとき
本当に感謝の気持ちでいっぱいになりました。
ただ失って立ち尽くす思いは、もう二度としたくないと思ってたから。
その連絡はTRUMP系列の店舗を運営する女の子、モアナからでした。

3.なんでこんなことに?みんなで集まって考えた

同じようなSOSがTRUMP ROOMによく遊びに来ている仲間たちにも回っており
私たちは集まり、ただ純粋に遊びに来ていたこの場所の状況を整理して
これからどうしていけば良いのか、自分たちの遊び場を守るために何ができるのかをたくさん考えました。

場所も人も、永遠などはなく循環させていかなければなりません。
親から子へ、ちょうどそのバトンを自分も持っています。そうしてつないでゆくものです。
かつてこの場所に遊びに来ていたこの場所では、いわゆる若者を中心としたパーティーが毎週末盛んに行われていました。
私たちの上の代からそれは続いていました。
そうしてその若者たちはだんだんと大人になり、就職をして家庭を持ち・・・などなど
卒業をしていきます。

さて、あらたな入学生として若者たちが入ってくるかと思いきや、近年パーティーの数は減る一方。

なぜか・・・
それは


[1]娯楽の場所がオフラインからオンラインに移行したこと
[2]お酒などの嗜好品にかけるお金がない&苦手

くるべき入学生がとんとこないのは
おおまかにこれらが原因ではないかと私たちは考えました。
さらに・・・

[3]箱側のスケジュール管理に不安がある
[4]音響設備など環境に不安がある

世間の流れのほかに運営側のこういった要因も相まって
TRUMPROOMで行われるパーティーの数は減少の一途を辿っていったと考えられます。

[4][3][2]は私たちにはどうすることもできない
[1]を逆手にとってオンラインに流すネタを仕入れに来てもらおう。インスタ映えする撮影スポットとしてあたらしいお客様にきてもらうことはできないか。まずはこの場所を知ってもらおう。
さらに当面の緊急的に必要な金額をどうにかすべくチャリティーイベントを開催し収益をすべて充てよう。などなど思いつく限りの案を出し合いました。


4.私たちで、できることを実行した

どうあがいてもお客でしかない私たちにできることは、
[1]のみ。
フリーマーケットイベントを組みました。結果的に総勢500名の方々にきてもらうことができた。
クローズドの誕生日パーティーを組み、場所の認知につなげた。
いくつものこういったパーティーを企画し、収益のほぼすべてをこの場所に納めました。

5.突然の閉店告知

そんな最中、TRUMP ROOMスタッフからの
突然のInstagramストーリー投稿でのこの告知

え、どういうこと?
正直裏切られた気持ちになりました。
しかし、傷ついていじけていたって仕方ないので、すぐに連絡をし事情を聞きました。
みんな突然のことにテンパって、この投稿もそのスピード感に対応すべく走り出したものだということがわかりました。
水曜に突然終わりなんて、あんまりすぎるからその週の週末にもパーティーができないか
その打診をもとに、今回のラストウィーク企画の肉付けがはじまっていきました。

プレスリリースを用意してオーナー松村さんへの原稿チェック(電話か直接会って話すしか方法がないので読み上げ式)
情報を集めフライヤー画像も作った、メディアに連絡して公式な情報を流してほしいから待ったをかけた。
その間、本当にいろんな人がいろんな思いで動いていました。
すべては、この場所TRUMP ROOMへの愛。
そしてオーナー松村さんへの愛、ただ、強く、純粋にそれだけだった。

6.謎のひと"松村さん"って?

“みんな、松村さんに会いにきてください”
“ありがとう松村さん”

様々な人からの強烈なラブコールが飛びまくる
この謎の"松村さん"とは一体何者なのか?

ヴィンテージショップ「NUDE TRUMP(ヌードトランプ)」のオーナーであり
渦中の「TRUMPROOM(トランプルーム)」のオーナー
また、同ビルの系列古着屋「Hypnotique(ヒプノティック)」、「Rosy-Baroque(ラウジーバロック)」のオーナーでもあります。

カザールの丸メガネ、黒い学生帽のおしゃれバージョンみたいなハット
黒い長袖シャツに黒パンツ、なにがそんなに入ってるの?!というくらい、どでかいウエストポーチ
お決まりのセリフは「誰だっけ?」
この鮮烈なキャラクターに皆が集まります。

この人物こそが松村逸夫(マツムラハヤオ)さん="松村さん"。

(この写真ウェストポーチしてないし帽子も白い(夏ver.)だけど)

常連客となってくると「誰だっけ?」から「なんか飲む?」にレベルアップします。
みんな名前をおぼえてもらうのに必死です。
私もおぼえてもらえてる!ってなった時すごいうれしかったな。

じっくり話すと、実はかなり思考がシャープで先を見てる。
意外と俯瞰で見てるんだなってわかったとき、ちょっと見方が変わりました(ごめん)

そんな独特の世界観を持ち、現実に空間をも作り上げている彼のことを
みんな本当にリスペクトし、愛しています。

7.松村さんの誕生日を今年も祝えたことに感謝、という新年会

私たちは毎年、年のはじめに新年会と松村さんのバースデーを兼ねたパーティーを10年のあいだずっと開催してきました。

松村さんのキャラクターを干支に反映した、ノベルティアイテムを作るのは私、si oux(スー)の役目。
毎年無料配布の大盤振る舞いです。


大人になった私たちはいつしか
「トランプルームくるの年イチになっちゃったな」
なんて言いながら新しい年を迎えられた喜びを分かち合い、
松村さんの誕生日を今年も祝えてよかった、と安堵の乾杯をするようになっていました。
この場所の状況と松村さんの体調などから、ハッピーバースデーの重みが当初よりずっと増していっていたのがここ数年。


でも、

でも、この場所で、
このお祝いは、もう二度とできなくなっちゃうのかな。

いやだよ。

もうノベルティ100枚ひとりで手刷りして、死にそうになることもないの?


どうして。


なんで。



松村さんから「閉店って言い方は避けてほしい」と強い要望がありました。
私たちだって、いやだよ。
この噂が回ってから、松村さんはパニック状態すぎてちょっと前のことも忘れちゃうレベルにまで弱ってた。
そんな心理的状況の中の要望。どっちやねん、みんな混乱した。
でも休業っていっても再開の目処なんて立ってない。

でもこれは、失うかもしれなかった絶望から見えた一筋の灯りなのかもしれない。


8.ほんとのほんとのギリギリまで諦めたくない

だから私たちは、それが灯りだと確信でき
しっかりと灯るまで諦めず
最後まで足掻き、力を尽くそうと思います。

今回のパーティーウィークはそのためのものです。
うまくいくかもしれないし、うまくいかないかもしれない。でも、きちんと知り、声を上げ、行動すること。
ピンチに対抗する手段はどんなときだって、これ以上でもこれ以下でもなく。

広い世界から見たら、ちいさな出来事かもしれない。
でも、私たちにとってはとても大切なことなのです。


すべては私たちのこの場所、この世界を作ってくれた松村さんのために。


si oux(スー)


TRUMP ROOM LAST PARTY DAY1
2019年7月12日(金)22:00-
at TRUMP ROOM渋谷 DOOR:1000YEN+1D

-DJ-
TOKYO DANDY
PELI
YUYA NARA
YOSHIROTTEN
ELLI-ROSE
MADEMOISELLE YULIA
KOSUKE ADAM
YAMARCHY
CONVOY & D.ASA
and more.

TRUMP ROOM LAST PARTY DAY3
2019年7月12日(金)22:00-29:00
at TRUMP ROOM渋谷 DOOR:1000YEN+1D

-DJ-
2BOY
GUCCIMAZE
BABY MARY
INARI
DETTO K
KOSUKE ADAM
YURIAVODKA&AIKOSENSEI
Rachel
Takayuki kono
LEO CANDYCANE&UNOFUMI
The Antoinettes
TAKERU IS DEAD
HIROKIXX.G
KBKN
HARUKA(warsawa)
SHINTARO NAGAMINE
si oux
and more.

TRUMP ROOM LAST PARTY DAY4
2019年7月13日(土)22:00-29:00
at TRUMP ROOM渋谷 DOOR:1000YEN+1D

-DJ-
YATT
TOMMY(BOY)
Nabewalks
Ryuw(prpr/YENTOWN)
1_sail
No Flowers
TSUKASA
Ryu Goda
K.A.RAMEL
julia&riangel
Ricky
KOGURE
西村ひよこちゃん
HANG THE DJ
NEOSIM
ORION B2B LEO
Milky(Frenemy)+エロビス佐藤
Yo Strummer
Masato Nakajima
and more.

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