無意識で無邪気な差別について

1970年頃、アメリカのオーケストラの奏者は、ほぼ全員が男性でした(女性比率は5%以下)。それが、2000年頃には25%ほどが女性になったと言われています。この急激な女性比率の増加は、なぜ起こったのでしょうか。

実は、「一枚のカーテン」が大事な要因の1つだったと言われています*。

もちろん、オーディションで誰を奏者として採用すべきかは、その人の演奏スキルによって決まるべきです。ジェンダーは関係ありません。しかし、採点者と演奏者の間にカーテンをしき、演奏者のジェンダーがわからないようにしたオーディションでは、女性の合格確率が飛躍的に増加したのです。つまり、時に意識的に、時に無意識に、女性だからという理由で不合格にするオーディションが多く存在したということ。

このような、ジェンダーバイアスに関する記事や話題は尽きることがありません。つい最近も、こんな記事をみつけました。

さて、私たちの多くは、なんらかのステレオタイプをこれまでの人生における社会化の過程でつくりあげてきてしまっています。もちろんこれはジェンダーに限った話ではありません。学歴や職歴、経歴、人種、立ち振る舞いや話し方まで、ステレオタイプがうまれるグループは多岐にわたります。これから逃れ、「客観的」に行動することはとても難しく、無意識のうちにステレオタイプに応じた判断・行動をとってしまうことが多くあります。

無意識のうちに、悪気なく、なかば「無邪気」に、差別をしてしまう可能性がいつでもあるのです。

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「誰が言っているかではなく、何を言っているかで判断すべき」とよく言います。色々なステレオタイプを抱えてしまった私たちは、どうすればそれが出来るでしょうか。

「意見の中身を徹底的に吟味する」というのは、姿勢・心がけとしてはいいでと思うのですが、あまり効果的ではないかもしれません。ステレオタイプが私たちの判断や行動に影響を与えているかどうか、私たちは気付けないことが多いからです。

特に、意見がロジカルかどうか、のみを吟味し、判断するのは危険です。

・この市場は年率25%で急速に成長している。しかし、すでに競合の数も多く、新規参入も容易だ。参入するのはやめておこう。
・この市場は競合の数も多く、新規参入も容易だが、年率25%で急速に成長している。参入しよう。

このどちらもロジカルですが、結論は正反対です。このような不明確さが伴う問い・判断は私たちのまわりにあふれています。こういうとき、多くの人は、自分に都合の良い意見だけを何らかの理由をつけ受け入れる傾向があることが多くの研究によって示されています(Confirmation biasと呼ばれます)。

有効な方法の1つは、「1枚のカーテン」を使うことです。そもそも誰が意見を言ったかを知らなければ、発言者が誰かに影響を受けることなく、判断・行動することが出来ます。例えば、先生が生徒のエッセイを採点する際に、名前を隠したうえで採点すべきなのは、これが理由です。

しかし、会社での会議を覆面で行うわけにはいかないので、現実には「1枚のカーテン」を使えないことが多いのも事実です。私自身は、そういう時、自分の尊敬する人が同じ意見を言っている姿を想像してみるようにしています。特に、自分が半ば反射的に意見に対して反対しようとしているなと思ったときは要注意。尊敬する友人や上司が同じ意見を言ったとしても同様に反対するのか考えることで、少しでもバイアスを減らせればと思っています。

もう一つは、自分に働いているインセンティブを理解しておくこと。先ほどのべたConfirmation biasは、インセンティブに沿う形で働くからです。自分のインセンティブとは異なる意見に反対しようとしていたら、要注意です。例えば、コンサルプロジェクトで、アナリストが仮説とは異なる意見を持ってきたとき、マネージャーには「余計な後戻りをさけてプロジェクトを穏便に終わらす」強い強いインセンティブが働いているので、要注意です。

まだまだ修行が必要な身ではありますが、無意識で無邪気な差別をしない人間になりたいなと思っています。

Behavioral Insights for Japanでも紹介されていました。http://www.nber.org/papers/w5903http://www.nber.org/papers/w5903

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Notes for a book I will nev...

学部で開発経済学少々+ウガンダ難民居住区で半年インターン→戦略コンサル6年強(事業計画、マーケティング、BDD)→米MBA→米系IT企業で経営企画っぽいお仕事@東京 Twitter: @sidewaysz

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