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同人誌とクラウドファンディング

違和感

絵描きなのに人様の写真をお借りして飾ることをお許しください。
だって素敵なんだもの。

で、違和感の話。
私は二次の同人作家である。「二次の同人作家」というのはどういうことかというと、原作(マンガ、アニメ、小説、ゲーム等々)の世界観やキャラを使った作品を生み出す人のことである。
note でもコミケ、同人誌のタグがあるので、皆様ご存知のことと思う。
同人誌は、基本、自費出版である。
ところが、昨今、同人誌クラウドファンディングで作ろうという方を、ちらほら見かけることがあるのだ。
私はそれに、納得がいかないのである。

どこで見たか

最初に見たのは、とある漫画の描き方教室(すみません。ざっくり過ぎですかね先生)の、受講生チャットである。
プロ志望の方が、なかなかデビューできなくて、それでも発表したい、同人誌でも出してみればいいのだろうか。出したことがないのでよく分からないし、金銭的にも余裕がない(すみませんその2、すっごいうろ覚えです。ご本人及び関係者の方、訂正あればお願いします)という問いだったように思う。
それに答えたうちの一つに、同人誌をクラウドファンディングで出してみればどうだろう、とあった。
質問者はバイトで生活しながら作品を書いていらっしゃるようで、まあ言いたいことはわからんでもないが、とは思うのだが。
回答者の方が、すごく気軽に言われた気がするのが、とても引っ掛かった。

そこでどうしても思い出してしまう

昨今のコミケについてネットのニュースなどを読んでる方は、ご存知の方もあるだろう。『真木よう子コミケ騒動』のことである。
芸能人がコミケに現れることは、もはや珍しくもない。例を挙げると、小林幸子さん、叶姉妹、西川貴教さんなどなど。
そこで、何が起こったかというと、『真木よう子さんが、コミケでファンと触れ合いたい、ついてはそれに出展するための冊子を、クラウドファンディングで作りたい』と宣言したのだ。
これについては、すでに収束している問題なので、検索して読んで頂き、各々感じるものは各々の場で語ってください。ご存じない方の為にざっくり顛末を話すと、批判が殺到し、真木さんは出展を取り止めたそうである。芸能人だろうが出展できるかはコミケの場合抽選なので(そうでもない場合もとか噂はあるが)、取り止めるも何も、抽選落ちれば出られないんですけどね。
蛇足だが、批判ポイントは大きいものは2つ。
1.コミケは非常に危険な場所につき、コミケを知らない一般の人を集めたファンミーティングならよそでやれ。コミケ参加者、一般人のファン、双方の安全は保障できない
2.出るために本作るのは理解するが、それをクラウドファンディングってなんぞや。同人誌即売会を理解していない

ここで問題。

同人誌を作るのをクラウドファンディングでって、これから一般的になろうとしてるのか?

クラウドファンディングとは

クラウドファンディング(Crowdfunding)とは、既に多く語られているのでざっくり言うと、インターネットなどで出資や支援を募ることである。
たまに「クラウドファウンディング」と書いてあるが、誤りであろうと思う。「ファンディング」とは、投資会社などの社名でよく見る「XXファンド」のファンド("fund":基金、資金)である。「ファウンディング」では、”Find(見つける)”になるんじゃないかと思うのだけど。find の過去形 found(ファウンド)には「寄付して設立する」とかあるけど確かに。
クラウドファンディングの一般的な使い方は、出資とリターンである。同人誌をクラウドファンディングで作るという事は、出来上がった同人誌がリターンである場合が多いのだろう。

脱線。第4次産業革命

第4次産業革命、という言葉を聞かれたことはあるだろうか。
今の世の中が第3次産業革命の結果であるというのは、授業などで聞かれたことがあるだろう。第4次産業革命とは、これからこうなるのでは、と今期待をされている産業構造のことである。
そのキーワードは IoT ,AI ,ビッグデータ等々、昨今のニュースで見ない日はないくらいのバズワードである。
拡張の世紀(ブレット キング 著)』*1 という本がある。この本の訳者の方の講演で、クラウドファンディングについて触れられていた。曰く、「これからは”商品を買う”から”体験を買う”にシフトする」と。
どういうことかというと、「商品を作りたい」→「資金などを援助してくれないか」→「応援する(出資する)」→「出来ました! 100 出来たら利益が出るかなと思っていた処、300 作れるくらい出資してもらったんで利益がっぽり!」 出資者は、応援し、この過程を見守るそして商品をリターンとして受け取るという体験をするのである。
これが第4次産業革命的クラウドファンディングである。

*1 https://www.amazon.co.jp/%E6%8B%A1%E5%BC%B5%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%B4%80-%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88-%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0/dp/4492762426/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1538223550&sr=8-1&keywords=%E6%8B%A1%E5%BC%B5%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%B4%80

本題。同人誌をクラウドファンディングで作るという事

繰り返す。
同人誌は、基本、自費出版である。
理由は、趣味の産物だからである。
コミケ(コミックマーケット)にお客様はいない
理由は、参加者しかいないからである。
故に、「販売」と言わず、「頒布」と言っている。

この note でも、クラウドファンディングで、という記事を書いてらっしゃる方はいらして、拝見しましたが、同上の理由で何とも言えない気分になった。
「クリエイターが報酬をもらって何が悪い」という論調だったように私は受け取ったから。
クリエイターが正当に報酬をもらうことに、私は一切反対しない。むしろ、買い叩かれたり無理解な人に不当な目にあわされたりすることを、強く憤る方である。
しかし。
繰り返す。同人誌は、趣味の産物なのである。(そうじゃない方もあるかもだが、今は置いておく)
道楽なのである。
描きたい、出したい、という思いを形にしたのが同人誌、読ませてくれてありがとうの気持ちをお金で表現したのが”買う”という行為なのである。

考えてみよう。
カラオケが好きな人がいるとして、カラオケボックスの機能でCDが出したいと言ったとする。
だが、バイト生活で趣味を楽しむ金銭的余裕がない。でもどうしてもやりたいんだ、と言ったとしよう。
「そうか、君の歌は好きだから、協力してあげよう」とか。
「自分もそんな時があったよ、応援する」とか。
「CD聞いてみたい。余裕があるから出資するよ」とか。
そんな気持ちで出資し、双方が喜ぶならそれは何も言うことはない。

しかし、いくらファンがいたとしても、仕事でなくカラオケに行き、
「CD作るよ。もちろん売り上げには自分の儲けを入れてるの当然でしょ。だって、クリエイターの報酬って当たり前だし」
これ、当たり前…………?
もやっとしないか?
そういう問題か、って言いたくならないか?

コミケには二次(ファンアート)の人の方が多い。
一方、前述のプロ志望の方など、一次(オリジナル、創作系ともいう)で活動してる方には、二次を知らない方、同人誌を作ったことのない方もいる。当然この方々は、コミケの作法(お客様はいない)など知らない。
【注:コミケにも創作系はあります。】
前述の回答者の方は、コミケを知らないのではないようだが、一次寄りの方ではあるだろう。

二次者は、自分の行為が道楽であることを心得ている。
知ったこっちゃないだろうが、今一度、同人誌を出すのならば、コミケの理念を見直してほしい。

結論

同人誌をクラウドファンディングで出すのは構わないが、反応は大きく分けて下の2つだろう。
1)「印刷費出すほど金がないんかな。今どきオンデマンドとかですっごく安く刷れるのに。そもそも何部刷るつもりなんだよ」と、生温かく見守られる。
2)「ああまたお客さん気取り、勘違いが来た。勉強して来いよ」と冷たく見られる。取り巻きなんかいた日には最悪である。

これを、「時代はクラウドファンディングなんだよ」と言うか、「すみません、素人でした」と言うか、「第4次産業革命知らんのか」と言うか、「そうなんですお金ないんです」と言うか。
そこから先はご自由にどうぞ。
でも、現時点では、あまり受け入れられてるとは思わない方がいいと、私は思う。

追記

長々と申し訳ありませんでした。記事を切ることも考えましたが、切ると伝わらないと判断したので、そのままにしました。
最初のチャットでの質問者と回答者、並びにnoteの記事を書かれた方には、何の意図もありません。人それぞれだし。
ご意見は受け付けますが、「長文乙」「ピコ手黙ってろ」を投げ付けてくるようなコメントは要りません。
お読みいただきありがとうございました。
お疲れ様でした。

いつの間にか増えている、積ん読の育成に、ご協力いただきありがとうございます。積ん読は、いつの間にか減っていて、いつの間にか新たな山が出来ている。そんなものです